2022.10.22記
QR 分解とグラム-シュミットの直交化法
2022.10.22記
前にも書いたかも知れないが,2000年代後半の山梨大学医学部の行列の問題は,大学で学ぶ線形代数に背景をもつものが多い.
2次元回転行列:,
剪断行列:(固有値が1で重解の行列),
対角行列:を用いて
正則な2次の正方行列 は
と分解できる.この分解を岩澤分解という.
この岩澤先生は 岩澤健吉先生 である.
Iwasawa decomposition では
となっているが
であるから,分解可能性については剪断行列と対角行列の順番が異なることは本質的ではない(線型変換の意味を考えると少し意味が変わる程度)細かい違いである.なお,正則行列を考えているので
となることに注意しておく.
いずれにせよ,QR分解
の右側の上三角行列をさらに剪断行列と対角行列に分解したものが岩澤分解と考えることができる.
さて本問の解答だが,
を成分計算して成分比較しても大した計算にはならないが,意味を考えた解法を与えておく.
と表される線型変換による単位正方形の像は
, で張られる平行四辺形であり,これを原点中心に 回転したものが
, で張られる平行四辺形になる.
よって 軸を原点中心に 回転するとに重なるので
,
となる.また2つの平行四辺形の辺の長さと面積が等しく,内積も等しいので
(内積か面積か片方で良いが,両方ある方が計算が楽)
,
(これは使わなくて良い),
,
が成立するので
(∵),
,
,
となる.
, がある.
向きの単位ベクトルとその成分を
とすると, の への正射影ベクトルは であるから
は (または)に垂直となるので,
を用いて と表現することができる.具体的には
は の への正射影ベクトルだから
である.つまり
と正規直交基底で分解できる.
このとき,これらの関係を行列で表現すると
となる.よって
と分解できる.