[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1986年(昭和61年)東京大学-数学(理科)[4]

2023.08.29記

[4] 二次方程式 ax^2-2bx+c=0 の係数 abc が,それぞれ次の範囲を動くものとする.
 0.9 \leqq a \leqq 1.1, \quad 
2.7 \leqq b \leqq 3.3, \quad 
4.5 \leqq c \leqq 5.4

(1) このとき u=\dfrac{b}{a}v=\dfrac{c}{a} を座標とする点 \mbox{P}(u,v) の動く範囲を定め,図示せよ.

(2) 上の二次方程式の二つの解のうち,大きい方を z とする.abc が上の範囲を動くときの,z の最大値,最小値を求めよ.

2020.12.14記(2023.08.29修正)

[解答]
(1) (u,v)の動く範囲は (b,c) の動く範囲を \dfrac{1}{a} 倍に拡大したものと考えれば良い.

(b,c) の動く範囲は (2.7,4.5)(3.3,4.5)(3.3,5.4)(2.7,5.4) の4点を頂点とする長方形であるから,これを原点中心に 0.91.1 倍拡大したものが求める範囲であり,次図のようになる.


(2) 題意の2次方程式x^2-2ux+v=0 であるから,2次方程式の判別式が正 と v\leqq u^2 は同値で、6\lt \Bigl(\dfrac{27}{11}\Bigr)^2 より,(1) の領域は全てその領域内に含まれる.つまり,領域内の任意の点に対し2次方程式は相異2実解をもつ.


よってv=u^2 の接線 v=2ux-x^2 は領域内の各点を2回通過し,xを正の範囲で増加させたときに2回目に通過する場合について考えれば良い.

まず,(3,45/11)(11/3,5) を通る直線が原点を通ることから,(11/3,5) を通る v=u^2 の接線よりも (3,45/11) の方が上にあることから,xを正の範囲で増加させたときに,接線はまず (11/3,5)接触してから領域内を横切ることがわかる.同様に考えると,その後 (27/11,54/11)接触した後に領域から一旦離れることがわかる(これが小さい解の動き).

そしてさらに x を増加させると再び(27/11,54/11)接触してから領域内を横切って(11/3,5)接触してから再び離れる(これが大きい解の動き)ことによって領域を2回通過する.

このように直線の動きを正しく追えれば、大きな解は

(27/11,54/11) を通るとき最小値 \dfrac{27+3\sqrt{15}}{11}
(11/3,5) を通るとき最大値 \dfrac{11+2\sqrt{19}}{3} をとることがわかる.

なお,誘導を無視して次のように解くこともできる.

[うまい解答]
(2) 大きい解を\dfrac{b+\sqrt{b^2-ac}}{a} とみれば,b について単調増加,c について単調減少であり,
\dfrac{c}{b-\sqrt{b^2-ac}} とみれば a について単調減少であるから,

大きい解は b が最小で a,c が最大のとき,つまり (a,b,c)=(1.1,2.7,5.4) のときに最小となる.
また,大きい解は b が最大で a,c が最小のとき,つまり (a,b,c)=(0.9,3.3,4.5) のときに最大となる.

となることがわかる.誘導に乗らないほうが簡単というのはこれ如何に。

2023.08.29記

[別解]
(2) z=u+\sqrt{u^2-v} であり,これは u について単調増加,v について単調減少である.

大きい解が最小となるのは,(u,v)(27/11,54/11)(3,6) を結ぶ線分上のどこかにある場合である.この線分は v=2u27/11\leqq u\leqq 3)であるから,
z=u+\sqrt{(u-1)^2-1}
27/11\leqq u\leqq 3 の範囲で u\sqrt{(u-1)^2-1} はともに単調増加であるから,u=\dfrac{27}{11} のときに最小値\dfrac{27+3\sqrt{15}}{11}をとる.

大きい解が最大となるのは,(u,v)(3,45/11)(11/3,5) を結ぶ線分上のどこかにある場合である.この線分は v=\dfrac{15}{11}u3\leqq u\leqq 11/3)であるから,
z=u+\sqrt{\left(u-\dfrac{15}{22}\right)^2-\left(\dfrac{15}{22}\right)^2}
3\leqq u\leqq 11/3 の範囲で uz=u+\sqrt{\left(u-\dfrac{15}{22}\right)^2-\left(\dfrac{15}{22}\right)^2} はともに単調増加であるから,u=\dfrac{11}{3} のときに最大値 \dfrac{11+2\sqrt{19}}{3} をとる.