[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

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2024.04.15
2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[1] (URL,日付変更)
2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[2] (URL,日付変更)
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1991年(平成3年)東京大学後期-数学[2]

2024.02.29
2024年(令和6年)東京大学-数学(文科)

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2024年(令和6年)東京大学-数学(理科)

2024.02.24
1970年(昭和45年)東京大学-数学(理科)
1970年(昭和45年)東京大学-数学(文科)

2024.02.23
1968年(昭和43年)東京大学-数学(理科)
1968年(昭和43年)東京大学-数学(文科)

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2020年(令和2年)東京大学前期-数学(理科) (日付変更,レイアウト変更)
2020年(令和2年)東京大学前期-数学(文科) (日付変更,レイアウト変更)
(見易いように理科(1/1〜1/7),文科(1/8〜1/12)と日付を変更した)

2024.02.20
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[1](択一) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[2](択一) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[3](択一) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[4](数字) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[5](数字) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[6](数字) (問題文確定)
2024年(令和6年)防衛医科大学-数学[7](記述) (問題文確定)
2019年(平成31年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
2019年(平成31年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)

2024.02.19
2005年(平成17年)東京大学前期-数学(文科) ([1]の解答,レイアウト変更)
2006年(平成18年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
2006年(平成18年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)
2007年(平成19年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
2007年(平成19年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)

2024.02.18
2003年(平成15年)東京大学前期-数学(理科) ([1]の解答,レイアウト変更)
2003年(平成15年)東京大学前期-数学(文科) ([1]の解答,レイアウト変更)
2003年(平成15年)東京大学後期-数学 (レイアウト変更)
2004年(平成16年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
2004年(平成16年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)
2005年(平成17年)東京大学前期-数学(理科) ([4][5]の解答,レイアウト変更)

2024.02.17
2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[1]
2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[2]
2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[3]
2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[4]
2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[5]

2024.02.13
2002年(平成14年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
2002年(平成14年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)
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2024.02.12
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2000年(平成12年)東京大学後期-数学 (問題のみ)
2001年(平成13年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更,[3]の解説)
2001年(平成13年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)
2001年(平成13年)東京大学後期-数学 (問題のみ)

2024.02.11
1999年(平成11年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
1999年(平成11年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)
1999年(平成11年)東京大学後期-数学 (問題のみ)

2024.02.08
1998年(平成10年)東京大学後期-数学 (問題のみ)

2024.02.07
1998年(平成10年)東京大学前期-数学(理科) (レイアウト変更)
1998年(平成10年)東京大学前期-数学(文科) (レイアウト変更)

2024.01.20
「2022.05.26」の
早稲田大学の過去問らしい
の正確な出典が「1999年(平成11年)早稲田大学理工学部-数学[5]」とわかったので
近日中に URL 変更し,1999年に移動する予定

2023年(令和5年)2016年(令和28年)滋賀医科大学-数学[2]
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2023年(令和5年)東海大学医学部一日目-数学[1](5)
(URLはそのうち変更)

1888年(明治21年)帝國大學工科大學(東大工学部の前身)-數學
(そのうち 1888年に移動)

1888年(明治21年)農林學校簡易科獸醫科-數學
(そのうち 1888年に移動)

1889年(明治22年)帝國大學理科大學簡易科講習科-幾何學
(そのうち 1889年に移動)

のんびり更新しているけど、まぁ需要がなさそうなので気にしない。

URL 変更について - [別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大数学進捗 - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
問題一覧へのリンクを作成した年度( と表示)は適用済み。
(東大が終了したら他大学の URL も変更予定)

東大の問題を現時点で省略しているものは、
大学入試数学問題集成
【大学入試】旧帝大(東大、京大、北大、東北大、名大、阪大、九大)+東工大 数学入試問題過去問 64年分 (一部解答例付き)
東京大学 数学入試問題72年 [1949~2020年入試全問題](全問題と書きながら1967年旧課程の問題は記載洩れ)
東大入試詳解25年 数学<理科>第2版-2019~1995 (東大入試詳解シリーズ)
東大入試詳解25年 数学<文科>第2版-2019~1995 (東大入試詳解シリーズ)
東大・入試数学50年の軌跡【1971年~2020年】 (大学への数学)
鉄緑会 東大数学問題集 資料・問題篇/解答篇 1981-2020〔40年分〕

旺文社,全国主要大学入試問題正解,昭和27年度(国立国会図書館の個人送信)
旺文社,全国主要大学入試問題正解,昭和28年度(国立国会図書館の個人送信)
旺文社,全国主要大学入試問題正解,昭和29年度(国立国会図書館の個人送信)
旺文社,全国主要大学入試問題正解,昭和30年度(国立国会図書館の個人送信)
あたりで確認していただければ。

やり残していること

(1)下書きで放置した記事の整理
(2) 2022年の記事の URL 変更
(3) 1949年〜1954年,1959年新旧,1970年,2011年文系[1],2018年理系[6],2021年〜2023年の東大前期入試の整理
(4) 旧制の東大入試の整理
(5) 図を真面目に描く
(6) 東大後期入試の整理
(7) 東大総合科目の整理
(8) 2023年の九大東工大などを解く
(9) 2024年の東大京大阪大九大東工大などを解く

2024年(令和6年)東京工業大学-数学[4]

2024.04.21記

[4] n を正の整数とし,C_1,\ldots,C_nn 枚の硬貨とする.各 k=1,\ldots,n に対し,硬貨 C_k を投げて表が出る確率を p_k,裏が出る確率を 1-p_k とする.この n 枚の硬貨を同時に投げ,表が出た硬貨の枚数が奇数であれば成功,というゲームを考える.

(1) p_k=\dfrac{1}{3}k=1,\ldots,n)のとき,このゲームで成功する確率 X_n を求めよ.

(2) p_k=\dfrac{1}{2(k+1)}k=1,\ldots,n)のとき,このゲームで成功する確率 Y_n を求めよ.

(3) n=3m(mは正の整数)で,k=1,\ldots,3m に対して
p_k=\left\{\begin{array}{ll} \dfrac{1}{3m}  & (k=1,\ldots,m) \\ \dfrac{2}{3m}  & (k=m+1,\ldots,2m) \\ \dfrac{1}{m}  & (k=2m+1,\ldots,3m)  \end{array}\right.
とする.このゲームで成功する確率を Z_{3m} とするとき, \displaystyle\lim_{m\to\infty} Z_{3m} を求めよ.

本問のテーマ
非定常マルコフ過程((1)は定常)
(通常型)母関数

2024.04.21記
(1) X_n の漸化式を作って解く
(2) Y_n の漸化式を作って解く
(3) 最初の m 個,次の m 個,最後の m 個で奇数となる確率を計算して,それを組合せて Z_{3m} を考える.


[解答]

2024年(令和6年)東京工業大学-数学[1]

2024.04.20記

[1] xy 平面上の曲線 y=\dfrac{1}{2}x^2 に,点 \left(a,\dfrac{1}{2}a^2\right)a\gt 0)で接する円のうち,y 軸の正の部分にも接するものを S_a とおく,a が正の実数を動くときの S_a の中心の軌跡を C,とくに S_1 の中心を \rm P とする.

(1) 点 \rm P の座標を求めよ.

(2) 点 \rm P における曲線 C の接線の傾きを求めよ.

2024.04.20記

[解答]
\mbox{A}_a\left(a,\dfrac{1}{2}a^2\right) における曲線の接線の方向ベクトルは (1,a) であるから
S_a の中心を \mbox{P}_a(X,Y)X\gt 0,Y\gt\dfrac{1}{2}a^2) とおくと
X^2=(X-a)^2+\left(Y-\dfrac{1}{2}a^2\right)^2…①,
(X-a)\cdot 1+\left(Y-\dfrac{1}{2}a^2\right)\cdot a=0…②
が成立する.X を消去して整理すると
\left(Y-\dfrac{1}{2}a^2\right)^2+2a^2\left(Y-\dfrac{1}{2}a^2\right)-a^2=0
となる.Y\gt\dfrac{1}{2}a^2 より,この2次方程式の大きい解のみ適する.

ここで \left(Y+\dfrac{1}{2}a^2\right)^2=a^4+a^2 となるので
Y=\sqrt{a^4+a^2}-\dfrac{1}{2}a^2
である.このとき②から
X=a^3+a-\sqrt{a^6+a^4}
となる.

(1) a=1 として \mbox{P}\left(2-\sqrt{2},\sqrt{2}-\dfrac{1}{2}\right) となる.

(2) \dfrac{dX}{da}=3a^2+1-\dfrac{3a^5+2a^3}{\sqrt{a^6+a^4}}\dfrac{dY}{da}=\dfrac{2a^3+a}{\sqrt{a^4+a^2}}-a
であるから,求める値は
\left. \dfrac{dY/da}{dX/da}\right|_{a=1}=\dfrac{3/\sqrt{2}-1}{4-5/\sqrt{2}}=1+\sqrt{2}
となる.

[別解]
\mbox{A}_a\left(a,\dfrac{1}{2}a^2\right) における曲線の接線の方向単位ベクトルとして
\vec{a}=\dfrac{1}{\sqrt{1+a^2}}(1,a)
をとることができ,また接線の y 切片を \mbox{B}_a\left(0,-\dfrac{1}{2}a^2\right) とおく.

S_a の中心を \mbox{P}_a とおくと
\mbox{P}_ay 軸と接線のなす角の2等分線上にあることから
\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}=k(a)\left(\vec{a}+(0,1)\right)=\dfrac{k(a)}{\sqrt{1+a^2}}\left(1,a+\sqrt{1+a^2}\right)k\gt 0
とおくことができる.

ここで
\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}\bullet\vec{a}=\overline{\mbox{B}_a\mbox{A}_a}=\sqrt{a^2+a^4}
であるから,
\dfrac{k(a)}{1+a^2}\left(1+a^2+a\sqrt{1+a^2}\right)=\sqrt{a^2+a^4}
が成立するので,
k(a)=\dfrac{a(1+a^2)}{\sqrt{1+a^2}+a}
となる.よって原点を\mbox{O} として
\overrightarrow{\mbox{OP}_a}=\overrightarrow{\mbox{OB}_a}+\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}
=\left(0,-\dfrac{1}{2}a^2\right)+\dfrac{k(a)}{\sqrt{1+a^2}}\left(1,a+\sqrt{1+a^2}\right)
=\left(\dfrac{a\sqrt{1+a^2}}{\sqrt{1+a^2}+a},a\sqrt{1+a^2}-\dfrac{1}{2}a^2\right)
=\left(a+a^3-a^2\sqrt{1+a^2},a\sqrt{1+a^2}-\dfrac{1}{2}a^2\right)
となる.

以下,[解答] と同じ.

a が微小変化すると,接点は接線方向に動くので S_a の中心は接線と y 軸の角の2等分線方向に動くことから,(2)の答は y=x-\dfrac{1}{2}y 軸のなす角の2等分線(のうち傾きが正のもの)の傾き 1+\sqrt{2} に等しくなることが予想できる.そこで,それが見え易いように [別解] を書き直す.ここで a+\sqrt{1+a^2} の扱いとして
b=\sqrt{1+a^2}c=a+\sqrt{1+a^2}
とおくと
\dfrac{db}{da}=\dfrac{a}{\sqrt{1+a^2}}=\dfrac{a}{b}\dfrac{dc}{da}=1+\dfrac{a}{\sqrt{1+a^2}}=\dfrac{c}{b}
が成立することを利用する.

[別解2]
\mbox{A}_a\left(a,\dfrac{1}{2}a^2\right) における曲線の接線方向の単位ベクトルとして
\vec{a}=\dfrac{1}{\sqrt{1+a^2}}(1,a)
をとることができ,また接線の y 切片を \mbox{B}_a\left(0,-\dfrac{1}{2}a^2\right) とおく.

S_a の中心を \mbox{P}_a とおくと
\mbox{P}_ay 軸と接線のなす角の2等分線上にあることから
\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}=k(a)\left(\vec{a}+(0,1)\right)=\dfrac{k(a)}{\sqrt{1+a^2}}\left(1,a+\sqrt{1+a^2}\right)k\gt 0
とおくことができる.

ここで,b=\sqrt{1+a^2}c=a+\sqrt{1+a^2} とおくと
\dfrac{db}{da}=\dfrac{a}{\sqrt{1+a^2}}=\dfrac{a}{b}\dfrac{dc}{da}=1+\dfrac{a}{\sqrt{1+a^2}}=\dfrac{c}{b}
が成立し,
\vec{a}=\dfrac{1}{b}(1,a)\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}=\dfrac{k(a)}{b}\left(1,c\right)
が成立する.

ここで
\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}\bullet\vec{a}=\overline{\mbox{B}_a\mbox{A}_a}=\sqrt{a^2+a^4}
であるから,
\dfrac{k(a)}{b^2}(1+ac)=ab
が成立するので,1+ac=1+a^2+a\sqrt{1+a^2}=bc に注意すると
k(a)=\dfrac{ab^2}{c}
となる.よって原点を\mbox{O} として
\overrightarrow{\mbox{OP}_a}=\overrightarrow{\mbox{OB}_a}+\overrightarrow{\mbox{B}_a\mbox{P}_a}
=\left(0,-\dfrac{1}{2}a^2\right)+\dfrac{k(a)}{b}\left(1,c\right)
=\left(0,-\dfrac{1}{2}a^2\right)+\dfrac{ab}{c}\left(1,c\right)
となる.

(1) a=1 のとき,b=\sqrt{2}c=1+\sqrt{2} であるから
\overrightarrow{\mbox{OP}_a}=\left(0,-\dfrac{1}{2}\right)+\dfrac{\sqrt{2}}{1+\sqrt{2}}\left(1,1+\sqrt{2}\right)
=\left(2-\sqrt{2},\sqrt{2}-\dfrac{1}{2}\right)
となる.

(2) \dfrac{d}{da}\overrightarrow{\mbox{OP}_a}
=\left(0,-a\right)+\dfrac{b+a(a/b)}{c}\left(1,c\right)-\dfrac{ab(c/b)}{c^2}\left(1,c\right)+\dfrac{ab}{c}\left(0,\dfrac{c}{b}\right)
=\dfrac{a^2-ab+b^2}{bc}\left(1,c\right)
であるから, 点 \mbox{P}_a における曲線 C の接線ベクトルは (1,c) に平行となり,よってその傾きは c となる.

以上から点 \mbox{P} における曲線 C の接線の傾きは c\,\big|_{a=1}=1+\sqrt{2} となる.

一般化してみよう.
f(x) に対して
g(x)=\sqrt{1+\{f'(x)\}^2}
とおくと
g'(x)=\dfrac{f'(x)f''(x)}{\sqrt{1+\{f'(x)\}^2}}=\dfrac{f'(x)f''(x)}{g(x)}
が成立する(\{g(x)\}^2=1+\{f'(x)\}^2微分しても得られる).

y=f(x)x=a における接線
y=f'(a)(x-a)+f(a)
y 切片 は f(a)-af'(a) であり,接線方向の単位ベクトルとして
\vec{a}=\dfrac{1}{g(a)}(1,f'(a))
をとり,y 切片から円の中心へ向かうベクトルを
k(a)\left(\vec{a}+(0,1)\right)
とおくと
k(a)\left(\vec{a}+(0,1)\right)\bullet\vec{a}=ag(a)
から
k(a)\left(1+\dfrac{f'(a)}{g(a)}\right)=ag(a)
が成立するので
k(a)=\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}
となり,円の中心 (x,y)
(x,y)=(0,f(a)-af'(a))+\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}\left(\vec{a}+(0,1)\right)
によって与えられる.これを
\dfrac{d}{da}\vec{a}=-\dfrac{f'(a)f''(a)}{\{g(a)\}^2}\vec{a}+\dfrac{f''(a)}{g(a)}(0,1)
に注意して a微分すると
\dfrac{d}{da}(x,y)=(0,-af''(a))+\left\{\dfrac{d}{da}\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}\right\}\left(\vec{a}+(0,1)\right)+\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}\cdot\dfrac{d}{da}\vec{a}
=\left\{\dfrac{d}{da}\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}\right\}\left(\vec{a}+(0,1)\right)-\dfrac{af'(a)f''(a)}{f'(a)+g(a)}\vec{a}+\dfrac{ag(a)f''(a)}{f'(a)+g(a)}(0,1)+(0,-af''(a))
=\left\{\dfrac{d}{da}\dfrac{a\{g(a)\}^2}{f'(a)+g(a)}\right\}\left(\vec{a}+(0,1)\right)-\dfrac{af'(a)f''(a)}{f'(a)+g(a)}\left(\vec{a}+(0,1)\right)
となり,
\dfrac{d}{da}(x,y)\parallel \left((\vec{a}+(0,1)\right)
となることが証明された.

2024年(令和6年)東京工業大学-数学[2]

2024.04.18記

[2] 実数全体を定義域にもつ微分可能な関数 f(t)g(t) が次の6つの条件を満たしているとする.
f'(t)=-f(t)g(t)g'(t)=\{f(t)\}^2f(t)\gt 0|g(t)|\lt 1f(0)=1g(0)=0

このとき,
p(t)=\{f(t)\}^2+\{g(t)\}^2q(t)=\log\dfrac{1+g(t)}{1-g(t)}
とおく.

(1) p'(t) を求めよ.

(2) q'(t) は定数関数であることを示せ.

(3) \displaystyle\lim_{t\to\infty} g(t) を求めよ.

(4) f(T)=g(T) となる正の実数 T に対して,媒介変数表示された平面曲線 (x,y)=(f(t),g(t))0\leqq t\leqq T)の長さを求めよ.

本問のテーマ
半円の双曲線関数を用いたパラメータ表示

2024.04.18記
f(t)=\dfrac{1}{\cosh t}g(t)=\tanh t となるが,これを与えられた条件から求めるヒントとして p(t),q(t) を求めさせる誘導が(1),(2) である.実際,このとき
f'(t)=-\dfrac{1}{\cosh^2 t}\cdot \sinh t=-f(t)g(t)
g'(t)=\dfrac{1}{\cosh^2 t}=\{f(t)\}^2
f(t)\gt 0|g(t)|\lt 1f(0)=1g(0)=0
と確かに条件を満たしており,このとき
p(t)=\dfrac{1}{\cosh^2 t}+\tanh^2 t=1
q(t)=\log\dfrac{(e^t+e^{-t})+(e^t-e^{-t})}{(e^t+e^{-t})-(e^t-e^{-t})}=\log e^{2t}=2t
となる.

(4) は \displaystyle\int\dfrac{1}{\cosh t}\, dt を計算すれば良いことがわかるが,この不定積分
\displaystyle\int\dfrac{1}{\cosh t}\, dt=\displaystyle\int\dfrac{\cosh t}{\cosh^2 t}\, dt=\displaystyle\int\dfrac{\cosh t}{1+\sinh^2 t}\, dt=\mbox{Artan}(\sinh t)+C
となるが,実は
\mbox{Artan}(\sinh t)=2\mbox{Artan}(e^t)-\dfrac{\pi}{2}
が成立するので
\displaystyle\int\dfrac{1}{\cosh t}\, dt=2\mbox{Artan}(e^t)+C
も成立し,よって [解答] では \tan\theta=e^t と置換する.

[解答]
(1) p'(t)=2f(t)f'(t)+2g(t)g'(t)=-2f(t)^2g(t) +2g(t)f^2(t)=0

(2) p(0)=1^2+0^2=1 と(1)により,定義域内の任意の t について p(t)=\{f(t)\}^2+\{g(t)\}^2=1 が成立し,このとき
q'(t)=\dfrac{g'(t)}{1+g(t)}+\dfrac{g'(t)}{1-g(t)}=\dfrac{2g'(t)}{1-\{g(t)\}^2}=\dfrac{2\{f(t)\}^2}{\{f(t)\}^2}=2
であるから,q(t) は定数関数である.

(3) (2) および q(0)=\log 1=0 により q(t)=2t であるから,
g(t)=\dfrac{e^{2t}-1}{e^{2t}+1}
となる.よって
\displaystyle\lim_{t\to\infty}g(t)=1
となる.

(4) \{f(t)\}^2=1-\{g(t)\}^2=\dfrac{4e^{2t}}{(e^{2t}+1)^2}
f(t)\gt 0 により
f(t)=\dfrac{2e^{t}}{e^{2t}+1}
である.よって f(T)=g(T) のとき 2e^T=e^{2T}-1,つまり e^{2T}-2e^T-1=0 となり,e^T\gt 0 から
e^T=1+\sqrt{2}
となる.

求める長さを l とおくと
l=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f'(t)\}^2+\{g'(t)\}^2}\,dt=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f(t)g(t)\}^2+\{f(t)\}^4}\,dt=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f(t)\}^2(\{g(t)\}^2+\{f(t)\}^2)}\,dt=\displaystyle\int_0^T f(t)\,dt=\displaystyle\int_0^T \dfrac{2e^{t}}{e^{2t}+1}\,dt
が成立する.ここで e^t=\tan\theta と置換すると
e^t\,dt=\dfrac{1}{\cos^2\theta}\,d\theta=(1+e^{2t})\,d\theta
から e^T=1+\sqrt{2}=\tan\alpha なる 0\lt\alpha\lt\dfrac{\pi}{2} を用いて
l=\displaystyle\int_{0}^{T} \dfrac{2e^{t}}{e^{2t}+1}\,dt=\displaystyle\int_{\pi/4}^{\alpha} 2\, d\theta=2\alpha-\dfrac{\pi}{2}
が成立する.

ここで 1:\tan\alpha:\dfrac{1}{\cos\theta} の直角三角形と 1:1:\sqrt{2} の直角2等辺三角形を重ねることにより,3つの角度が \dfrac{\pi}{8},\dfrac{\pi}{8},\dfrac{3\pi}{4} の2等辺三角形を見出すことができ,よって
\tan\dfrac{3\pi}{8}=1+\sqrt{2}
であることがわかり \alpha=\dfrac{3\pi}{8} であることがわかる.よって
l=2\cdot \dfrac{3\pi}{8}-\dfrac{\pi}{2}=\dfrac{\pi}{4}
となる.

[別解]
\tan 2\alpha=\dfrac{2\tan\alpha}{1-\tan^2\alpha}=\dfrac{2e^T}{1-e^{2T}}=-\dfrac{f(T)}{g(T)}=-1
より
2\alpha=\dfrac{3}{4}\pi
だから,
l=\dfrac{3\pi}{4}-\dfrac{\pi}{2}=\dfrac{\pi}{4}
となる.

[大人の解答]
(3) q'(t)=\dfrac{g'(t)}{1+g(t)}+\dfrac{g'(t)}{1-g(t)}=\dfrac{2g'(t)}{1-\{g(t)\}^2}=\dfrac{2\{f(t)\}^2}{\{f(t)\}^2}=2
および q(0)=\log 1=0 により q(t)=2t であるから,
g(t)=\tanh t
となる.よって
\displaystyle\lim_{t\to\infty}g(t)=1
となる.

(4) \{f(t)\}^2=1-\{g(t)\}^2=1-\tanh^2 t=\dfrac{1}{\cosh^2 t}
f(t)\gt 0 により
f(t)=\dfrac{1}{\cosh t}
である.よって f(T)=g(T) から \dfrac{1}{\cosh T}=\dfrac{\sinh T}{\cosh T} となるので \sinh T=1 である.

求める長さを l とおくと
l=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f'(t)\}^2+\{g'(t)\}^2}\,dt=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f(t)g(t)\}^2+\{f(t)\}^4}\,dt=\displaystyle\int_0^T\sqrt{\{f(t)\}^2(\{g(t)\}^2+\{f(t)\}^2)}\,dt=\displaystyle\int_0^T f(t)\,dt=\displaystyle\int_0^T \dfrac{1}{\cosh t}\,dt=\mbox{Artan}(\sinh T)-\mbox{Artan}(\sinh 0)=\mbox{Artan}\,1-\mbox{Artan}\, 0=\dfrac{\pi}{4}-0=\dfrac{\pi}{4}
となる.

なお,\tan\alpha=e^x\tan\beta=e^{-x}=\cot\alpha のとき \alpha+\beta=\dfrac{\pi}{2} であるから,
\alpha=\mbox{Artan}(e^x)
\beta=\mbox{Artan}(e^{-x})=\dfrac{\pi}{2}-\mbox{Artan}(e^x)
となる.一方,
\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{2}=\sinh x
から
\alpha-\beta=\mbox{Artan}(\sinh x)
が成立する.よって
2\mbox{Artan}(e^x)-\dfrac{\pi}{2}=\mbox{Artan}(\sinh x)
が成立する.

なお,\tanh x逆関数 \mbox{Artanh}\, x(または \mbox{Arctanh}\, x)が
\dfrac{1}{2}\log\dfrac{1+x}{1-x} となる(だから q(t)=2t となる)ことについては
2015年(平成27年)東北大学後期-数学(理系)[4] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
参照.

2024.04.20記
単位円の良くあるパラメータ表示は (\cos t,\sin t) であるが,本問では
半単位円 x^2+y^2=1,x\gt 0 のパラメータ表示として
\left(\dfrac{1}{\cosh t},\tanh t\right)=(\mbox{sech}\, t,\tanh t)
を採用している.条件
\begin{pmatrix} f'(t) \\ g'(t) \end{pmatrix}=f(t)\begin{pmatrix} -g(t) \\ f(t) \end{pmatrix}
は円の動径と接線は垂直であることを意味している.

[うまい解答]
(1) p(t)=\begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}\bullet \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}
であるから,
p'(t)=2\begin{pmatrix} f'(t) \\ g'(t) \end{pmatrix}\bullet \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}=2f(t)\begin{pmatrix} -g(t) \\ f(t) \end{pmatrix}\bullet \begin{pmatrix} f(t) \\ g(t) \end{pmatrix}=0

(2)(3) [解答]と同じ

(4) (1)と f(0)=1g(0)=0 により曲線 (x,y)=(f(t),g(t))0\leqq t\leqq T)は x^2+y^2=1 の一部の媒介変数表示である.

g'(t)\geqq  0 および(3)により t が 0 から増加すると (1,0) から反時計周りに単調に点 (0,1) に向かって進み,f(T)=g(T) となる点は単位円と x=y の第1象限における交点であるから,(1,0) から反時計周りにこの交点までの長さを求めれば良く,それは \dfrac{\pi}{4} である.

2024.04.22記
東京出版の理系・新作問題演習(絶版)のp.154に

[120] f(x)g(x)0 を含むある区間で定義された微分可能な関数で,つぎの条件をみたすものとする.
f'(x)=f(x)\cdot g(x)g'(x)=\{f(x)\}^2f(0)=1g(0)=0
このとき

(i) \{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2=1 が成り立つことを示せ.

(ii) h(x)=\displaystyle\int_0^x\dfrac{dt}{1+t^2} とおくとき,h(g(x))=h(\tan x) が成り立つことを示せ.

(iii) f(x)g(x) を求めよ.(学コン1974年12月号)

という問題が載っていた.\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2=1 から,これは双曲線 s^2-t^2=1 のパラメータ表示の1つを表しており,実際に求めると f(x)=\dfrac{1}{\cos x}g(x)=\tan x という有名なパラメータ表示が答となる.

[略解]
(i) 略

(ii) \bigl(h(g(x))\bigr)'=h'(g(x))\cdot g'(x)=\dfrac{g'(x)}{1+\{g(x)\}^2}=\dfrac{\{f(x)\}^2}{\{f(x)\}^2}=1h(g(0))=h(0)=0 より h(g(x))=x であり,
\bigl(h(\tan x)\bigr)'=h'(\tan x)\cdot \dfrac{1}{\cos^2 x}=\dfrac{1}{1+\tan^2 x}\cdot\dfrac{1}{\cos^2 x}=1h(\tan 0)=h(0)=0 より h(\tan x)=x であり,両者は等しくなる.

(iii) h'(x)\gt 0 より h(x) は単調増加であるから,h(s)=h(t)s=t は同値となり (ii) から g(x)=\tan x となり,(i) より f(x)=\dfrac{1}{\cos x} となる.

2024.04.23記
参考
2007年(平成19年)京都大学-数学乙[6] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR

2024年(令和6年)東京工業大学-数学[5]

2024.04.16記

[5] 整数の組 (a,b) に対して 2 次式 f(x)=x^2+ax+b を考える.方程式 f(x)=0複素数の範囲のすべての解 \alpha に対して \alpha^n=1 となる正の整数 n が存在するような組 (a,b) をすべて求めよ.

2024.04.16記
大数1988年1月号の宿題2番

整数を成分とする適当な2次の正方行列 A をとれば,
A^n=E
A^k\neq Ek=1,2,…,n-1
となるような2以上の整数 n を求めよ.

を思い出してしまった.

[解答]
(i) f(x)=0 の解が実数解しか持たないとき,その解は 1 で重解,-1 で重解, 1,-1 の2解の3通りで (a,b)=(-2,1),(2,1),(0,-1) となる.

(ii) f(x)=0 の解が共役複素数のとき,|\alpha|^n=1 より |\alpha|=1 だから \alpha=\cos\theta+i\sin\theta\sin\theta\neq 0) とおくことができる.
このとき,
a=-2\cos\theta\sin\theta\neq 0
であるから,-2\lt a\lt 2 となり,また b=1 である.

(a,b)=(1,1) のとき,x^2+x+1=0 の解は x^3-1=(x-1)(x^2-x+1)=0,つまり x^3=1 を満たすので題意を満たす.

(a,b)=(0,1) のとき,x^2+1=0 の解は x^4-1=(x^2-1)(x^2+1)=0,つまり x^4=1 を満たすので題意を満たす.

(a,b)=(1,1) のとき,x^2-x+1=0 の解は x^6-1=(x^3-1)(x-1)(x^2-x+1)=0,つまり x^6=1 を満たすので題意を満たす.

以上より,
(a,b)=(-2,1),(-1,1),(0,-1),(0,1),(1,1),(2,1)
となる.

2024年(令和6年)九州大学前期-数学III[5]

2024.03.25記

[1] 自然数 mn に対して
I(m,n)=\displaystyle\int_1^e x^m e^x (\log x)^n\, dx
とする.以下の問いに応えよ.

(1) I(m+1,n+1)I(m,n+1)I(m,n)mn を用いて表せ.

(2) すべての自然数 m に対して,\displaystyle\lim_{n\to\infty} I(m,n)=0 が成り立つことを示せ.

2024.03.25記(2024/03/25/231430)

[解答]
(1) I(m+1,n+1)=\Bigl[ e^x x^{m+1}(\log x)^{n+1}\Bigr]_1^e
-\displaystyle\int_1^e e^x\left\{(m+1)x^m(\log x)^{n+1}+(n+1)x^m(\log x)^{n}\cdot\dfrac{1}{x} \right\}dx=e^{e+m+1}-(m+1)I(m+1,n+1)-(n+1)I(m,n)
が成立する.

(2) 1\lt x\lt e
e^x x^{m+1}(\log x)^{n+1}\gt 0
より,任意の自然数 mn に対して
I(m,n)\gt 0
であり,(1) より
I(m+1,n+1)+(m+1)I(m+1,n+1)+(n+1)I(m,n)=e^{e+m+1}\gt 0
であるから,
0\lt I(m,n)\lt\dfrac{e^{e+m+1}}{n+1}
が成立する,n\to\infty
\dfrac{e^{e+m+1}}{n+1}\to 0
であるから,はさみうちの原理により
\displaystyle\lim_{n\to\infty} I(m,n)=0
が任意の自然数 m について成立する.