[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)東京大学-数学(文科)[1]

2022.02.26記

[1] a,b を実数とする。座標平面上の放物線 y=x^2+ax+bC とおく。C は,原点で垂直に交わる2本の接線 \ell_1,\ell_2 を持つとする。ただし,C\ell_1 の接点 {\rm P}_1x 座標は,C\ell_2 の接点 {\rm P}_2x 座標より小さいとする。

(1) ba で表せ。また a の値はすべての実数をとりうることを示せ。

(2) i=1,2 に対し,円 D_i を,放物線 C の軸上に中心を持ち,点 {\rm P}_i\ell_i と接するものと定める。D_2 の半径が D_1 の半径の2倍となるとき,a の値を求めよ。


2022.02.26記
放物線 y=kx^2+\cdots の法線と軸の交点は,y 座標が \dfrac{1}{2k} だけ大きくなるという有名事実がある。

[大人の解答]

原点が C の外部にあるので b\gt 0 である。

Cy 切片と原点の y 座標の差は b であるから,原点から放物線に引いた接線の接点の x 座標は \pm\sqrt{b} となるので,両接線の傾きは \pm2\sqrt{b}+a である.

両接線が直交する条件は (2\sqrt{b}+a)(-2\sqrt{b}+a)=-1 から b=\dfrac{a^2+1}{4} となる.

任意の実数 a に対して,b=\dfrac{a^2+1}{4} によって正の数 b が定まり,放物線 C と接点が実際に存在することから,a はすべての実数をとりうる.

(2) 放物線の軸は x=-\dfrac{a}{2} であるから,求める条件は
\left(\dfrac{a}{2}+\sqrt{b}\right)^2+\dfrac{1}{4}=4\left\{\left(\dfrac{a}{2}-\sqrt{b}\right)^2+\dfrac{1}{4}\right\}
が成立する.

X=2\sqrt{b}+a とおくと
(2\sqrt{b}+a)(-2\sqrt{b}+a)=-1
2\sqrt{b}+a \gt -2\sqrt{b}+a(∵\sqrt{b}\gt 0
から X\gt 0 であり,
\dfrac{X^2}{4}+\dfrac{1}{4}=4\left\{\dfrac{1}{4X^2}+\dfrac{1}{4}\right\}
つまり
X^2-3-\dfrac{4}{X^2}=\dfrac{(X^2-4)((X^2+1)}{X^2}=0
となる.

よって X=2 であり,2\sqrt{b}+a=2-2\sqrt{b}+a=-\dfrac{1}{2} から a=\dfrac{3}{4} となる.

普通の人にはついていけない解答になってしまった。

ごはんも食べたし、普通の解答も書いておくか。

[解答]

(1) 原点を通る x=\alpha における C の接線が y=mx のとき,
x^2+ax+b-mx=(x-\alpha)^2
因数分解できるので,解と係数の関係から
m=2\alpha+ab=\alpha^2
が成立する.よって原点を通る2つの接線の傾きは
m=\pm2\sqrt{b}+a(接点の x 座標は \alpha=\pm\sqrt{b}
となり,これらが直交することから
-1=(2\sqrt{b}+a)(-2\sqrt{b}+a)=a^2-4b
つまり b=\dfrac{a^2+1}{4} が成立する.

ここで,任意の実数 a に対して b=\dfrac{a^2+1}{4} と定めれば,C の方程式は
y=x^2+ax+\dfrac{a^2+1}{4}
となり,C の原点を通る2本の接線 y=(a\pm\sqrt{a^2+1})x は互いに直交しており題意をみたしていることから, a の値はすべての実数をとりうる.

(2) C 上の点 (t,t^2+at+b) における法線の方程式は
y=-\dfrac{1}{2t+a}(x-t)+t^2+at+b
であり,これと軸 x=-\dfrac{a}{2} との交点の座標は
y=-\dfrac{1}{2t+a}\left(-\dfrac{a}{2}-t\right)+t^2+at+by=t^2+at+b+\dfrac{1}{2}
となるので,(t,t^2+at+b) で放物線に接し,中心が軸上にある円の中心は
\left(-\dfrac{a}{2},t^2+at+b+\dfrac{1}{2}\right)
となり,よって半径の2乗は
\left(t+\dfrac{a}{2}\right)^2+\left(\dfrac{1}{2}\right)^2
となる.

よって求める条件は,{\rm P}_1{\rm P}_2x 座標は b=\dfrac{a^2+1}{4} として,それぞれ -\sqrt{b}\sqrt{b} となることから,
\left(\sqrt{b}+\dfrac{a}{2}\right)^2+\dfrac{1}{4}=4\left\{\left(-\sqrt{b}+\dfrac{a}{2}\right)^2+\dfrac{1}{4}\right\}
が成立する.

X=2\sqrt{b}+a とおくと
(2\sqrt{b}+a)(-2\sqrt{b}+a)=-1
2\sqrt{b}+a \gt -2\sqrt{b}+a(∵\sqrt{b}\gt 0
から X\gt 0 であり,
\dfrac{X^2}{4}+\dfrac{1}{4}=4\left\{\dfrac{1}{4X^2}+\dfrac{1}{4}\right\}
つまり
X^2-3-\dfrac{4}{X^2}=\dfrac{(X^2-4)((X^2+1)}{X^2}=0
となる.

よって X=2 であり,2\sqrt{b}+a=2-2\sqrt{b}+a=-\dfrac{1}{2} から a=\dfrac{3}{4} となる.