[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1939年(昭和14年)東京帝國大學理學部-數學[2]

2022.07.24記

[2] 三角形{\rm ABC}ノ邊{\rm AC}{\rm CB}上ニ夫々點{\rm P}{\rm Q}ヲトリ{\rm AP}:{\rm PC}={\rm CQ}:{\rm QB} ナラシムルトキ,直線{\rm PQ}ノ包絡線ハ何カ.

本問のテーマ
アフィン変換により包絡線は包絡線にうつる

2022.08.06記

[大人の解答]
{\rm AP}:{\rm PC}=(1-t): とおく.

{\rm C}\mapsto (0,0){\rm A}\mapsto (1,0){\rm B}\mapsto (0,1)
なるアファイン変換によって
{\rm P}\mapsto (t,0){\rm Q}\mapsto (0,1-t)
に移り,直線 \rm PQ
(1-t)x+ty=t-t^2
に移る.この直線の包絡線は,この式を t偏微分した
-x+y=1-2t
と連立させることにより,
(x,y)=\left(t^2,(t-1)^2\right)
を得る.このパラメータ表示は
x+y=2t^2-2t+1x-y=2t-1 であるから,放物線 (2t-1,2t^2-2t+1) を線形変換したものとなり,放物線である.

この放物線は t=0\rm Q を通り,接ベクトルは (0,-2)y 軸に平行となり, t=1\rm P を通り,接ベクトルは (-2,0)x 軸に平行となる.

以上から,求める包絡線は
\rm A で辺 \rm AC に接し,\rm B で辺 \rm BC に接する放物線」
となる.

なお,(x,y)=\left(t^2,(t-1)^2\right) から
0\leqq t\leqq 1 のとき \sqrt{x}+\sqrt{y}=1 となり,これが放物線となることは基本知識である.

直線 \rm PQ の式を
t^2-(1+x-y)t+x=0
とみるとこれは t2次方程式であり,この場合,包絡線の式は判別式
(1+x-y)^2-4x=0
によって得られる.実際,これに(x,y)=\left(t^2,(t-1)^2\right)を代入すればきちんと t が消去されていることがわかる.

アフィン変換を用いずに解こうとすると,

{\rm A}(a,0){\rm B}(-b,0){\rm C}(0,c)
とおき,{\rm AP}:{\rm PC}=(1-t):t とおくと
{\rm P}(ta,(1-t)c){\rm Q}(-(1-t)b,tc)
であるから,直線 \rm PQ の方程式は
...
であり,これを t2次方程式とみることにより包絡線の式は
判別式を0とおいた
...
となる.

のように求めることができるが,ここで得られた一般の位置にある2次曲線が、「放物線」であり,「\rm A,B で三角形の辺に接する」ことを示すのは面倒であり,当時の解答では,「\rm A,B を通る放物線」であることは示していたが,\rm A,B で接していない略図を載せているものもあった.