[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1940年(昭和15年)東京帝國大學理學部-數學[1]

2022.07.20記

(二時間)

[1] 次ノ函数ノぐらふヲ畫ケ.
f(x)=\sin x+\dfrac{\sin 2x}{2}+\dfrac{\sin 3x}{3}

本問のテーマ

2022.07.23記

鋸波とは,g(x)=x-\pi\lt x\lt \pi)を周期 2\pi で繰り返したものであり,そのフーリエ級数展開
g(x)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}2(-1)^{n-1}\dfrac{\sin nx}{n}
である.この鋸波を x 軸方向に \pi だけ平行移動して,x について対称移動させて y 軸方向に \dfrac{1}{2} 倍拡大させたグラフを h(x) とすると
h(x)=-\dfrac{1}{2}g(x-\pi)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n}\dfrac{\sin nx+n\pi}{n}=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{2n}\dfrac{\sin nx}{n}=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{\sin nx}{n}
となる.これは y=\dfrac{\pi-x}{2}0\lt x\lt 2\pi)を周期 2\pi で繰り返したものである.

このh(x)フーリエ級数展開のはじめの3項が,問題文の f(x) である.

このことから,y=f(x)0\lt x\lt \pi)の部分は y=\dfrac{\pi-x}{2},つまり \left(0,\dfrac{\pi}{2}\right)(\pi,0)を結ぶ線分に近い形になることがわかる.

[解答]
f(x) は奇関数で周期が 2\pi であるから,0\leqq x\leqq \pi で考察すれば十分である.

f(x)=\sin x \left(2+\cos x-\dfrac{4}{3}\sin^2 x\right)
=\dfrac{1}{3}\sin x (4\cos^2 x+3\cos x+2)
=\dfrac{1}{3}\sin x \left\{ \left( 2\cos\theta +\dfrac{3}{4}\right)^2+\dfrac{7}{16}\right\}
より0\leqq x\leqq \pi ではf(x)=0 の解は x=0,\pi となる.

f'(x)=\cos x+\cos 2x+\cos 3x=2\cos 2x\left(\cos x+\dfrac{1}{2}\right)
より,0\leqq x\leqq \pif'(x)=0 となるのは
\dfrac{1}{4}\pi,\dfrac{2}{3}\pi,\dfrac{3}{4}\pi である.

よって f(x)0\leqq x\leqq \pi における増減表は

x 0 \cdots \dfrac{1}{4}\pi \cdots \dfrac{2}{3}\pi \cdots \dfrac{3}{4}\pi \cdots \pi
f'(x) + 0 - 0 + 0 -
f(x) 0 \nearrow \dfrac{4\sqrt{2}+3}{6} \searrow \dfrac{\sqrt{3}}{4} \nearrow \dfrac{4\sqrt{2}-3}{6} \searrow 0

となるので,奇関数,周期2\piに注意して図示すれば良い.

f\left(\dfrac{2\pi}{3}\right)=0.43\cdotsf\left(\dfrac{3\pi}{4}\right)=0.44\cdots なので正確に図示しようとすると,
この極小値,極大値の区別がほとんどつかなくなるのでグラフには座標を入れなかった.