[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2020年(令和2年)東京大学-数学(理科)[6]

2020.10.14記

[6] 以下の問いに答えよ.

(1) A\alpha を実数とする.\theta の方程式  A\sin 2\theta-\sin(\theta+\alpha)=0 を考える.
A \gt 1 のとき,この方程式は 0 \leqq \theta \lt 2\pi の範囲に少なくとも4個の解を持つことを示せ.

(2)座標平面上の楕円
 C: \dfrac{x^2}{2}+y^2=1
を考える.また,0\lt r\lt 1を満たす実数 r に対して,不等式
 2x^2+y^2\lt r^2
が表す領域を D とする.D 内のすべての点 {\rm P} が以下の条件を満たすような実数 r(0 \lt r\lt 1) が存在することを示せ.また,そのような r の最大値を求めよ.

条件:C 上の点 \rm Q で,\rm Q における C の接線と直線 \rm PQ が直交するようなものが少なくとも 4 個ある.

本問のテーマ
楕円の縮閉線

2020.02.26記

東大理系数学の解答用紙は第1、2問で1面、第3問で1面、第4、5問で1面、第6問で1面なので、第3問と第6問は面倒なのだ。

(2)は(1)の式に結びつけるにはどうするかを考える。

[解答]

(1) 左辺を f(\theta) とおく。A\gt 1 だから、
f\left(\dfrac{\pi}{4}\right)\gt 0f\left(\dfrac{3\pi}{4}\right)\lt 0f\left(\dfrac{5\pi}{4}\right)\gt 0f\left(\dfrac{7\pi}{4}\right)\lt 0f\left(\dfrac{9\pi}{4}\right)\gt 0
なので、中間値の定理から、\dfrac{\pi}{4}\leq \theta\lt \dfrac{9\pi}{4}に少なくとも4つの実数解をもつ。
f(\theta) は周期 2\pi をもつので、0\leq \theta\lt 2\pi に少なくとも4つの実数解をもつ。

(2) C 上の点 \rm Q(\sqrt{2}\cos\theta,\sin\theta) とすると \rm Q における接線は
\dfrac{x\cos\theta}{\sqrt{2}}+y\sin\theta=1
となる.よって直線 \rm PQ
\sin\theta (x-\sqrt{2}\cos\theta)-\dfrac{\cos\theta}{\sqrt{2}}(y-\sin\theta)=0
つまり
x\sqrt{2}\sin\theta-y\cos\theta=\sin\theta\cos\theta
となる.

D 内の点は \left(\dfrac{s\cos\alpha}{\sqrt{2}},s\sin\alpha\right)
(但し 0\leqq s \lt r
とおけるので
\dfrac{s\cos\alpha}{\sqrt{2}}\times\sqrt{2}\sin\theta-s\sin\alpha\cos\theta=\sin\theta\cos\theta
つまり
\sin(\theta-\alpha)=\dfrac{1}{2s}\sin2\theta
となる.

(1)により 0\lt  r\leqq\dfrac{1}{2} ならば任意の s,\alpha について条件をみたす.
r の最大値が \dfrac{1}{2} であることを言うには
s=\dfrac{1}{2} のときには条件をみたさないような \alpha が存在することを言えば良い.

つまり
\sin(\theta-\alpha)=\sin2\theta
の解が3つ以下となるような \alpha が存在することを言えば良い.
\sin 2\theta - \sin(\theta-\alpha)=2\cos\dfrac{3\theta-\alpha}{2}\sin\dfrac{\theta+\alpha}{2}=0
より例えば\alpha=\dfrac{\pi}{4}とすると
\theta=\dfrac{5\pi}{12},\dfrac{13\pi}{12}, \dfrac{7\pi}{4} の3つしか存在しない。
(cos の部分が0となる \theta とsinの部分が0となる \theta が重なるような \alpha を探す)

よって r の最大値は \dfrac{1}{2} である.

2020.08.19記
Youtube に本問の解説動画があった。

www.youtube.com

[大人の解答]
(2) C の縮閉線に D が含まれるような r の最大値が答となるので C の縮閉線 2^{1/3}x^{2/3}+y^{2/3}=1D が含まれるような r の最大値を求めれば良い.

X=\sqrt{2}x,Y=y とおくと,アステロイド X^{2/3}+Y^{2/3}=1 に原点中心の円 X^2+Y^2\lt r^2 が含まれるような r の最大値を求めれば良く,それぞれの図形が Y=\pm X について対称であることから,アステロイドと円が|X|=|Y|=\dfrac{1}{2\sqrt{2}}で接するときに最大となる.

このときの r (0\lt r\lt 1)は r=\dfrac{1}{2} である.

かぁ。これには気付かなかった。そういえば、ある曲線の縮閉線は、曲率円の中心の軌跡だけでなく、法線の包絡線にもなるんだった。

そこで法線の包絡線をうまく活かした解答を作る.
法線の包絡線上の点で 2x^2+y^2 の値はどう変化することに着目するのだが、流石東大、簡単に求まるようになっている.

[大人の解答]
(2) C の縮閉線に D が含まれるような r の最大値が答.

C の縮閉線は,直線 {\rm PQ}x\sqrt{2}\sin\theta-y\cos\theta=\dfrac{\sin2\theta}{2} の包絡線であり,この式を \theta偏微分した x\sqrt{2}\cos\theta+y\sin\theta=\cos 2\theta と直線 {\rm PQ} の式から \theta を消去することによって縮閉線の式が得られる.

この2式の2乗和は  2x^2+y^2=\dfrac{1+3\cos^2 2\theta}{4} であるから,C の縮閉線上の点 (x,y)\theta でパラメータ表示したときに  2x^2+y^2 を計算すると \dfrac{1+3\cos^2 2\theta}{4} となることを表している.

 \dfrac{1+3\cos^2 2\theta}{4}\geqq \dfrac{1}{4} (等号は \cos 2\theta=0 のとき)だから,包絡線に  2x^2+y^2=r^2 が含まれるような r の範囲は、r^2\leqq\dfrac{1}{4} となり,r の最大値は \dfrac{1}{2} である.

2020.10.10記
放物線の縮閉線については、
1978年(昭和53年)東京大学-数学(理科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR

2020.10.12記
本問のテーマは「アポロニウスの最大最小問題」
アポロニウスの最大最小問題 - 球面倶楽部 零八式 mark II
であり、

の pp.4-7 に記載がある.
1978年(昭和53年)東京大学-数学(理科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
の放物線の縮閉線の話も述べられている。

2020.10.14記
アポロニウスの最大最小問題と縮閉線 - 球面倶楽部 零八式 mark II