[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1994年(平成6年)東京大学前期-数学(文科)[1]

2020.07.27記

[1]  xy 平面上で,次の条件を満たす点 (x,y) の範囲を  D とする.
 \log_2 x\leqq 2+\log_2 y \leqq \log_2 x + \log_2 (4-2x)

(1)  D xy 平面上に図示せよ.

(2)  s<1 のとき, y-sx D 上での最大値 f(s) を求め,関数 t=f(s) のグラフを  st 平面上に図示せよ.

2020.07.27記

ルジャンドル変換。普通は下に凸な関数 f(x) から下に凸な関数 f^{\ast} (p) への変換で、\displaystyle f^{\ast} (p) = \max_{x} \{px-f(x)\} によって定義される.

 y=-f(x) s=-p とおくと,\displaystyle f^{\ast} (-s) = \max_{x} \{y-sx\} となるので,本文の場合はDx軸に関して折り返したものの Legendre 変換を y軸に関して折り返したものを考えていることになる.

要するに,Dを原点について対称移動した図形 E の Legendre 変換を考えれば良い.

E の境界として登場する下に凸な部分、 y=g(x)=\dfrac{x^2+2x}{2}-\dfrac{3}{2}\leqq x\lt 0)の Legendre 変換は、微分逆関数積分を経て
 \dfrac{x^2+2x}{2} \to x+1 \to s-1 \to f(s)=\dfrac{(s-1)^2}{2}+C
となる.積分定数 Cは、y=\dfrac{x^2+2x}{2}の原点を通る接線の傾きが1であることから、 f(1)=0 となり,C=0 となる。

この範囲で, \dfrac{x^2+2x}{2} の接線の傾きは -\dfrac{1}{2}以上、1未満であるから
 f(s)=\dfrac{(s-1)^2}{2}-\dfrac{1}{2}\leqq s\lt 0)となる.

s\leqq-\dfrac{1}{2}のときは,\dfrac{(s-1)^2}{2}s=-\dfrac{1}{2}における接線-\dfrac{3}{2}s+\dfrac{3}{8}であるから、この範囲でf(s)=-\dfrac{3}{2}s+\dfrac{3}{8}となる.

以上から,
 f(s)=\left\{\begin{array}  {}-\dfrac{3}{2}s+\dfrac{3}{8} & (s\leqq-\dfrac{1}{2}) \\ \dfrac{(s-1)^2}{2} & (-\dfrac{1}{2}\leqq s\lt 0) \end{array}\right.
となる.

[解答]
(1) 与えられた不等式は
 \log_2\dfrac{x}{4} \leqq \log_2 y \leqq \log_2 \dfrac{x(2-x)}{2} (真数条件から 0\lt x\lt 2)となるので、
 \dfrac{x}{4}\leqq y\leqq \dfrac{x(2-x)}{2} \quad (0\lt x\leqq 2)
となる(図示略)

(2) y-sx が最大になるのは、y=\dfrac{x(2-x)}{2}のときで、0\lt x\leqq\dfrac{3}{2}における  h(x)=y-sxの最大値を求めれば良く,

h(0)=0(含まない),
h\Bigl(\dfrac{3}{2}\Bigr)=-\dfrac{3}{2}s+\dfrac{3}{8}
h(1-s)=\dfrac{(s-1)^2}{2}0\lt 1-s\leqq\dfrac{3}{2},つまり{}-\dfrac{1}{2}\leqq s\lt 0

のうち最大なものを繋ぐことにより,
 f(s)=\left\{\begin{array}  {}-\dfrac{3}{2}s+\dfrac{3}{8} & (s\leqq-\dfrac{1}{2}) \\ \dfrac{(s-1)^2}{2} & (-\dfrac{1}{2}\leqq s\lt 0) \end{array}\right.
となる.

Legendre 変換について、\displaystyle f^{\ast}(p)=\max_x \{px-f\} \geqq px -f(x) から Young の不等式  f(x) + f^{\ast}(p)\geqq px が導かれる。

2020.07.28記
Young の不等式の例題は
2006年(平成18年)東京大学前期-数学(理科)[6] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
参照