[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1953年(昭和28年)東京大学-数学(一般数学)[1]

[1] n日後にA円支払う約束の手形がある.日歩a銭でn日預けた後に,A円受け取ることのできる金額が,割引利率日歩a銭に対するこの手形の理論上の現在価格である.銀行ではこれに対してA\times\Bigl(1-\dfrac{na}{10000}\Bigr)を支払う習慣である.銀行で支払う金額は理論上の現在価格よりいつでも小さいことを証明せよ.しかしanとが大きくなければ,その差額のAに対する比は小さい.a\leqq 5n\leqq 100のとき,この比はどのくらいか.

本問のテーマ
\dfrac{1}{1+x} の一次近似

2024.09.23記
a 銭は \dfrac{a}{100} 円である.日歩 a 銭とは「一日100円あたり a 銭の利息がつくということである.

[解答]
\alpha=\dfrac{na}{10000} とおくと,理論上の現在価格は \dfrac{A}{1+\alpha} であり,銀行が支払う金額は (1-\alpha)A である.

このとき
(理論上の現在価格)-(銀行が支払う金額)
=\dfrac{A}{1+\alpha}-(1-\alpha)A=\dfrac{\alpha^2}{1+\alpha}A\gt 0
であるから,銀行で支払う金額は理論上の現在価格よりいつでも小さい.

この差額の A に対する比 =\dfrac{\alpha^2}{1+\alpha}=\alpha+1+\dfrac{1}{\alpha+1}-2\alpha\gt 0 で単調増加であるから,0\lt \alpha=\dfrac{na}{10000}\leqq \dfrac{1}{20} の範囲でこの比は \dfrac{1}{420} 以下となる.

常識的に 1-\alpha\gt 0 として考える(でないとお金を払って買い取ってもらうことになってしまう)ことができ,このとき
(理論上の現在価格)÷(銀行が支払う金額)
=\dfrac{1}{1-\alpha^2}\gt 1
としても証明できる.