[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2011年(平成23年)山梨大学医学部後期-数学[3]

2022.10.22記

[3] 成分が整数である2次の正方行列の集合を,
S=\left\{\begin{pmatrix} a & b \\ c& d \end{pmatrix} \Big| a,b,c,d\textrm{は整数}\right\}
とする.

(1) 2次の正方行列 A=\begin{pmatrix} a & b \\ c& d \end{pmatrix} および A逆行列S に属するとき,|ad-bc|=1 であることを示せ.

(2) 次の条件を満たす2次の正方行列 A=\begin{pmatrix} a & b \\ c& d \end{pmatrix} の例を1つあげよ.

a,b,c,dは整数でない有理数で,ad-bc\neq 0かつ A^2S に属する.

(3) 有理数を成分とする2次の正方行列 A=\begin{pmatrix} a & b \\ c& d \end{pmatrix} について,
A^2S に属するならば,ad-bc は整数であることを示せ.

本問のテーマ
ユニモジュラー行列

2022.10.14記
(1)はユニモジュラー行列の話だけど,(2)(3)は違う.

[解答]
(1) S の要素の行列式は必ず整数である.
よって A および A^{-1}S に属するならば
\textrm{det} A=ad-bc および \textrm{det} A^{-1}=\dfrac{1}{\textrm{det}A}=\dfrac{1}{ad-bc}
が整数でなければならないので ad-bc=\pm 1,つまり |ad-bc|=1 である.

(2) 単位行列I とするとき,A^2=I なる有理数成分の行列を探せば十分である.それは整数成分で\textrm{tr}A=0 かつ,\textrm{det}A が平方数 N^2 となるものを探して,その行列を N で割れば得られる.例えば整数成分の行列 \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 3 & 1 \end{pmatrix}行列式4 なので,これを2で割った \begin{pmatrix} 1/2 & -1/2\\ 3/2 & 1/2 \end{pmatrix} が題意をみたす.

(3) \textrm{det}A^2=(\textrm{det}A)^2 は題意より整数である.ここで \textrm{det}A が整数でない有理数であるとすると \textrm{det}A^2=(\textrm{det}A)^2 は整数ではなくなるので矛盾する.よって \textrm{det} A=ad-bc は整数である.

有理数\dfrac{p}{q}(p,qは互いに素)で表したとき,\dfrac{p^2}{q^2} の分子と分母の互いに素となるので,もとの有理数が整数でなければ平方したものも整数ではないという話.

自然数平方根が整数になるならば,その自然数は平方数である」ということを用いた議論もできる.