[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)京都大学-数学(文系)[3]

[3]

n を2以上の整数とする.1 から n までの番号が付いた n 個の箱があり,それぞれの箱には赤玉と白玉が1個ずつ入っている.このとき操作(*)を k=1,\ldots,n-1 に対して,k が小さい方から順に1回ずつ行う.

(*) 番号 k の箱から玉を1個取り出し,番号 k+1 の箱に入れてよくかきまぜる.

一連の操作がすべて終了した後,番号 n の箱から玉を1個取り出し,番号 1 の箱に入れる.このとき番号 1 の箱に赤玉と白玉が1個ずつ入っている確率を求めよ.

2021.03.10記

[解答]

1 番目の箱から選んだ色と n 番目の箱から選んだ色が同じであれば良いので,その確率を求める.

k 番目の箱の3つの玉から1つ選んだときに,それが 1 番目の箱から選んだ色と同じ確率を p_k((k\geqq 2) とおくと,p_2=\dfrac{2}{3} である.

k+1 番目の箱の中味が 1 番目の箱から選んだ色と同じ玉が2個で違う玉が1個である確率が p_k であり,その条件のもとで選んだ玉が 1 番目の箱から選んだ色と同じ色となる確率は \dfrac{2}{3} である.

また,k+1 番目の箱の中味が 1 番目の箱から選んだ色と同じ玉が1個で違う玉が2個である確率は 1-p_k であり,その条件のもとで選んだ玉が 1 番目の箱から選んだ色と同じ色となる確率は \dfrac{1}{3} である.

よって,k+1 番目の箱の3つの玉から1つ選んだときに,それが 1 番目の箱から選んだ色と同じ確率は漸化式
p_{k+1}=\dfrac{2}{3}p_k+\dfrac{1}{3}(1-p_k)=\dfrac{1}{3}p_k+\dfrac{1}{3}(k=2,\ldots,n-1)
をみたす.よって
p_n-\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{3}\Bigl(p_{n-1}-\dfrac{1}{2}\Bigr)=\dfrac{1}{3^{n-2}}\Bigl(p_{2}-\dfrac{1}{2}\Bigr)=\dfrac{1}{2\cdot 3^{n-1}}
となり,
p_n=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2\cdot 3^{n-1}}
となる.

最近の京大数学はこれぐらい丁寧に論述しないといけないとかいう風の噂を聞いた(無責任)。

shaitan.hatenablog.com

みたいな漸化式を不要とする考え方ができると思っていたが思いつく前に購読しているブログに書かれていることを見つけてしまった。これによると,

[うまい解答]

箱1から選んだ玉が戻ってくる確率が \dfrac{1}{3^n} であり,それ以外の場合は赤と白が戻ってくる確率は半々だから,求める確率の数は \dfrac{1}{2}\Bigl(1+\dfrac{1}{3^n}\Bigr) となる.

すばらしい.