[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)早稲田大学理工学部(全5問)

2021.02.18記

[I]

xy 平面上の曲線 y=x^3C とする.C 上の2点 {\rm A}(-1, -1), {\rm B}(1, 1) をとる.さらに,C 上で原点 \rm O\rm B の間に動点 {\rm P}(t, t^3) (0\lt t\lt 1) をとる.このとき,以下の問に答えよ.

(1) 直線 \rm APx 軸のなす角を \alpha とし,直線 \rm PBx 軸のなす角を \beta とするとき,\tan\alpha,\tan\betat を用いて表せ.ただし,0\lt\alpha\lt\dfrac{\pi}{2}0\lt\beta\lt\dfrac{\pi}{2} とする.

(2) \tan\angle \rm APBt を用いて表せ.

(3) \angle\rm APB を最小にする t の値を求めよ.

(1) \tan\alpha=t^2-t+1\tan\beta=t^2+t+1
(2) \tan(\beta-\alpha)=\dfrac{2t}{t^4+t^2+2} であるから,
\tan\angle{\rm APB}=\tan(\pi-(\beta-\alpha))=-\tan(\beta-\alpha)=-\dfrac{2t}{t^4+t^2+2} である.
(3) \angle{\rm APB} が最大となるとき,=\dfrac{t^4+t^2+2}{t}=t^3+t+\dfrac{2}{t}=:f(t) が最小になる.
f'(t)=3t^2+1-\dfrac{2}{t^2}=\dfrac{3t^4+t^2-2}{t^2}=00\lt t\lt 1 より t=\sqrt{\dfrac{2}{3}} であり,その前後で f'(t) は負から正となるので極小かつ最小.

[II]

整式 f(x)=x^4-x^2+1 について,以下の問に答えよ.

(1) x^6f(x) で割ったときの余りを求めよ.

(2) x^{2021}f(x) で割ったときの余りを求めよ.

(3) 自然数 n3 の倍数であるとき,(x^2-1)^n-1f(x) で割り切れることを示せ.

f(x)(x^2+1)=x^6+1 だから x^6\equiv -1(\mbox{mod}\,f(x)) である.よって,

(1) -1

(2) x^{2021}\equiv x^5 \equiv x^3-x(\mbox{mod}\,f(x))

(3) n=3m のとき,
(x^2-1)^{3m}-1\equiv (x^4)^{3m}-1\equiv x^{12m}-1\equiv 1-1=0(\mbox{mod}\,f(x))

[III] 複素数 \alpha = 2 + i\beta=-\dfrac{1}{2}+i に対応する複素数平面上の点を {\rm A}(\alpha){\rm B}(\beta) とする.このとき,以下の問に答えよ.

(1) 複素数平面上の点 {\rm C}(\alpha^2){\rm D}(\beta^2) と原点 \rm O の3点は一直線上にあることを示せ.

(2) 点 {\rm P}(z) が直線 \rm AB 上を動くとき,z^2 の実部を x,虚部を y として,点 {\rm Q}(z^2) の軌跡を x, y の方程式で表せ.

(3) 点 {\rm P}(z) が三角形 \rm OAB の周および内部にあるとき,点 {\rm Q}(z^2) 全体のなす図形を K とする.K複素数平面上に図示せよ.

(4) (3) の図形 K の面積を求めよ.

(1) \beta=\dfrac{i}{2}\alpha より \beta^2=-\dfrac{1}{4}\alpha^2 だから \rm O,C,D は一直線上にある.

(2) z=t+i であるから,z^2=t^2-1+2t i となるので x=t^2-1y=2t となり x=\dfrac{y^2}{4}-1

(3) 線分 \rm ABz=t+i(-\dfrac{1}{2}\leqq t\leqq 2) であるから,x=\dfrac{y^2}{4}-1(-1\leqq y\leqq 4)
となり,線分 \rm AB を原点中心に s(0\leqq s\leqq 1) 倍拡大すると,z^2 は原点中心に s^2(0\leqq s^2\leqq 1) 倍拡大されるので,求める領域は,\rm O,C,D が一直線上にあることに注意すると,
\dfrac{y^2}{4}-1\leqq x\leqq \dfrac{3}{4}y
の周または内部(図示略)

(3) \dfrac{1}{6} 公式から \dfrac{125}{24}

[IV]

n,k を 2 以上の自然数とする.n 個の箱の中に k 個の玉を無作為に入れ,各箱に入った玉の個数を数える.その最大値と最小値の 差が \ell となる確率を P_{\ell}(0\leqq\ell\leqq k) とする.このとき,以下の問に答えよ.

(1) n = 2k = 3 のとき,P_0P_1P_2P_3 を求めよ.

(2) n \geqq 2k = 2 のとき,P_0P_1P_2 を求めよ.

(3) n \geqq 3k = 3 のとき,P_0P_1P_2P_3 を求めよ.

(1) 玉の組は順不同で (3,0),(2,1) だから最大値と最小値の差は、1 か 3 だから P_0=P_2=0

差が3となる場合は全てが同じ箱に入る場合で \dfrac{2}{2^3}=\dfrac{1}{4} だから P_3=\dfrac{1}{4} となり, P_1=\dfrac{3}{4} となる.
以上から P_0=0P_1=\dfrac{3}{4}P_2=0P_3=\dfrac{1}{4}

(2)(i) n=2 のとき玉の組は順不同で (2,0),(1,1) だから最大値と最小値の差は、0 か 2 だから P_1=0

差が2となる場合は全てが同じ箱に入る場合で P_2=\dfrac{1}{2} となり,残りは P_0=\dfrac{1}{2} となる.
以上から P_0=\dfrac{1}{2}P_1=0P_2=\dfrac{1}{2}

(ii) n\geqq 3 のとき 玉の組は順不同で (2,0,\cdots),(1,1,0,\cdots) だから最大値と最小値の差は 1 か 2 だから P_0=0
差が2となる場合は全てが同じ箱に入る場合で P_2=\dfrac{1}{n} となり,残りは P_1=\dfrac{n-1}{n} となる.
以上から P_0=\dfrac{1}{2}P_1=\dfrac{n-1}{n}P_2=\dfrac{1}{n}

(3)(i) n=3 のとき玉の組は順不同で (3,0,0),(2,1,0),(1,1,1) だから最大値と最小値の差は、0 か 2 か 3 だから P_1=0

差が3となる場合は全てが同じ箱に入る場合で P_3=\dfrac{1}{9} となり,差が 0 となるのは P_2=\dfrac{3!}{3^3}=\dfrac{2}{9} となり,残りは P_2=\dfrac{2}{3} となる.
以上から P_0=\dfrac{2}{9}P_1=0P_2=\dfrac{2}{3}P_3=\dfrac{1}{9}

(ii) n\geqq 4 のとき 玉の組は順不同で (3,0,\cdots),(2,1,0,\cdots),(1,1,1,0,\cdots) だから最大値と最小値の差は1 か 2 か 3 だから P_0=0
差が3となる場合は全てが同じ箱に入る場合で P_3=\dfrac{1}{n^2} となり, 差が1となるのは P_1=\dfrac{{}_n\mbox{P}_3}{n^3}=\dfrac{(n-1)(n-2)}{n^2} となり(注1),残りは P_2=\dfrac{3(n-1)}{n^2} となる(注2).
以上から P_0=0P_1=\dfrac{(n-1)(n-2)}{n^2}P_2=\dfrac{3(n-1)}{6n^2}P_3=\dfrac{1}{n^2}

(注1) 1つ目の玉が入る箱,2つ目の玉が入るそれ以外の箱,3つ目の玉が入るそれら以外の箱を選ぶと考えれば {}_n\mbox{P}_3 通りとなるのだが,予備校の解答では何故か,わざわざ3つの箱を選んだ後に3つの玉を入れる {}_n\mbox{C}_3\times 3! をとっている所が多い.

(注2) 余事象で求めたが,2つ玉を入れる箱,1つ玉を入れる箱を順番に選び,1つ玉を入れる箱に入れる玉をどれにするか選ぶと考えれば {}_n\mbox{P}_2 \times 3=3n(n-1) 通りというように直接数えることもできる.

[V]

正四面体 \rm OABC に対し,三角形 \rm ABC の外心を \rm M とし,\rm M を中心として点 \rm A\rm B\rm C を通る球面を S とする.また,S と辺 \rm OA\rm OB\rm  OC との交点のうち,\rm A\rm B\rm C とは異なるものをそれぞれ \rm D\rm  E\rm  F とする.さらに, S と三角形 \rm OAB の共通部分として得られる弧 \rm DE を考え,その弧を含む円周の中心を \rm G とする.\vec{a}=\overrightarrow{\rm OA}\vec{b}=\overrightarrow{\rm OB}\vec{c}=\overrightarrow{\rm OC} として,以下の問に答えよ.

(1) \overrightarrow{\rm OD}\overrightarrow{\rm OE}\overrightarrow{\rm OF}\overrightarrow{\rm OG}\vec{a}\vec{b}\vec{c} を用いて表せ.

(2) 三角形 \rm  OAB の面積を S_1,四角形 \rm  ODGE の面積を S_2 とするとき,S_1:S_2 をできるだけ簡単な整数比により表せ.

(1) 1:\sqrt{2}:\sqrt{3} の直角3角形と方羃の定理から
 \sqrt{3}x=(\sqrt{2}+1)(\sqrt{2}-1)=1
となり,x=\dfrac{1}{\sqrt{3}} となる.これは斜辺の \dfrac{1}{3} 倍だから,\overrightarrow{\rm OD}=\dfrac{1}{3}\vec{a}\overrightarrow{\rm OE}=\dfrac{1}{3}\vec{b}\overrightarrow{\rm OF}=\dfrac{1}{3}\vec{c}

\rm G\rm EB の垂直2等分線と \rm AB の垂直2等分線の交点であるから,
\triangle\rm OAB の重心と \rm AB の3等分点からなる3角形の重心となり,\overrightarrow{\rm OG}=\dfrac{4}{9}(\vec{a}+\vec{b})

(2) \rm DE の中点を \rm N とすると S_1:S_2=9\triangle {\rm ODE}:四角形{\rm ODGE}=9{\rm ON}:{\rm OG}=9:\dfrac{8}{3}=27:8