[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)東京大学-数学(理科)[5]

[5]

\alpha を正の実数とする.0\leqq\theta\leqq\pi における \theta の関数 f(\theta) を,座標平面上の 2{\rm A}(−\alpha,−3){\rm P}(\theta+\sin\theta,\cos\theta) 間の距離 {\rm AP}2 乗として定める.

(1) 0\lt\theta\lt\pi の範囲に f′(\theta) となる \theta がただ1つ存在することを示せ.

(2) 以下が成り立つような \alpha の範囲を求めよ.

0\leqq\theta\leqq\pi における \theta の関数 f(\theta) は,区間 0\lt\theta\lt\dfrac{\pi}{2} のある点において最大になる.

サイクロイドの性質を利用したうまい解法(2021.03.02)
アポロニウスの最大最小問題 (2021.03.02)

2021.02.25記

[解答]

(1) f'(\theta)=(\theta+\sin\theta+\alpha)(1+\cos\theta)-(\cos\theta+3)\sin\theta だから
f'(\theta)=0\Longleftrightarrow  \alpha=2\Bigl(\tan\dfrac{\theta}{2}-\dfrac{\theta}{2}\Bigr)
となる.
g(\theta)=2\Bigl(\tan\dfrac{\theta}{2}-\dfrac{\theta}{2}\Bigr)とおくと

g'(\theta)=\dfrac{1}{\cos^2 \dfrac{\theta}{2}}-1\geqq 0 より g(x) の増減表をかくと

\theta 0 \pi
g'(\theta) 0 +
g(\theta) 0 \nearrow +\infty

となるので g(\theta)=\alpha なる \theta,つまり f'(\theta)=\alpha なる \theta0\lt\theta\lt\pi にただ1つ存在する.

(2) f'(\theta)=0 となる \theta\theta(\alpha) とおくと f'(\theta)=(1+\cos\theta)\alpha+\cdots となり,1+\cos\theta\gt 0(0\lt\theta\lt \pi) であることから f'(\theta)\gt 0\Longleftrightarrow \theta \lt \theta(\alpha)f'(\theta)\lt 0\Longleftrightarrow \theta \gt \theta(\alpha) が成立するので,f(\theta)\theta=\theta(\alpha) で極大かつ最大となる.

よって 0\lt\theta(\alpha)\lt\dfrac{\pi}{2} となるとき,
0\lt\alpha\lt 2\Bigl(\tan\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{\pi}{4}\Bigr)=2-\dfrac{\pi}{2}

2021年(令和3年)大阪大学-数学(理系)[5] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
\tan x=x についての出題.流行ってんの?

2021.02.27記
定数分離を思いつかなかった人は f'''(\theta) を計算したそうだ.

f'''(\theta)=-2(\theta+\alpha)\cos\theta から

\theta 0 \dfrac{\pi}{2} \pi
f'''(\theta) - 0 +
f''(\theta) 0 \searrow \nearrow 4

という増減表が得られるので,f''(\theta)=0 なる \theta\in(0,\pi) は唯一存在する.これを p とおくと

\theta 0 p \pi
f''(\theta) - 0 +
f'(\theta) 4\alpha(\gt 0) \searrow \nearrow 0

という増減表が得られるので,f'(\theta)=0 なる \theta\in(0,\pi) は唯一存在する.

のように計算したそうだ.この場合,(2) は \dfrac{\pi}{2} より小さい値で f'(\theta) が正から負の値になれば良いので, f'\Bigl(\dfrac{\pi}{2}\Bigr)\lt 0 が求める条件となる(これと問題文にある 0\lt \alpha ).

2021.02.27記
一風変わった別解.
2等辺三角形 \rm ABC の底辺 \rm BC の中点を \rm M とするとき,\rm M 中心に直線 \rm BC を反時計回りに \theta 回転させた直線と \rm AB\rm AC の交点をそれぞれ \rm P,Q とするとき,線分 \rm PQ の長さの2乗を f(\theta) とすると,もちろん f'(\theta)=0 で最小値は \rm BC となることに関連した別解となっている.

[別解]

{\rm Q}(1+\cos\theta,\sin\theta)=2\cos\dfrac{\theta}{2}\Bigl(\cos \dfrac{\theta}{2}, \sin \dfrac{\theta}{2}\Bigr){\rm R}(-2,-(\alpha+\theta)) とおくと,\rm AP=QR が成立するので f(\theta)=|\overrightarrow{\rm QR}|^2 である.

ここで,f'(\theta)=\dfrac{d\,|\overrightarrow{\rm QR}|^2}{d\theta}=\overrightarrow{\rm QR}\cdot\dfrac{d\overrightarrow{\rm QR}}{d\theta}=0 であることと,\overrightarrow{\rm QR}\perp\dfrac{d\overrightarrow{\rm QR}}{d\theta} であることは同値であるが,\rm Q,R における接ベクトルはともに単位ベクトルであるから,この2つの接ベクトルの和が \overrightarrow{\rm QR} に平行であれば良い.

ここで \rm Q,R における接ベクトルの偏角\theta+\dfrac{\pi}{2}\dfrac{3\pi}{2} であるから,その和の偏角\pi+\dfrac{\theta}{2} となるので, \overrightarrow{\rm QR}偏角\pi+\dfrac{\theta}{2} となれば良く,\overrightarrow{\rm OQ}偏角\dfrac{\theta}{2} に注意すると線分 \rm QR が原点を通れば良い.よって \overrightarrow{\rm OR}偏角\pi+\dfrac{\theta}{2} となり,{\rm R}\Bigl(-2,-2\tan\dfrac{\theta}{2}\Bigr) が成立するときである.

よって,f'(\theta)=0\Longleftrightarrow \alpha+\theta=2\tan\dfrac{\theta}{2} が成立する.

(以下略)

2021.03.01記
もちろん,点 {\rm P}(\theta+\sin\theta,\cos\theta)サイクロイドを描くことは自明であり,その法線が点 \rm A を通るときに f(\theta) は停留することがわかる.このこと自体は

f'(\theta)=\dfrac{d\,|\overrightarrow{\rm AP}|^2}{d\theta}=2\overrightarrow{\rm AP}\cdot\dfrac{d\overrightarrow{\rm AP}}{d\theta}=0 であることと,\overrightarrow{\rm AP}\perp\dfrac{d\overrightarrow{\rm AP}}{d\theta} であることが同値であることからわかる.というのも \rm A からの距離が一定であれば接ベクトルと動径が直交することを述べているだけだからである.この前後で f'(x) の符号が正から負に変化すれば極大値であることがわかり,その符号を追跡することによりその極大値が最大値であることが言えることになる訳だが,この流れにおいて,点 \rm Pサイクロイドであることは登場してこない,と書いたところで重要なことを思い出した.

サイクロイドの縮閉線は同じ大きさのサイクロイドになるということだ.サイクロイドの縮閉線が同じ大きさのサイクロイドになる証明を利用して本問を考えると,上記の一風変わった別解になることがわかった.これは後に書くことにしよう.

2021.03.02記

サイクロイドの性質を念頭に置いた(けどサイクロイドが登場しない)別解


[うまい解答]

f'(\theta)=\dfrac{d\,|\overrightarrow{\rm AP}|^2}{d\theta}=2\overrightarrow{\rm AP}\cdot\dfrac{d\overrightarrow{\rm AP}}{d\theta}=0\overrightarrow{\rm AP}\perp\dfrac{d\overrightarrow{\rm AP}}{d\theta} は同値,すなわち \rm P が描く曲線の \rm P における法線が点 \rm A を通ることと f'(\theta)=0 は同値.

{\rm E}(\theta,-1) とおくと \vec{\rm EP}=(\sin\theta,1+\cos\theta) であり,\rm P における接ベクトルは (1+\cos\theta,-\sin\theta) であるから,これらは直交するので,{\rm P} における法線は \rm E を通る.\vec{\rm EP}=2\cos\dfrac{\theta}{2}\Bigl(\sin\dfrac{\theta}{2},\cos\dfrac{\theta}{2}\Bigr)偏角\dfrac{\pi-\theta}{2} となることに注意すると,\rm P における法線と y=-3 との交点の x 座標は \theta-2\tan\dfrac{\theta}{2} となるので,
f'(\theta)=0\Longleftrightarrow -\alpha=\theta-2\tan\dfrac{\theta}{2} と同値.

以下略

良く考えたら,昨秋に関連の話を書いてたよ.
アポロニウスの最大最小問題と縮閉線 - 球面倶楽部 零八式 mark II
ある意味的中じゃない?

本人すら忘れてたけど.