[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2005年(平成17年)東京大学前期-数学(文科)[3]

2024.02.18記

[3] 0 以上の実数 sts^2+t^2=1 を満たしながら動くとき,方程式
x^4-2(s+t)x^2+(s-t)^2=0
の解のとる値の範囲を求めよ.

2020.09.25記

[うまい解答]
x^4+(\sqrt{s})^4+(\sqrt{t})^4-2x^2(\sqrt{s})^2-2(\sqrt{s})^2(\sqrt{t})^2-2(\sqrt{t})^2x^2=0
はヘロンの公式を思い出すと
-(x+\sqrt{s}+\sqrt{t})(-x+\sqrt{s}+\sqrt{t})(x-\sqrt{s}+\sqrt{t})(x+\sqrt{s}-\sqrt{t})=0
と変形できるので,与えられた4次方程式の解は
x=\sqrt{s}+\sqrt{t}\sqrt{s}-\sqrt{t}-\sqrt{s}+\sqrt{t}-\sqrt{s}-\sqrt{t}
である.
(p,q)=(\sqrt{s},\sqrt{t})なる点はp^4+q^4=1の第1象限(軸との交点を含む)を動く
(p,q)=(-\sqrt{s},\sqrt{t})なる点はp^4+q^4=1の第2象限(軸との交点を含む)を動く
(p,q)=(-\sqrt{s},-\sqrt{t})なる点はp^4+q^4=1の第3象限(軸との交点を含む)を動く
(p,q)=(\sqrt{s},-\sqrt{t})なる点はp^4+q^4=1の第4象限(軸との交点を含む)を動く
ので,これらの合併集合はp^4+q^4=1全体を動く.

いま,直線 p+q=x を考えると,これとp^4+q^4=1の交点は,その象限によって4つの解のいずれか
(軸上の場合は2つ)に対応するので,直線 p+q=xp^4+q^4=1 が交わるx の範囲が求める結果となる.

シュワルツの不等式を2回使った
8=(1^2+1^2)^2(1^2+1^2)(p^4+q^4)\geqq (1^2+1^2)^2(p^2+q^2)^2 \geqq (p+q)^4=x^4
を利用すると,求める範囲は -\sqrt[4]{8}\leqq x\leqq \sqrt[4]{8} となる.

実質的に同じだが,ヘロンの公式の値が0となることを強調してみると次のようになる.

[大人の解答]
s=\sqrt{\sin\theta},t=\sqrt{\cos\theta}, |x|0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{2})の3辺からなる3角形の面積が0になるような\thetaが存在するような x の範囲を求めれば良い.

対称性より 0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{4} としてよく,\theta を固定すると|x|=\sqrt{\cos\theta}-\sqrt{\sin\theta},\sqrt{\cos\theta}+\sqrt{\sin\theta} となる.

ここで \theta0\leqq\theta\leqq\dfrac{\pi}{4} で動かすと
\sqrt{\cos\theta}-\sqrt{\sin\theta}\theta について単調減少となり値域は[0,1] となり,
\sqrt{\cos\theta}+\sqrt{\sin\theta}p^4+q^4=1 の凸性から\theta について単調増加となり値域は \Bigl[1,\dfrac{2}{\sqrt[4]{2}}\Bigr] となる.

以上から 0\leqq |x|\leqq \dfrac{2}{\sqrt[4]{2}} となる.