[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1982年(昭和57年)東京大学-数学(文科)[2]

2023.08.23記

[2] xy 平面上の曲線 y=x^2 上の 3 点を,x 座標の小さいものから順に \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} とする.\mbox{A}\mbox{B} との x 座標の差は aa は正の定数),\mbox{B}\mbox{C} との x 座標の差は 1,という関係を保ちながら3点 \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} が動く.

\angle\mbox{CAB} が最大になるときの,点 \mbox{A}x 座標を a で表わせ.また,\angle\mbox{CAB}が最大になるときに,\angle\mbox{ABC} が直角になるような a の値を求めよ.

本問のテーマ
2次関数の表す放物線の割線の傾き(2020.11.26)
円周角の定理(2023.09.04)

2020.11.26記
2次関数の表す放物線の割線の傾きは「(x座標の和)×(x^2の係数)」(高校入試).
傾きは tan で.

[解答]
\mbox{A}x座標を t とすると,
\mbox{B}x座標を t+a
\mbox{C}x座標を t+a+1 だから
\rm AB,\rm AC の傾きは 2t+a,2t+a+1 となる.

よって \tan \angle\mbox{CAB}=\dfrac{1}{4\left(t+\dfrac{a}{2}\right)\left(t+\dfrac{a+1}{2}\right)+1} となる.

これが最大となるのは t+\dfrac{a}{2}+t+\dfrac{a+1}{2}=0,つまり t=-\dfrac{a}{2}-\dfrac{1}{4} のときである.

このとき \rm AB の傾きは -\dfrac{1}{2} だから \rm BC の傾きが a+\dfrac{1}{2}=2 であれば良い.

よって a=\dfrac{3}{2}

2023.09.04記

[うまい解答]
\mbox{A}x座標を t とすると,
\mbox{B}x座標を t+a
\mbox{C}x座標を t+a+1 だから
\rm AB,\rm AC の傾きは 2t+a,2t+a+1 となり,傾きの差は1で一定である.

直線 x=t+1\rm AB,\rm AC の交点を \mbox{B}',\mbox{C}' とすると \mbox{B}'\mbox{C}'=1 であるから,
\triangle \mbox{AB}'\mbox{C}’ は底辺 \mbox{B}'\mbox{C}'=1,高さが 1 の三角形となる.このとき \angle\mbox{A} が最大となるのは,\mbox{B}',\mbox{C}'を通り直線 x=t に接する円(半径は一定)と点 \mbox{A} の位置関係を考えることにより,点 \mbox{A} が直線 x=t と円の接点に一致するときであることが円周角の定理からわかる.このとき,\triangle\mbox{AB}'\mbox{C}' は2等辺三角形だから,\rm AB\rm AC の傾きの和は0となる.

よって \angle\mbox{CAB} が最大になるときの,\rm AB,\rm AC の傾きはそれぞれ -\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2} となり,t=-\dfrac{a}{2}-\dfrac{1}{4} のときである.

このとき \rm BC の傾きが a+\dfrac{1}{2}=2 であれば良い.

よって a=\dfrac{3}{2}

これから,2直線の傾きの差が一定のとき,傾きの和の絶対値が小さいほど2直線のなす角度が大きくなり,傾きの和の絶対値が大きいほど2直線のなす角度が小さくなることがわかる.