[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2011年(平成23年)東京大学後期-総合科目II[1]B

[1] この問題では,商業活動における意思決定のプロセスにおいて,最適に行動するにはどのようにすればよいかを,数学を用いて考える.

B
ある町に1本の大通りがあり,その通りに沿って 1[\mbox{km}] にわたって均等に人が住んでいる.そこに何軒かのコンビニエンスストア(コンビニ)が出店を考えている.住民は1日1回,いずれかのコンビニに立ち寄る.また,その際,住民は自宅に一番近いコンビニに行く.各店は自分の店に来る客の数をなるべく多くするように出店位置を決める.

以上の状況を数学的に表すために,客が区間 [0,1] の上に均等に分布しており,店の出店位置は,[0,1] 上の1点で表されるものとする.問題を分析しやすくするために,複数の店が同じ場所に出店することも可能であるとし,その場合に は,その場所にやってくる客を各店が等分するものとする.たとえば,店が X, Y, Z の3軒あって,それぞれの出店位置を xyz(0\leqq x,y,z\leqq 1) とし,仮に x=y\lt 2 が成り立っていたとすると,来客数(の割合)は,X と Y がそれぞれ
\dfrac{1}{2}\times\dfrac{x+z}{2}=\dfrac{x+z}{4}
となる一方,Zは
1-\dfrac{x+z}{2}
となる.

(B-1) 店が X, Y の2軒のときを考える.それぞれの出店位置を xy とする.

(a) x\lt y のとき,Y の位置は変えずに,X だけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ.

(b) x=y\neq\dfrac{1}{2} のとき,Y の位置は変えずに,X だけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ.

(c) x=y=\dfrac{1}{2} のとき,X, Y のどちらに着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはで きないことを示せ.

(c)のような状況一すなわち,どの店に着目しても,他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできない状況一を「均衡」という.店が3軒以上の場合も同様である.

(B-2) 店が X, Y, Z の3軒あるときを考える.それぞれの出店位置を xyz とする.

(a) x\lt y\leqq z の場合は,均衡にならないことを示せ.

(b) x=y=z の場合は,均衡にならないことを示せ.

(B-3) 店が4軒あるときを考える.このとき,均衡は存在するか.もし均衡が 存在するとすれば,4軒の出店位置はどのようなものになるか.理由を添えて述べよ.

2021.02.15記

[解答]