[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1988年(昭和63年)東京大学-数学(文科)[4]

2023.08.29記

[4] f(x)=x^3-x^2 とする.曲線 y=f(x) 上の点 \mbox{A}(1,0) における接線が再びこの曲線と交わる点を \mbox{B} とする.曲線 y=ax^2+bx+c と曲線 y=f(x) が点 \mbox{A}\mbox{B} を共有し,さらに \mbox{A}\mbox{B} のあいだにもうひとつの共有点をもつとき,
この 2 曲線のかこむ部分の面積を求めよ.また,その面積が最小となるように abc を定めよ.

本問のテーマ
シンプソンの公式(ケプラーの樽公式)

2021.01.22記
囲まれる部分の面積を求めずに最小となる y=ax^2+bx+c を求めることができる.

[大人の解答]
y=f(x)-(ax^2+bx+c)x^3 の係数が 1 で,(\pm1,0) を通る.残りの x 軸との交点を k-1\lt k\lt 1)とする.

g(x;k)=(x-1)(x+1)(x-k) とおき,その原始関数を G(x;k) とすると,\dfrac{\partial}{\partial k}g(x;k)=1-x^2 が成立するので,\dfrac{\partial}{\partial k}G(x;k)=x-\dfrac{x^3}{3}=:G_k(x;k) が成立する.

さて,囲まれる面積 S(k)
S(k)=\displaystyle\int_{-1}^k g(x)dx + \int_{k}^1 \{-g(x)\}dx=2G(k,k)-G(-1,k)-G(1,k)
であるから,これを k微分すると
S'(k)=2\{ g(k,k)+G_k(k,k)\}-G_k(-1,k)-G_k(1,k)=2\Bigl(k-\dfrac{k^3}{3}\Bigr)
となるので,-1\lt k\lt 1 では k=0 のときに S'(k) は負から正へと符号変化し,極小かつ最小となる.

よって ax^2+bx+c=f(x)-(x-1)(x+1)x=-x^2+x となる.

S'(k) から S(k)=k^2-\dfrac{k^4}{6}+C の形で\dfrac{1}{12}公式からS(1)=\dfrac{16}{12}だから C=\dfrac{1}{2} となり,S(k)=k^2-\dfrac{k^4}{6}+\dfrac{1}{2} である.

g(x;k) の定数項から c=-k であるから,
S(k)=c^2-\dfrac{c^4}{6}+\dfrac{1}{2} である.

2023.08.31記

シンプソンの公式(ケプラーの樽公式)

ケプラーの樽公式 - 球面倶楽部 零八式 mark II
シンプソンの公式(ケプラーの樽公式) - 球面倶楽部 零八式 mark II
3次関数と x 軸で囲まれる部分の面積 - 球面倶楽部 零八式 mark II

[大人の解答]
\mbox{A} における接線の方程式を y=l(x) とおくと,
f(x)-l(x)=x^3-x^2-l(x)=(x-1)^2(x+1)
因数分解できるので,\mbox{B}(-1,-2) である.

このとき k=1+a とおくと
f(x)-(ax^2+bx+c)=x^3-(a+1)x^2-bx-c=(x-1)(x+1)(x-k) :=h(x)
因数分解できるので,-1\lt k\lt 1 であり,
かこむ部分の面積は,シンプソンの公式により
\left|\dfrac{k+1}{6}\cdot 4g\left(\dfrac{k-1}{2}\right)\right|+\left|\dfrac{1-k}{6}\cdot 4g\left(\dfrac{k+1}{2}\right)\right|
=\left|\dfrac{(k+1)(k-3)(k+1)(-k-1)}{12}\right|+\left|\dfrac{(1-k)(k-1)(k+3)(-k+1)}{12}\right|
=\dfrac{(1+k)^3(3-k)+(1-k)^3(3+k)}{12}
=\dfrac{-k^4+6k^2+3}{6}:=S(k)
となる.t=k^2 とおくと
S(k)=\dfrac{-(t-3)^2+12}{6}0\leqq t\lt 1
となるので,t=0k=0)で最小となる.

よって ax^2+bx+c=f(x)-(x-1)(x+1)x=-x^2+x となる.