[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1937年(昭和12年)東京帝國大學工學部-數學[3]

2022.08.11記

[3] 原點ヨリ曲線y^2(x+1)=x^2(x-1)ノ上ノ點マデノ距離ガ最モ短イ點ノ位置ヲ求メヨ.

2022.08.23記
原点は曲線上にあるので答は (0,0) というと問題にはならない.原点はこの曲線の孤立点であるからこの問題においては曲線上の点ではないものとする

[解答]
x=r\cos\thetay=r\sin\theta とおくと
r^2\{r(\cos\theta-2\cos^3\theta)+1\}=0
だから,r=0(原点)または r=\dfrac{1}{2\cos^3\theta-\cos\theta} である.
r=\dfrac{1}{2\cos^3\theta-\cos\theta} は原点を含まないので原点は孤立点であり,孤立点以外で原点と曲線の距離が最小となるのは,|2\cos^3\theta-\cos\theta| が最大となるときである.

s=2t^3-t のグラフから(図示略),|2\cos^3\theta-\cos\theta||\cos\theta|=1 のときに最大となるので
原点と曲線の距離が最小となるのは,\theta=0,\pi のときで(r,\theta)=(1,0),(-1,\pi) となりいずれも (1,0) を表す.

よって求める点は (1,0) となる.

[解答]
f(x,y)=y^2(x+1)-x^2(x-1)=0…①
における特異点
f_x(x,y)=y^2-3x^2+2x=0…②,f_y(x,y)=2y(x+1)=0…③
と連立させることによって得られる.

③より y=0 または x=-1 であり,これと①から (x,y)=(0,0),(1,0) で,このうち②をみたすのは (x,y)=(0,0) だけである.

特異点である原点において f_{xx}=2f_{xy}=f_{yx}=0f_{yy}=2 となり,
f_{xx}f_{yy}-f_{xy}f_{yx}=4\gt 0
であるから,原点は孤立点である.

さて,x=-1 とすると f(-1,y)=2\neq 0 なので x=-1 となる曲線上の点はない.よって x\neq -1 として良く,このとき
y^2=\dfrac{x^2(x-1)}{x+1}
だから左辺が非負となることから |x|\geqq 1 であり,このとき,
x^2+y^2=x^2+\dfrac{x^2(x-1)}{x+1}=\dfrac{2x^3}{x+1}
となるので,
g(x)=\dfrac{2x^3}{x+1}|x|\geqq 1 における最小値を与える x を求めれば良い.

g'(x)=\dfrac{6x^2(x+1)-2x^3}{(x+1)^2}=\dfrac{2x^2(2x+3)}{(x+1)^2}
より

x \cdots -\dfrac{3}{2} \cdots -1 1 \cdots
g' - 0 + +
g \searrow \dfrac{27}{2} \nearrow +\infty 1 \nearrow

となるので,x=1 のとき g(x) は最小値1をとる(距離はこの最小値のルートで 1).
x=1 のとき y^2=0 から y=0 となるので求める点は (1,0) となる.

y^2(x+1)=x^2(x-1) から孤立点である原点を除いたグラフ

もちろん,y 座標の極大極小を与える点と原点からの距離の極大極小を与える点は一般に異なる.