[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2018年(平成30年)東京大学-数学(理科)[2]

2020.04.20記

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2020.04.20記

[解答]

(1) \dfrac{a_n}{a_{n-1}}=\dfrac{2(2n+1)}{n(n+1)} であるが,分子分母とも偶数であり,分子は2を1つしか因数にもたない.
よって,分母を正にとるので p_n=\dfrac{n(n+1)}{2}q_n=2n+1 となる.

(2) a_n=a_1\cdot\dfrac{q_2}{p_2}\cdot\dfrac{q_3}{p_3}\cdot\,\cdots\,\cdot\dfrac{q_n}{p_n}=\dfrac{3q_2q_3\cdots q_n}{p_2p_3\cdots p_n} の分子 3q_2q_3\cdots q_n は(1)により奇数であり,分母は p_2=3p_3=6 により,n\geqq 3 で偶数であるから,a_nn\geqq 3 のとき整数にならない.

また a_1=3a_2=5 は整数であるから,a_n が整数となるのは n=1,2 のみである.

文系に誘導付きの出題があるが、その誘導は上の解とは違って、a_n a_3 以降単調減少となり、a_7 <1 から n=1,\, 2,\ldots,6 まで調べれば十分という誘導である。その解答は
2018年(平成30年)東京大学-数学(理科)[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
を参照のこと。

もし誘導がなければどう解くかであるが、
二項係数は2で何回割れるか - 球面倶楽部 零八式 mark II
の考え方を利用する。

もちろん、n が3以上の素数の場合は、
二項係数が素数 p で割り切れない条件 - 球面倶楽部 零八式 mark II
を利用すると、
 {}_{2n+1}\mbox{C}_n 2n+1=n+(n+1) をn 進数の足し算で表現すると 21_{(n)}=10_{(n)}+11_{(n)} となり、くりあがりが生じないので、  {}_{2n+1}\mbox{C}_n素数 n で割り切れない。よって  a_n=\dfrac{{}_{2n+1}\mbox{C}_n}{n\, !} を既約分数で表現したとき、分母に素数 n が1つ残るので整数にはならない。というように a_n が整数にはならないことがわかるが、n合成数のときに a_n が整数になるかどうかはわからないので、(1)で既約分数にするときに素因数2に着目したように、2で何回割れるかについて着目することにする。

[解答]

(2) k が 2 で割りきれる回数を f(k) とし,k\, ! が 2 で割りきれる回数を F(k) とすると
 F(k+1)=F(k)+f(k+1) F(2k)=F(k)+kf(奇数)=0
が成立し,
 F(k)=\left[\dfrac{k}{2}\right]+\left[\dfrac{k}{4}\right]+\left[\dfrac{k}{8}\right]+\cdots
により
 F(k)\geqq \left[ \dfrac{k}{2}\right]
が成立する.

ここで  a_n の分子が2で割れる回数は
 F(2n+1)=F(2n)+f(2n+1)=F(n)+n+0=F(n)+n
であり,分母が2で割れる回数は
 2F(n)+F(n+1)=2F(n)+f(n+1)
であるから,a_n が整数であるためには2の因数の個数に着目すると
 n\geqq 2F(n)+f(n+1)
が必要である.

(i)  nが偶数のとき:
2\left[\dfrac{n}{2}\right]=nf(n+1)=0 であるから n\geqq 2F(n)+f(n+1)\geqq n+0=n が成立する.よって F(n)=\dfrac{n}{2} となるので \left[\dfrac{n}{4}\right]=0(つまり n\lt 4) が成立する.

よって n=2 が必要であり,a_2=5 より十分.

(ii)  nが奇数のとき:
2\left[\dfrac{n}{2}\right]=n-1f(n+1)\geqq 1 であるから n\geqq 2F(n)+f(n+1)\geqq (n-1)+1=n が成立する.よって 2F(n)=n-1 となり,F(n)=F(n-1)から F(n-1)=\dfrac{n-1}{2} となるので,\left[\dfrac{n-1}{4}\right]=0(つまり n\lt 5) が成立する.さらに f(n+1)=1 だから n+1 を4で割った余りは2となるので n を4で割った余りは1となる.よって n=1 が必要であり,a_1=3 より十分.

以上から n=1,\,2

この解答からわかると思うが,F(2n+1)=2F(n) の変形が肝になっているので素因数2の個数に着目するべきであることがわかる.

ちなみに
\left[\dfrac{k}{2}\right] \leqq F(k)\leqq \left[ k\left(\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\cdots\right)\right]\leqq [k]
が成立する.