[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2009年(平成21年)東京大学前期-数学(理科)[1]

[1] 自然数 m\geqq 2 に対し,m-1 個の二項係数 {}_{m}\mbox{C}_{1}{}_{m}\mbox{C}_{2}\cdots{}_{m}\mbox{C}_{m-1} を考え,これらすべての最大公約数を d_m とする.すなわち d_m はこれらすべてを割り切る最大の自然数である.

(1) m素数ならば,d_m=m であることを示せ.

(2) すべての自然数 k に対し,k^m-kd_m で割り切れることを,k に関する数学的帰納法によって示せ.

(3) m が偶数のとき d_m1 または 2 であることを示せ.

本問のテーマ
Kummer の定理

2019.04.15記
Kummer の定理(二項係数が素数 p で割り切れない条件 - 球面倶楽部 零八式 mark II) を利用する.

[大人の解答]

(1) m素数のとき、{}_{m}\mbox{C}_{r}m で割り切れない条件は m 進数の足し算 r+(m-r)=10_{(m)} で繰り上がりが起きないことであるが、r=1,2,...,m-1 のとき必ず繰り上がりが起きているので、これらはすべて m の倍数。{}_{m}\mbox{C}_{1}=m であるから、最大公約数は d_m=m である。

(2) \{(k+1)^m-(k+1)\}-\{k^m-k\}=\displaystyle\sum_{r=1}^{m-1}{}_{m}\mbox{C}_rd_m の倍数であり,1^m-1=0d_m の倍数であるから帰納的に k^m-kd_m の倍数。

(3) すべての k について(2)が成立するので、うまい k の値を探すと k=d_m-1 とすれば良いことがわかる。このとき (d_m-1)^m-(d_m-1)d_m の倍数である。ここで (d_m-1)^m-(d_m-1)d_m多項式とみたときの定数項は (-1)^m+1=2(mは偶数) であるから、2d_m の倍数である。よって d_m2 の約数となり 1 または 2 である。

[解答]

(3) k=m-1 としても良い。このとき、(m-1)^m-(m-1)=m\times A+2(Aは整数) とかけ、これは d_m の倍数である。また {}_{m}\mbox{C}_{1}=md_m の倍数である。よってユークリッドの互除法から 2d_m の倍数である。よって d_m2 の約数となり 1 または 2 である。

駿台の森茂樹先生による解答

[うまい解答]

(3) 0=(1-1)^m=2+\displaystyle\sum_{r=1}^{m-1}(-1)^r {}_{m}\mbox{C}_r から \displaystyle\sum_{r=1}^{m-1}(-1)^{r-1} {}_{m}\mbox{C}_r=2 が成立し、左辺が d_m の倍数であるから、右辺 2d_m の倍数である.

なお,1999年の東大の問題から、 mが偶数のときm=2^kのときはd_m=2であり、それ以外の偶数のときにはd_m=2であることがわかる。