[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1991年(平成3年)東京大学後期-数学[2]

2024.01.05記

[2] 平面上に3つの円 \mbox{C}_1\mbox{C}_2\mbox{C}_3 があって,\mbox{C}_1\mbox{C}_2 は相異なる 2\mbox{A}\mbox{B} で交わり,\mbox{C}_3\mbox{C}_1 および \mbox{C}_2 と互いに直交している.ただし,2つの円が互いに直交しているとは,2つの円に共通点があって,各共通点におけるそれぞれの円に対する接線がその共通点で直交しているときをいう.

(1) 円 \mbox{C}_3 の中心は,2\mbox{A}\mbox{B} を通る直線上にあることを示せ.

(2) 2\mbox{A}\mbox{B} の一方は円 \mbox{C}_3 の内側に,他方は円 \mbox{C}_3 の外側にあることを示せ.

本問のテーマ
反転
根軸

2024.04.15記

反転

[大人の解答]
C_3 の中心を \mbox{O}_3 とし,円 C_3 に関する反転を考える.

C_1 は円 C_3 と直交しているので,\mbox{O}_3 から
C_1 に引いた2接線は円 C_3 上で円 C_1 に接する.

(i) 反転は等角写像である

(ii) 反転により交点は交点に,接点は接点に移る

(iii) 反転の中心を通る直線は自分自身に移る

(iv) 反転の中心を通らない円は反転の中心を通らない円に移る

という反転の性質から,円 C_1 の反転による像は円 C_1 自身となる.

同様に円 C_2 の反転による像は円 C_2 自身となる.

よって (ii) および

(v) 反転は反転円の内部と外部を入れ換える

により反転によって \mbox{A}\mbox{B} は入れ換わることがわかり,(2)が示された.

このとき(iii) により直線 \mbox{O}_3\mbox{A} は自分自身に移り,かつ \mbox{O}_3\mbox{B} に移るので,
直線 \mbox{O}_3\mbox{A}\mbox{O}_3\mbox{B} は一致し,\mbox{O}_3\mbox{A}\mbox{B} は同一直線上にあることがわかり,(1)が示された.

反転の定義と方羃の定理は密接な関係があるので,以上のことは方羃の定理を用いて示すことができる.

[うまい解答]
(1) 円 C_3 の中心を \mbox{O}_3 とし,半径を r とする.

\mbox{O}_3 から円 C_1 に引いた接線の接点の1つを \mbox{T}_1
C_2 に引いた接線の接点の1つを \mbox{T}_2 とすると
\mbox{O}_3\mbox{T}_1=\mbox{O}_3\mbox{T}_2=r
である.

直線 \mbox{O}_3\mbox{A} と円 C_1,C_2 との交点をそれぞれ \mbox{B}_1,\mbox{B}_2 とすると方羃の定理により
r^2=\mbox{O}_3\mbox{T}_1{}^2=\mbox{O}_3\mbox{A}\cdot\mbox{O}_3\mbox{B}_1
r^2=\mbox{O}_3\mbox{T}_2{}^2=\mbox{O}_3\mbox{A}\cdot\mbox{O}_3\mbox{B}_2
であるから,
\mbox{O}_3\mbox{B}_1=\mbox{O}_3\mbox{B}_2
が成立し,\mbox{B}_1\mbox{B}_2 が一致することとなり,よってこれは \mbox{B} である.

よって \mbox{O}_3\mbox{A}\mbox{B} は同一直線上にある.

(2) r^2=\mbox{O}_3\mbox{A}\cdot\mbox{O}_3\mbox{B}
であるから,
\mbox{O}_3\mbox{A}\lt r\lt\mbox{O}_3\mbox{B}
または
\mbox{O}_3\mbox{A}\gt r \gt\mbox{O}_3\mbox{B}
のいずれかが成立するので, 2\mbox{A}\mbox{B} の一方は円 \mbox{C}_3 の内側に,他方は円 \mbox{C}_3 の外側にある.

(1)を座標でやるならこんな感じ.(2)を座標でやるのは計算が面倒なので省略

[解答]
(1) 円 C_3x^2+y^2=r^2 とおく.

C_1
(x-r\cos\theta_1+t_1\sin\theta_1)^2+(y-r\sin\theta_1-t_1\cos\theta_1)^2=t_1^2
すなわち
x^2+y^2-2(r\cos\theta_1-t_1\sin\theta_1)x-2(r\sin\theta_1+t_1\cos\theta_1)y+r^2=0
とおけ,同様に円 C_2
x^2+y^2-2(r\cos\theta_2-t_2\sin\theta_2)x-2(r\sin\theta_2+t_2\cos\theta_2)y+r^2=0
とおくことができる.

よって直線 \mbox{AB} の方程式は
-2(r\cos\theta_1-t_1\sin\theta_1)x-2(r\sin\theta_1+t_1\cos\theta_1)y+2(r\cos\theta_2-t_2\sin\theta_2)x+2(r\sin\theta_2+t_2\cos\theta_2)y=0
となり.(0,0) を通るので題意は示された.


根軸

直線 \mbox{AB} は円 C_1,C_2 の根軸と呼ばれ,

\mbox{P} が円 C_1,C_2 の根軸上にあることと,点 \mbox{P} の円 C_1,C_2 に関する方羃の値が等しいことは同値

であることが知られている.例えば
manabitimes.jp

を参照のこと.

本問(1)は「 C_3C_1 に直交すること」と「\mbox{O}_3C_1 に関する方羃の値が r^2 に等しい」ことが同値であることを利用して,\mbox{O}_3 の円 C_1,C_2 に関する方羃の値が等しいことから,\mbox{O}_3 が円 C_1,C_2 の根軸上にあることを示すことになっている.