[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)東京大学-数学(理科)[6]

[6]

定数 b,c,p,q,r に対し,x^4+bx+c=(x^2+px+q)(x^2−px+r)x についての恒等式であるとする.

(1)p\neq 0 であるとき,q,rp,b で表せ.

(2)p\neq 0 とする.b,c が定数 a を用いて
b=(a^2+1)(a+2),c=−\Bigl(a+\dfrac{3}{4}\Bigr)(a^2+1)
と表されているとき,有理数を係数とするt についての整式 f(t)g(t)
\{p^2−(a^2+1)\} \{p^4+f(a)p^2+g(a)\}=0
を満たすものを 1 組求めよ.

(3) a を整数とする.x4 次式
x^4+(a^2+1)(a+2)x−\Bigl(a+\dfrac{3}{4}\Bigr)(a^2+1)
有理数を係数とする 2 次式の積に因数分解できるような a をすべて求めよ.

Ferrari の公式(2022.01.07)

2021.02.25記

[解答]

(1) x^4+bx+c=x^4+(r+q-p^2)x^2+p(r-q)x+qr により係数比較して
p^2=r+q……(i)
p(r-q)=b……(ii)
rq=c……(iii)
である.p\neq 0 のとき,(ii) は r-q=\dfrac{b}{p} だから q=\dfrac{1}{2}\Bigr(p^2-\dfrac{b}{p}\Bigr)r=\dfrac{1}{2}\Bigr(p^2+\dfrac{b}{p}\Bigr)

(2) -\Bigl(a+\dfrac{3}{4}\Bigr)(a^2+1)=c=qr=\dfrac{1}{4}\Bigl(p^4-\dfrac{b^2}{p^2}\Bigr)
=\dfrac{1}{4}\Bigl(p^4-\dfrac{(a^2+1)^2(a+2)^2}{p^2}\Bigr)
を整理して
\{p^2-(a^2+1)\}\{p^4+(a^2+1)p^2+(a^2+1)(a+2)^2\}=0
となるので,
f(t)=t^2+1g(t)=(t^2+1)(t+2)^2

(3) x^4 の係数が有理数を係数とする2次式の積に分解できるとき,それらの2次式の x^2 の係数は A,\dfrac{1}{A}(Aは有理数) の形をしているので,前者に \dfrac{1}{A},後者に A を掛けることによって,それぞれの2次式が,x^2 の係数が1の2次式として良い.

(a) p=0 のとき,b=0 だから a=-2 となり,c=\dfrac{25}{4} となるが,(i)(ii)から c=-r^2\leqq 0 と矛盾するので有理数を係数とする2次式の積に分解できない.

(b) p\neq 0 のとき,p は6次方程式
\{p^2-(a^2+1)\}\{p^4+(a^2+1)p^2+(a^2+1)(a+2)^2\}=0
の解となるが,p\neq 0 から p^2,p^4\gt 0a^2+1\gt 0(a+2)^2\geqq 0 から,任意の実数 p\neq 0 について
p^4+(a^2+1)p^2+(a^2+1)(a+2)^2\gt 0
となるので,p=\pm\sqrt{a^2+1} である.

ここで一般に,正の整数の平方根有理数となるのは,その数が平方数のときである.というのも,自然数 n に対して \sqrt{n}=\dfrac{v}{w}(v,w は互いに素な正の整数) とおくと v^2=w^2 n となるが,全ての素数に対して v^2,w^2 に含まれる素因数の数はともに偶数となるので n に含まれる素因数の数も偶数となることから,自然数の平方数が有理数となるための必要十分条件がその自然数が平方数であることがわかるからである.

ここで a\neq 0 のとき,|a|^2\lt a^2+1\lt (|a|+1)^2 により a^2+1 は平方数とならないので p有理数にはならない.そして a=0 のとき,p=\pm 1 と確かに有理数となっており4次式は
x^4+2x-\dfrac{3}{4}=\Bigl(x^2+x-\dfrac{1}{2}\Bigr)\Bigl(x^2-x+\dfrac{3}{2}\Bigr)
有理数を係数とする2次式の積に因数分解できている.

よって求める aa=0 に限る.

2021.02.27
明らかだと思って省略したが,多くの予備校のように

x^4 の係数が有理数を係数とする2次式の積に分解できるとき,それらの2次式の x^2 の係数は A,\dfrac{1}{A}(Aは有理数) の形をしているので,前者に \dfrac{1}{A},後者に A を掛けることによって,それぞれの2次式が,x^2 の係数が1の2次式として良い

を入れておいた方がいいかも.ということで入れておいた

2022.01.07
すっかり、このブログの更新もご無沙汰だが、4次方程式の解き方として、Ferrari の公式があって,その特殊なケース。

[別解]

(1) x^4+bx+c=0,つまり x^4=-bx-c の両辺に 2\lambda x^2+\lambda^2 を加えると
(x^2+\lambda)^2=2\lambda x^2-bx+\lambda^2-c
と変形できる。この右辺の2次式が完全平方式となるような \lambda を見つければ,もとの4次方程式は2つの2次式に因数分解できる.

このような \lambda は,右辺を0とおいた2次方程式の判別式が0となるような \lambda であり,
b^2=8\lambda(\lambda^2-c)
をみたす.そしてこれをみたす \lambda を1つみつければ
(x^2+\lambda)^2=2\lambda \left(x-\dfrac{b}{4\lambda}\right)^2
と変形できるので、
x^4+bx+c=\left(x^2+\sqrt{2\lambda}x+\lambda-\dfrac{b}{2\sqrt{2\lambda}}\right)\left(x^2-\sqrt{2\lambda}x+\lambda+\dfrac{b}{2\sqrt{2\lambda}}\right)
因数分解できる.

ここで p=\sqrt{2\lambda} とおくと
x^4+bx+c=\left(x^2+px+\dfrac{p^2}{2}-\dfrac{b}{2p}\right)\left(x^2-px+\dfrac{p^2}{2}+\dfrac{b}{2p}\right)
が成立するので,
b^2=8\lambda(\lambda^2-c)=p^2(p^4-4c)
をみたす p に対して
x^4+bx+c=\left(x^2+px+\dfrac{p^2}{2}-\dfrac{b}{2p}\right)\left(x^2-px+\dfrac{p^2}{2}+\dfrac{b}{2p}\right)
恒等式となる.よって
(x^2+px+q)(x^2−px+r)=\left(x^2+px+\dfrac{p^2}{2}-\dfrac{b}{2p}\right)\left(x^2-px+\dfrac{p^2}{2}+\dfrac{b}{2p}\right)
が成立し,この一次の項と定数項を比較して,p\neq 0を用いると
q=\dfrac{p^2}{2}-\dfrac{b}{2p}r=\dfrac{p^2}{2}+\dfrac{b}{2p}
が成立する。

(2) b^2=p^2(p^4-4c)
b=(a^2+1)(a+2),c=−\Bigl(a+\dfrac{3}{4}\Bigr)(a^2+1)
を代入すると
(a^2+1)^2(a+2)^2=p^2\{p^4+(4a+3)(a^2+1)\}
となり,整理して
\{p^2-(a^2+1)\}\{p^4+(a^2+1)p^2+(a^2+1)(a+2)^2\}=0
となるので,
f(t)=t^2+1g(t)=(t^2+1)(t+2)^2
を得る。

(3) [解答]と同じ