[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2008年(平成20年)京都大学前期-数学(理系乙)[6]

2020.09.04記

[6] 地球上の北緯 60^{\circ} 東経 135^{\circ} の地点を \rm A,北緯 60^{\circ} 東経 75^{\circ} の地点を \rm B とする.\rm A から \rm B に向かう2種類の飛行経路 R_1R_2 を考える.R_2 は西に向かって同一緯度で飛ぶ経路とする。R_1 は地球の大円に沿った経路のうち飛行距離の短い方とする.R_1 に比べて R_2 は飛行距離が3%以上短くなることを示せ。ただし地球は完全な球体であるとし,飛行機は高度0を飛ぶものとする.また必要があれば,この冊子の5ページと6ページの三角関数表を用いよ.

注:大円とは,球を球の中心を通る平面で切ったとき,その切り口にできる円のことである.

2020.09.04記

極座標で,北緯 \theta,東経 \phi なる点(x,y,z)
 x=\cos\theta\cos\phi y=\cos\theta\sin\phi x=\sin\theta
となる.経度を 60^{\circ} ずらせば,
2008年(平成20年)京都大学前期-数学(理系甲)[6] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
と同じ設定になる(\rm A,Bが逆だが).

地球の半径を1としても一般性を失わない.

北緯 60^{\circ} のなす円の半径は \dfrac{1}{2} で,R_2 の中心角は 60^{\circ}=\dfrac{\pi}{3} だから,R_2=\dfrac{\pi}{6}となる.

地球を回転し,\rm A,B の東経が 75^{\circ} 減るようにして,
北緯 60^{\circ} 東経 60^{\circ} の地点を \rm A,北緯 60^{\circ} 経度 0^{\circ} の地点を \rm B としても良く,
このとき{\rm A}\Bigl(\dfrac{1}{4},\dfrac{\sqrt{3}}{4},\dfrac{\sqrt{3}}{2}\Bigr){\rm B}\Bigl(\dfrac{1}{2},0,\dfrac{\sqrt{3}}{2}\Bigr) となるので,\angle{\rm AOB}=R_1 から\cos R_1=\dfrac{7}{8}=0.875 となる.

三角関数表から R_1\lt 29^{\circ} となり,また R_2= 30^{\circ} であるから,
\dfrac{R_1-R_2}{R_1} \gt \dfrac{1}{30} \gt 0.03
となり,R_1 に比べて R_2 は飛行距離が3%以上短くなる.

球面三角法には,球面上の2点間の距離を求める距離の公式があり,

(大人の解法)
\cos R_1=\sin 60^{\circ} \sin 60^{\circ}+\cos 60^{\circ}\cos 60^{\circ} \cos(135^{\circ}-75^{\circ}) =\dfrac{3}{4}+\dfrac{1}{8}=\dfrac{7}{8}
である.

この公式は覚え易い.覚える必要などないけど.