2023.08.23記
2020.11.26記
行列 の固有値が
(i) 相異なる の場合, はある逆行列をもつ行列 を用いて
と変形できる.
(ii) で重解の場合,( は単位行列)であるか,そうでない場合はある逆行列をもつ行列 を用いて
と変形できる.
原点以外の不動点をもつので,固有値 をもつ.
よって の表現行列を とすると, のジョルダン標準形は , となる.前者の場合は のときは ()が原点を通らない不動直線(ならば不動直線は縮退し,もとの直線上の1点となる)となり, のときは単位行列なので原点を通らないあらゆる直線が原点を通る不動直線となる.また,後者の場合は ()が原点を通らない不動直線となる.
固有値重解の場合の議論をうまくするために,図形的に解くのが厄介であることが,この問題が難問とされる理由だと考えられる.また,直線が点にうつる場合もあるので表現がわかりにくくなっているのも難問といわれる理由の1つだろう.
まず,固有値,固有ベクトルを頭においた解答をしよう.ここでは,場合分けを少なくするために難しくするより,考え易いようにあえて場合分けを多くした.
直線 上の点は全て不動点である.
直線 上にない点 をとり,その像を とする.ここで のとき,一次独立な2つのベクトル , が自分自身にうつされるので,平面上の任意の点が不動点となる.よって として原点を通らない任意の直線を選べば良い.
以下, とする.直線 と 直線 の交点が「ない,原点以外,原点」で場合分けする.
(i) のとき, とかける.
直線 は直線に平行な原点を通らない直線であり,
直線 となるので,これを とすれば良い.
(ii) のとき,直線 の交点を とする.
このとき とかける.
(a) のとき, は原点とは異なる不動点であるから,
直線 は原点を通らない直線であり,
直線 となるので,これを とすれば良い.
(b) のとき, は固有ベクトルであるから,
直線 は原点を通らない直線であり,
直線 となるので,これを とすれば良い.
の場合が単位行列
の場合において,
(i) が固有値が1で重解(で単位行列の定数倍でない)
(ii) (iii) が固有値が1とそれ以外の場合
に対応している.(ii),(iii)の場合分けは固有ベクトルの方向がわからないので,それを取り出すために場合分けが生じている.どの場合分けもほとんど同じ内容になっているには理由があって,それは が固有ベクトルになっている ということである.これはケーリー・ハミルトンの定理から と書けるので, に対して
が成立するからである.これを利用した解答が大数の当時の解答になるが,大数の解答は固有値や固有ベクトルを出さずに議論しているので読むのが大変になっている.
は固有値1をもつので,もう一つの固有値を とすると,任意のベクトル に対して となる.
直線 上にない点 をとり,その像を とする.また なる の像を とする.
このとき, が成立する.ここで とおくと,が成立する.
(i) 直線 が 直線 と一致するとき,これを とすれば良い.
(ii) 直線 が 直線 と一致しないとき
となり,四角形 は縮退していない平行四辺形である.よって 直線 ,直線 は一致しない平行直線なので,これら2直線の少なくとも一方は原点を通らない.そしてこれら平行2直線は直線 に平行ではないので,直線 と交点をもち,それは不動点である.そして直線の方向ベクトル は固有ベクトルであるからそれぞれは不動直線である(のときは縮退する).よって平行2直線のうち原点を通らない方を とすれば良い.
図形的でない解法として,次の解法が知られている.