[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1993年(平成5年)東京大学前期-数学(理科)[3]

2024.01.07記

[3] xy 平面内に次の二つの集合 lm を考える.
 l=\{(-5,y)\,|\,-5\lt y\lt 5\}m=\{(5,y)\,|\,-5\lt y\lt 5\}

lm 上にない 2\mbox{A}\mbox{B} に対し, \mbox{A}\mbox{B}lm と交らない線分又は折れ線で結ぶときの経路の長さの最小値を d(\mbox{A},\mbox{B}) で表す.

2\mbox{P}(-9,-3)\mbox{Q}(9,3) に対し d(\mbox{P},\mbox{R})=d(\mbox{Q},\mbox{R}) となる点 \mbox{R} の軌跡を xy 平面上に図示せよ.

本問のテーマ
ホイヘンスの原理(という程のものでもないが)

2024.01.08記
1993年,1994年と距離の問題が出題され,それ以外では出題されてはいないように思うので,このときの入試委員で距離空間が好きな人がいたのだろう(しかも出題委員の任期は2年?).

2点 \mbox{P}\mbox{Q} から同時に球面波を出したとき,その波の一部分は2つの線分 l,m の裏に回り込むが,結局2つの波がぶつかる場所は何処にあるのか?というのが本問である.

\mbox{Q} から球面波を出したときの波面が一番始めに到達する場所を描いたものは

のようになる.異なる2方向から同時に到達する点の軌跡は双曲線となることに注意しておく.

[解答]
\mbox{S}(-3,9)\mbox{T}(3,-9)\mbox{A}(-5,5)\mbox{B}(-5,-5)\mbox{C}(5,-5)\mbox{D}(5,5) とおく.
線分 \mbox{AB},線分 \mbox{CD} と交わらないときの \mbox{R}\mbox{PQ} の垂直2等分線 y=-3x であるから,

(i) 正方形 \mbox{PTQS} の周または外部における点 \mbox{R} の軌跡は \mbox{PQ} の垂直2等分線 y=-3x となる.


(ii) 正方形 \mbox{PTQS} の周または内部において
(a) 点\mbox{P} から点 \mbox{A} からの距離と \mbox{B} からの距離が等しくなる点の軌跡は
(点\mbox{A} からの距離)-(点\mbox{B} からの距離)=2\sqrt{5} をみたすので
 (x+5)^2-4y^2=-20
であるから,y\geqq\dfrac{\sqrt{(x+5)^2+20}}{2} の範囲においては点 \mbox{A} 経由が最短となり,y\leqq\dfrac{\sqrt{(x+5)^2+20}}{2} の範囲においては点 \mbox{B} 経由が最短となる.

(b) 点\mbox{Q} から点 \mbox{C} からの距離と \mbox{D} からの距離が等しくなる点の軌跡は
(点\mbox{C} からの距離)-(点\mbox{D} からの距離)=2\sqrt{5} をみたすので
 (x-5)^2-4y^2=-20
であるから,y\geqq\dfrac{\sqrt{(x-5)^2+20}}{2} の範囲においては点 \mbox{D} 経由が最短となり,y\leqq\dfrac{\sqrt{(x-5)^2+20}}{2} の範囲においては点 \mbox{C} 経由が最短となる.

よって,
(イ) y\geqq\dfrac{\sqrt{(x+5)^2+20}}{2} のとき
\mbox{R} の軌跡は
(点\mbox{D} からの距離)-(点\mbox{A} からの距離)=2\sqrt{5} をみたすので
 4x^2-(y-5)^2=20
となる.

(ロ) \dfrac{\sqrt{(x-5)^2+20}}{2}\leqq y\leqq\dfrac{\sqrt{(x+5)^2+20}}{2} のとき
\mbox{R} の軌跡は
\mbox{BD}の垂直2等分線であるから
 y=-x
となる.

(ハ) y\leqq \dfrac{\sqrt{(x-5)^2+20}}{2} のとき
\mbox{R} の軌跡は
(点\mbox{B} からの距離)-(点\mbox{C} からの距離)=2\sqrt{5} をみたすので
 4x^2-(y+5)^2=20
となる.

以上を図示して次図