[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1963年(昭和38年)東京大学-数学(文科)[5]

2022.02.19記

[5] 平面上を運動する点があり,その x 座標,y 座標が時刻 t函数として
 \left\{ \begin{array}{l} x=f(t)=vt\cos\alpha \\
y=g(t)=vt\sin\alpha-5t^2 \end{array}\right.
\quad \Bigl(v\gt 0,0\lt\alpha\lt\dfrac{\pi}{2}\Bigr)
で与えられている.ある時刻 t_0x=10y=0 となるとして,その時刻 t_0 における xy の変化率の2乗の和 (f'(t_0))^2+(g'(t_0))^2\alpha の式で表わせ.また,この式の値を最も小さくするような \alpha の値を求めよ.

2022.02.19記
物理で習う斜方投射。重力加速度が 9.8\mbox{m/s}^2 でなく,ざっくり 10\mbox{m/s}^2 となっている。

初速度 v\mbox{m/s} で仰角 \alpha で原点から投げた物体が
10\mbox{m} 先に落下したときに,落下時の速度が一番小さくなるのはどのようなときかという問題。

落下時の速度は、初速度と同じになるので,物体を一番遠くに飛ばすには、斜め上45度に投げれば良いことを知っていれば,一番初速度が節約できる、という話。

[大人の解答]
重力加速度が 10\mbox{m/s}^2 の場合の斜方投射で10\mbox{m} 先に落下させるときに落下時の速度が一番小さくなれば良い.落下時の速度は初速度 v に等しく,それを一番小さくするには斜め上45度に投げれば一番遠くに投げられることから、\alpha=45^{\circ}である.

10\mbox{m} 先に落下させるとき
vt_0\cos\alpha=10vt_0\sin\alpha-5t_0{}^2=0
から t_0\neq 0
vt_0\cos\alpha=10v\sin\alpha=5t_0
となるので,t_0 を消去すると
v^2=\dfrac{50}{\sin\alpha\cos\alpha}
となるので,
(f'(t_0))^2+(g'(t_0))^2=(f'(0))^2+(g'(0))^2=v^2=\dfrac{50}{\sin\alpha\cos\alpha}
となる.


[解答]
条件より vt_0\cos\alpha=10vt_0\sin\alpha-5t_0{}^2=0 であり,前者から t_0\neq 0 で,このとき
vt_0\cos\alpha=10v\sin\alpha=5t_0
が成立する.

よって
(f'(t_0))^2+(g'(t_0))^2 =(v\cos\alpha)^2+(v\sin\alpha-10t_0)^2=(v\cos\alpha)^2+(-v\sin\alpha)^2=v^2
となる.
vt_0\cos\alpha=10v\sin\alpha=5t_0
からt_0 を消去すると
v^2=\dfrac{50}{\sin\alpha\cos\alpha}
となるので,
(f'(t_0))^2+(g'(t_0))^2=\dfrac{50}{\sin\alpha\cos\alpha}=\dfrac{100}{\sin2\alpha}
となる.

この値が一番小さくなるには,\sin2\alpha が最大となれば良いので
\alpha=45^{\circ}のときである.