[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2009年(平成21年)山梨大学医学部後期-数学[1](3)

2022.10.22記

[1](3)
2次正方行列 X
\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}X+X\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} を満たすとき,X^{101}=
\begin{pmatrix} \textrm{[ク]} & \textrm{[ケ]} \\ \textrm{[コ]} & \textrm{[サ]} \end{pmatrix} である.

本問のテーマ
シルベスタ(Sylvester)方程式
行列のクロネッカ積

2022.10.22記
シルベスタ方程式は AX+XB=C の形の方程式一般を指す.ここでは A=B の場合である.
AX-XB=Y の形のシルベスタ方程式は
2004年(平成16年)京都大学-数学(理系)[4] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
に出題されており,本問も行列のクロネッカ積を用いて解くことができる.

しかしながら,クロネッカ積を用いると4次行列となるので,そのまま成分計算で解く方が速い.先に成分計算で解いた後にクロネッカ積を用いて解くことにする.

[解答]
X=\begin{pmatrix} x & y \\ z & w \end{pmatrix}とおくと
\begin{pmatrix} x & y \\ x+z & y+w \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} x+y & y \\ z+w & w \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}
つまり
\begin{pmatrix} 2x+y & 2y \\ x+2z+w & y+2w \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}
から x=1y=1z=0w=1 となり,
X=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}となる.
ここで単位行列 I と零行列 O に対して (X-I)^2=O が成立するので,
X^{101}=(I+X-I)^{101}=I+101(X-I)=\begin{pmatrix} 1 & 101 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}
となる.

この X を行列のクロネッカ積を用いて求めてみよう.

[大人の解答]
A=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}C=\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 2 & 3 \end{pmatrix} とおくと,行列のクロネッカ積と vec 作用素を用いてAX+XA=AXI+IXA=C(Iは2次単位行列)は
(I\otimes A+A^{\top}\otimes I)\mbox{vec}(X)=\mbox{vec}(C)
と変形できる,つまり
\begin{pmatrix} A+I & I \\ O & A+I \end{pmatrix}\mbox{vec}(X)=\mbox{vec}(C)
と表すことができ,
\begin{pmatrix} 2 & 0 & 1 & 0\\1 & 2 & 0 & 1\\0 & 0 & 2 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 2 \end{pmatrix}\mbox{vec}(X)=
\begin{pmatrix} 3 \\ 2 \\ 2  \\ 3\end{pmatrix}
が得られるので
\mbox{vec}(X)=\dfrac{1}{4}\begin{pmatrix} 2 & 0 & -1 & 0\\ -1 & 2 & 1 & -1\\ 0 & 0 & 2 & 0\\ 0 & 0 & -1 & 2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 3 \\ 2 \\ 2  \\ 3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 1  \\ 1\end{pmatrix}
となり,X=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0  & 1\end{pmatrix} となる.

(以下、[解答]と同じ)