[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)早稲田大学理工学部-数学[4]

2023.12.20記

[4] 複素数平面上に 2\mbox{A}(1)\mbox{B}(\sqrt{3}i) がある.ただし,i虚数単位である.複素数 z に対し w=\dfrac{3}{z} で表される点 w を考える.以下の問に答えよ.

(1) z=1\dfrac{1+\sqrt{3}i}{2}\sqrt{3}i のときの w をそれぞれ計算せよ.

(2) 実数 t に対し z=(1-t)+t\sqrt{3}i とする.\alpha=\dfrac{3-\sqrt{3}i}{2} について,\alpha z の実部を求め,さらに (w-\alpha)\overline{(w-\alpha)} を求めよ.

(3) w と原点を結んでできる線分 \mbox{L} を考える.z が線分 \mbox{AB} 上を動くとき,線分 \mbox{L} が通過する範囲を図示し,その面積を求めよ.

本問のテーマ
一次分数変換(メビウス変換)の円々対応

2023.12.20記
正確には,反転して原点中心に3倍拡大して複素共役をとったもの.

(2) の z=(1-t)+t\sqrt{3}i は直線 \mbox{AB} でそれを \alpha=\sqrt{3}\cdot\dfrac{\sqrt{3}-i}{2} 倍するので直線ABを原点中心 -\dfrac{\pi}{6} 回転 \sqrt{3} 倍拡大した \mbox{Re}(\alpha z)=\dfrac{3}{2} となる.

w=f(z) とおくと,\alphaf(\mbox{A})f(\mbox{B}) の中点となっているので,直線 \mbox{AB} の像はf(\mbox{A})f(\mbox{B}) を直径とする円,つまり中心が \alpha の円となる.これを気付かせるために (w-\alpha)\overline{(w-\alpha)}=|w-\alpha|^2 を計算させ,その結果が定数となることから円に気付かせるという訳である.

[解答]
(1) z=1 のとき w=3
\dfrac{1+\sqrt{3}i}{2}のとき w=\dfrac{3(1-\sqrt{3}i)}{2}
\sqrt{3}i のとき w=-\sqrt{3}i
である.

(2) \alpha z=\dfrac{3-(4t-1)\sqrt{3}i}{2} により \mbox{Re}(\alpha z)=\dfrac{3}{2}

(w-\alpha)\overline{(w-\alpha)}=\dfrac{(3-\alpha z)\overline{(3-\alpha z)}}{|z|^2}
=\dfrac{9-3\cdot 2\cdot \mbox{Re}(\alpha z)3+|\alpha|^2|z|^2}{|z|^2}=|\alpha|^2=3

(3) 0\leqq \mbox{arg}(z)\leqq \dfrac{\pi}{2} より
0\geqq \mbox{arg}(w)=\mbox{arg}\left(\dfrac{3}{z}\right)\geqq -\dfrac{\pi}{2} となるので線分 \mbox{AB} の像は円 |w-\alpha|=\sqrt{3} の第4象限(および軸)の部分となる.

よって線分 L の通過範囲は円 |w-\alpha|=\sqrt{3} の周または内部の第4象限(および軸)の部分となる(図示略).

よってその面積は半円と直角3角形の面積に分割して
\dfrac{3\pi+3\sqrt{3}}{2}