[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2011年(平成23年)東京工業大学-数学[2]

2024.10.05記

[2] 実数 x に対して
f(x)=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}} |\cos t - x\sin 2t|\,dt
とおく.

(1) 関数 f(x) の最小値を求めよ.

(2) 定積分 \displaystyle\int_0^1 f(x)\, dx を求めよ.

本問のテーマ
はみだし削り論法

2024.10.04記

[解答]
f(x)=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}} |\cos t - 2x\sin t\cos t|\,dt=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}} |1 - 2x\sin t|\,\cos t \,dt
であるから,u=\sin t と置換すると f(x)=\displaystyle\int_0^1 |1-2xu|\,du となる.
注)これははみだし削り論法の 1:\sqrt{2} の場合であるから,x=\dfrac{1}{\sqrt{2}} で最小となることがわかるが,被積分関数が単純なので普通に積分しておく.

これは,uv 平面で 直線 v=1-2xuu=0,1v=0 で囲まれる部分の面積となるので

(1) (i) x\leqq \dfrac{1}{2} のとき
f(x)=\dfrac{1+(1-2x)}{2}\cdot 1=1-x(台形の面積)

(ii) x\gt \dfrac{1}{2} のとき
f(x)=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2x}\cdot 1\cdot \{1^2+(2x-1)^2\}=x-1+\dfrac{1}{2x}(相似な三角形2つの面積)

となり,(i) は単調減少で,(ii) は
f(x)=x+\dfrac{1}{2x}-1\geqq 2\sqrt{\dfrac{1}{2}}-1
(等号は x=\sqrt{2}
となるので,f(x)x=\dfrac{1}{\sqrt{2}} で最小値 \sqrt{2}-1 をとる.

(2) \displaystyle\int_0^1 f(x)\, dx=\displaystyle\int_0^{\frac{1}{2}} (1-x)\, dx-\displaystyle\int_{\frac{1}{2}} (1-x)\, dx+\left[ \dfrac{1}{2}\log x \right]_{\frac{1}{2}}^1=\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{2}\log \dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{2}\log 2
である.

2024.10.08記
[解答]でさらに u^2=v と置換する.

[別解]
(1) f(x)=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}} |\cos t - 2x\sin t\cos t|\,dt=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}} |1 - 2x\sin t|\,\cos t \,dt
であるから,u=\sin t と置換すると f(x)=\displaystyle\int_0^1 |1-2xu|\,du となる.

さらに v=u^2 と置換すると
f(x)=\displaystyle\int_0^1 \left|\dfrac{1}{2\sqrt{v}}-x\right|\,dv となるので,はみだし削り論法により x=\dfrac{1}{2\sqrt{1/2}}=\dfrac{1}{\sqrt{2}} で最小となる.このとき最小値は
F(x)=u-\dfrac{u^2}{\sqrt{2}} とおくと,
f(x)=\displaystyle\int_0^1 |1-\sqrt{2}u|\,du
=2F\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)-F(0)-F(1)=2\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}-\dfrac{1}{2\sqrt{2}}\right)-0-1+\dfrac{1}{\sqrt{2}}=\sqrt{2}-1
となる.

注)2つの直角三角形の面積(\dfrac{1}{2}\cdot| \Delta x|\cdot \sqrt{2} |\Delta x|=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\Delta x^2)の和
\dfrac{\sqrt{2}}{2}\left\{\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^2+\left(1-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)^2\right\}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}(2 - \sqrt{2})=\sqrt{2}-1
として求めても良い.