[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1940年(昭和15年)東京帝國大學理學部-數學[2]

2022.07.20記

[2] 直交軸ニ關スル曲線y^2=4pxノ切線ヘ主軸上ノ定點(h,0)ヨリ下セル垂線ノ最小値ヲ求ム.但phハ正トス.

本問のテーマ
放物線と円が接するとき(放物線の曲率),放物線に含まれる円

2022.07.23記

[解答]
曲線 y^2=4px は放物線であり,曲線上の接点(x_1,y_1)における法線は
y_1(x-x_1)=-2p(y-y_1)
となるので x切片はx_1+2p である.

(i) h\geqq 2p のとき
(h,0) 中心で放物線と x=h-2p で接する円が存在し,
それは
(x-h)^2+y^2=(2p)^2+4p(h-2p)=4p(h-p)
である.この円周上の点は
4px-4p(h-p)+(x-h)^2=x^2+2(2p-h)x+h^2-4ph+4p^2=\{x-(h-2p)\}^2\geqq 0
より放物線の内部にあるので,放物線の全ての接線は円の外部にあることがわかる.
よって放物線の接線とこの円が異なる2点で交わることがなく,接することはあるので,
円の中心から放物線の接線に下した垂線の長さの最小値は円の半径 2\sqrt{p(h-p)} である.
(ちなみに接点の x 座標は h-2p

(ii) h\lt 2p のとき
(h,0) 中心で放物線と接する円の接点は (0,0)
であり,その円は
(x-h)^2+y^2=h^2
である.この円周上の点は
4px-h^2+(x-h)^2
=x^2+2(2p-h)x\geqq 0(何故ならx,2p-h\geqq 0)
より放物線の内部にあるので,放物線の全ての接線は円の外部にあることがわかる.
よって放物線の接線とこの円が異なる2点で交わることがなく,接することはあるので,
円の中心から放物線の接線に下した垂線の長さの最小値は円の半径 h である.
(ちなみに接点の x 座標は 0

[別解]
放物線 y^2=4px の点(x_1,y_1)における接線は
y_1y=2p(x+x_1),つまり
2px-y_1y+2px_1=0
であり,この直線の正領域にある点 (h,0)から下した垂線の長さは
\dfrac{2ph+2px_1}{\sqrt{4p^2+y_1^2}}=\dfrac{2ph+2px_1}{\sqrt{4p^2+4px_1}}=\sqrt{p}\dfrac{h+x_1}{\sqrt{p+x_1}}
である.

ここで \dfrac{(h+x_1)^2}{p+x_1}x_1微分すると
\dfrac{(h+x_1)(x_1-h+2p)}{(p+x_1)^2}
となる.よって,

(i) h-2p\geqq 0 のとき,
垂線の長さは x_1=h-2p で最小値 2\sqrt{p(h-p)} をとる.

(ii) h-2p\lt 0 のとき,
垂線の長さは x=0 で最小値 h をとる.