[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1938年(昭和13年)東京帝國大學農學部-數學[1]

2022.07.24記

(解答ハ各問題ノ下ノ餘白ニ記載スベシ)

[1] 三角形ノ三邊ヲ測リ各a=4m,b=5m ,c=6m ヲ得テ其面積ヲ求メントスc邊ノ測定ニ0.06m ノ誤リアツタナラバ面積ノ誤差ハ大略何程ニナルカ(小數第三位迄算出セヨ).

2022.07.27記

[解答]

三角形の面積はヘロンの公式により
\dfrac{1}{4}\sqrt{(9+c)(9-c)(c-1)(c+1)}
であるから,c=6+xとおくと,三角形の面積は
\dfrac{1}{4}\sqrt{(15+x)(3-x)(5+x)(7+x)}
=\dfrac{1}{4}\sqrt{3\times5\times 7\times 15+120 x+o(x^2)}
=\dfrac{15\sqrt{7}}{4}\sqrt{1+\dfrac{120}{3\times5\times 7\times 15}x+o(x^2)}
=\dfrac{15\sqrt{7}}{4}\left(1+\dfrac{60}{3\times5\times 7\times 15}x\right)+o(x^2)
=\dfrac{15\sqrt{7}}{4}+\dfrac{\sqrt{7}}{7}x+o(x^2)
となる.よって面積の誤差は
\dfrac{0.06\sqrt{7}}{7}=0.02267\cdots
となる.よって求める答は 0.023

[別解]

三角形の面積をS(c)とすると,ヘロンの公式により
16 \{S(c)\}^2=(9+c)(9-c)(c-1)(c+1)=(81-c^2)(c^2-1)=-81+82c^2-c^4
となる.f(c)=-81+82c^2-c^4とおき,c=6+xとおくと|x|が十分小さいとき,
16 \{S(6+x)\}^2=f(6)+f'(6)x=3\cdot5\cdot7\cdot15+(164\cdot 6-4\cdot 6^3) x
と近似できる.このとき,面積の誤差は
S(6+x)-S(6)=\dfrac{1}{4}\Bigl\{\sqrt{f(6+x)}-\sqrt{f(6)}\Bigr\}
\mbox{≒}\dfrac{1}{4}\dfrac{f(6+x)-f(6)}{2\sqrt{f(6)}}
=\dfrac{1}{4}\cdot \dfrac{(164\cdot 6-4\cdot 6^3) x}{2\sqrt{3\cdot5\cdot7\cdot15}}
=\dfrac{x}{\sqrt{7}}
となる.よって誤差は
|S(6+x)-S(6)|=\dfrac{|x|}{\sqrt{7}}
と一次近似でき,誤差は大体
\dfrac{0.06\sqrt{7}}{7}=0.02267\cdots
となる.よって求める答は 0.023

当時の解答では,
s=\dfrac{a+b+c}{2} として
7.47\leqq s\leqq 7.53…①,
3.47\leqq s-a\leqq 3.53…②,
2.47\leqq s-b\leqq 2.53…③,
1.41\leqq s-c\leqq 1.59…④
から
\sqrt{7.47\times 3.47\times 2.47\times 1.41}\leqq S\leqq\sqrt{7.53\times 3.53\times 2.53\times 1.19}
として
9.5013\cdots\leqq S\leqq 10.3405\cdots
から誤差を 0.419 と求めているが,
①②③の範囲の左側にくるときは,④の範囲の右側にきてしまうので,不等式自体は正しいが,誤差を大きく見積りすぎている.

真面目に計算する場合,f'(c)c=6 の近辺で正で単調増加だから
f(5.94)=9.89735687899\cdots \leqq f(6)=9.92156741649\cdots \leqq f(6.06)=9.94268702062\cdots
となるので,誤差は 0.0242105375\cdots0.02111960412 の大きい方で
0.024 である.

解答や別解を2次近似すればより精度が高くなる.その場合
\sqrt{1+x} を2次近似すれば良いが,これは一般二項定理を用いて
\sqrt{1+x}=1+{}_{1/2}\mbox{C}_1x+{}_{1/2}\mbox{C}_2x^2+o(x^3)
=1+\dfrac{1}{2}x+\dfrac{(1/2)(-1/2)}{2\times 1}x^2+o(x^3)
=1+\dfrac{1}{2}x-\dfrac{1}{8}x^2+o(x^3)
と求めるのが簡単である.