[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2024年(令和6年)京都大学理学部特色入試・数理科学入試-数学[2]

2024.02.29記

[2] x^{100}-3x^{10}-2x-1=0 を満たす実数 x の個数を求めよ.

本問のテーマ
デカルトの符号法則

[大人の解答]
f(x)=x^{100}-3x^{10}-2x-1 の符号変化は1回なので,デカルトの符号法則から f(x)=0 の正の実数解の個数は 1 個.

g(x)=f(-x)=x^{100}-3x^{10}+2x-1 の符号変化は3回なので,デカルトの符号法則から f(x)=0 の負の実数解の個数は 3 個か 1 個のいずれかであるが
g(0)=-1\lt 0
g\left(\dfrac{2}{3}\right)=\left(\dfrac{2}{3}\right)^{100}-3\cdot\left(\dfrac{2}{3}\right)^{10}+\dfrac{1}{3}=\left(\dfrac{2}{3}\right)^{100}+\dfrac{3^9-2^{10}}{3^9}\gt 0
g(1)=-1\lt 0
g(2)=2^{100}-3\cdot 2^{10}-5\gt 0
より 3 個.
(注.2個見つければ自動的に3個になるので g(2) の符号判定は不要)

以上から 4 個となる.

g(x) について |x|\lt 1 なら x^{100}3\cdot x^{10}x に比べて十分小さくなることが期待できるので,2x-1 が正となる |x|\lt 1 を探せば良いので,0.5 より大きくて 1 に近すぎない \dfrac{2}{3} を選んだという訳である.
(2024.03.24追記 x=0.5+e とおくと
g(0.5+e)\approx 0.5^{100}+100\cdot 0.5^{99}e-3(0.5^{10}+10\cdot 0.5^{9}e)+e\approx 0
より
(1-60\cdot 0.5^{10}+200\cdot 0.5^{100})e\approx 3\cdot 0.5^{10}- 0.5^{100}
0.5^{100}\approx 0 で近似すると
(1-60\cdot 0.5^{10})e\approx 3\cdot 0.5^{10}
となり
 e\approx  \dfrac{3}{964}\approx 0.003112
なので,0.5 よりもほんの少し大きければ g(x) は正となる.

ちなみにg(0.503122)=0.0031\cdotsとなる.これは1次近似(ニュートン法の第1段階のみで求めたもの)に過ぎないので誤差が多少ある.ホーナーの方法で求めると,g(x)=00\lt x \lt1 なる解は x\approx 0.50151 となる.

また,g'(x)=100x^{99}-30x^9+2=0 から x^{99}\approx 0 として
 x^9\approx\dfrac{1}{15}(ほぼ0.74となるが,計算機なしにこれを知ることは難しい)
となるので,この近辺の値では g(x) が正となることが期待できる.
\log_{10} 0.75^{9} = 9(0.4771-0.6020)=-1.1241
\log_{10} \dfrac{1}{15} = \log_{10} \dfrac{2}{30} = 0.3010-0.4771-1=-1.1761
\log_{10} \dfrac{2}{3}^{9} = 9(0.3010-0.4771)=-1.5849
であるから,近似値を使っているので正確ではないが,ほぼ
\dfrac{2}{3}\lt x\lt\dfrac{3}{4}
を満たしていそうなことがわかる.)

2024.03.01記

[解答]
p(x)=x^{100}-3x^{10}-2x-1 とおくと p''(x)=90x^8(110x^{90}-3)
だから,p''(x)=0 なる x\beta=\left(\dfrac{3}{110}\right)^{\frac{1}{90}} とおくと
-\beta,0,\beta
である.ここで x=0 では符号変化しないので変曲点の x 座標は
x=-\beta,\beta
の2つとなり,これから凹凸を考えると W 型となり,p(x)=0 なる x は高々4つ.

\displaystyle\lim_{x\to -\infty}p(x)=+\infty
p(-1)=-1
p\left(-\dfrac{2}{3}\right)=\left(\dfrac{2}{3}\right)^{100}-3\cdot\left(\dfrac{2}{3}\right)^{10}+\dfrac{1}{3}=\left(\dfrac{2}{3}\right)^{100}+\dfrac{3^9-2^{10}}{3^9}\gt 0
p(0)=-1
\displaystyle\lim_{x\to \infty}p(x)=+\infty
により中間値の定理から p(x)=0 なる x は少なくとも4つ.

以上から p(x)=0 なる x は丁度4つ.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[6]

2024.04.13記

[6] 自然数 k に対して,a_k=2^{\sqrt{k}} とする.n自然数とし,a_k の整数部分が n 桁であるような k の個数を N_n とする.また, a_k の整数部分が n 桁であり,その最高位の数字が 1 であるような k の個数を L_n とする. 次を求めよ.
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{L_n}{N_n}
ただし,例えば実数 2345.678 の整数部分 23454 桁で,最高位の数字は 2 である.

本問のテーマ
ベンフォードの法則

2024.04.11記(2024/04/11/231445)

ベンフォードの法則
ベンフォードの法則 - Wikipedia

この話を始めて知ったのは,大学生のときに読んだ

である.新装版

も絶版っぽいが、そのうちちくま学芸文庫になりそうな気もする。

n を十分大きい自然数として
a_k=2^{\sqrt{k}}\approx 10^{n-1}
a_{k+u}=2^{\sqrt{k+u}}\approx 2\cdot 10^{n-1}
a_{k+v}=2^{\sqrt{k+v}}\approx 10^{n}
なる k,u,v に対して
\dfrac{L_n}{N_n}\approx \dfrac{u}{v}
である.常用対数として
k\approx \dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}
k+u\approx  \dfrac{(n-1+\log 2)^2}{(\log 2)^2}
k+v\approx  \dfrac{n^2}{(\log 2)^2}
であるから,
\dfrac{u}{v}\approx \dfrac{(n-1+\log 2)^2-(n-1)^2}{n^2-(n-1)^2}\dfrac{2(\log 2)(n-1)+(\log 2)^2}{2n-1}\to\log 2n\to\infty
となることがわかる.

2024.04.16記

[解答]
a_{k}=2^{\sqrt{k}}\lt 10^{n-1}\leqq a_{k+1}
a_{k+u}=2^{\sqrt{k+u}}\leqq 2\cdot 10^{n-1}\lt a_{k+u+1}
a_{k+v}=2^{\sqrt{k+v}}\leqq 10^{n}\lt a_{k+v+1}
なる k,u,v に対して
\dfrac{L_n}{N_n}=\dfrac{u}{v}
である.常用対数として
k\lt \dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}\leqq k+1
k+u\leqq \dfrac{(n-1+\log 2)^2}{(\log 2)^2}\lt k+u+1
k+v\leqq \dfrac{n^2}{(\log 2)^2}\lt k+v+1
であるから,
u-1\leqq \dfrac{(n-1+\log 2)^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2} \lt u+1
v-1\leqq \dfrac{n^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}\lt v+1
つまり
\dfrac{(n-1+\log 2)^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}-1\lt u\leqq \dfrac{(n-1+\log 2)^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}+1
\dfrac{n^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}-1\lt v\leqq \dfrac{n^2}{(\log 2)^2}-\dfrac{(n-1)^2}{(\log 2)^2}+1
が成立する.
よって
\dfrac{(n-1+\log 2)^2-(n-1)^2-(\log 2)^2}{n^2-(n-1)^2+(\log 2)^2}
\lt\dfrac{u}{v}
\lt\dfrac{(n-1+\log 2)^2-(n-1)^2+(\log 2)^2}{n^2-(n-1)^2-(\log 2)^2}
つまり
\dfrac{2(\log 2)(n-1)}{2n-1+(\log 2)^2}
\lt\dfrac{u}{v}
\lt\dfrac{2(\log 2)(n-1)+2(\log 2)^2}{2n-1-(\log 2)^2}
が成立し,はさみうちの原理から
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{u}{v}=\log 2
が成立する.対数の底は10であったから,求める極限は \log_{10}2 である.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[5]

2024.04.13記(2024/04/13/142156)

[5] aa\geqq 1 を満たす定数とする.座標平面上で,次の 4 つの不等式が表す領域を D_a とする.
x\geqq0\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}\leqq yy\leqq\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}y\leqq a
次の問いに答えよ.

(1) D_a の面積 S_a を求めよ.

(2) \displaystyle\lim_{a\to\infty}S_a を求めよ.

本問のテーマ

2024.04.13記
双曲線関数を使うと記述が少し綺麗になるが,普通に解答しておく.

[解答]
(1) \dfrac{e^x-e^{-x}}{2}=a なる x\gt 0
x=\log(a+\sqrt{a^2+1})=:s
であり,
\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}=a なる x\gt 0
x=\log(a+\sqrt{a^2-1})=:c
であるから
2S_a=2sa-\displaystyle\int_0^s (e^x-e^{-x}) dx
-2ac+2\displaystyle\int_0^c (e^x+e^{-x}) dx
=2a(s-c)-(e^s+e^{-s}-2)+(e^c-e^{-c})
=2a\log\dfrac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}
+2-2\sqrt{a^2+1}+2\sqrt{a^2-1}
となる.よって
S_a=a\log\dfrac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}+1-\sqrt{a^2+1}+\sqrt{a^2-1}
となる.

(2)
\displaystyle\lim_{a\to\infty}(\sqrt{a^2+1}-\sqrt{a^2-1})=\displaystyle\lim_{a\to\infty}\dfrac{2}{\sqrt{a^2+1}+\sqrt{a^2-1}}=0

\displaystyle\lim_{a\to\infty}a\log\dfrac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}
=\displaystyle\lim_{t\to +0}\dfrac{1}{t}\log\dfrac{1+\sqrt{1+t^2}}{1+\sqrt{1-t^2}}
=\displaystyle\lim_{t\to +0}\dfrac{\log(1+\sqrt{1+t^2})-\log 2+\log 2-\log(1+\sqrt{1-t^2})}{t}
=\dfrac{t}{(1+\sqrt{1+t^2})\sqrt{1+t^2}}\Bigl|_{t=0}+\dfrac{t}{(1+\sqrt{1-t^2})\sqrt{1-t^2}}\Bigl|_{t=0}=0+0=0

であるから,
\displaystyle\lim_{a\to\infty}S_a=0+1-0=1
となる.

2024.04.16記

[解答]
(2) T(x)=\displaystyle\int_0^x \left\{\dfrac{e^t+e^{-t}}{2}-\dfrac{e^t-e^{-t}}{2}\right\}\,dt
=\displaystyle\int_0^x e^{-t}\,dt1-e^{-x}
とおくと(1)の s,c を用いて
 T(c)\leqq S_a\leqq T(s)
が成立する.a\to +\inftyc\to +\inftys\to +\infty であるから
 \displaystyle\lim_{a\to\infty}T(c)=\displaystyle\lim_{c\to\infty})(1-e^{-c})=1
 \displaystyle\lim_{a\to\infty}T(s)=\displaystyle\lim_{s\to\infty})(1-e^{-s})=1
となり,はさみうちの原理から
 \displaystyle\lim_{a\to\infty}S_a=1
となる.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[4]

2024.04.13記

[4] 与えられた自然数 a_0 に対して,自然数からなる数列 a_0,a_1,a_2,… を次のように定める.
a_{n+1}=\left\{\begin{array}{ll}\dfrac{a_n}{2} & (a_nが偶数のとき) \\ \dfrac{3a_n+1}{2} & (a_nが奇数のとき) \\ \end{array}\right.

次の問いに答えよ.

(1) a_0,a_1,a_2,a_3 がすべて奇数であるような最小の自然数 a_0 を求めよ.

(2) a_0,a_1,…,a_{10} がすべて奇数であるような最小の自然数 a_0 を求めよ.

本問のテーマ
コラッツの問題(コラッツ予想)(2024.04.16)

2024.04.11記(2024/04/11/233636)
a_n が偶数のときの漸化式って何やねん。

[解答]
b_n=a_n+1 とおくと
b_{n+1}=\left\{\begin{array}{ll}\dfrac{b_n+1}{2} & (b_nが奇数のとき) \\ \dfrac{3b_n}{2} & (b_nが偶数のとき) \\ \end{array}\right.
となる.

(1) a_0からa_3 がすべて奇数のとき,b_0からb_3 はすべて偶数であり,
b_0b_1=\dfrac{3}{2}b_0b_2=\dfrac{9}{4}b_0b_3=\dfrac{27}{8}b_0
が成立する.このとき,b_0からb_3 がすべて偶数である必要十分条件は,b_02^4=16 の倍数であることである.そのような最小の自然数 b_016 であるから,求める a_02^4-1=15

(2) (1) と同様にして求める a_02^{11}-1=2047 となる.

2024.04.16記

コラッツの問題

コラッツの問題 - Wikipedia

自然数から自然数への写像
f(n)=\left\{\begin{array}{ll}\dfrac{n}{2} & (nが偶数のとき) \\ 3n+1 & (nが奇数のとき) \\ \end{array}\right.
をコラッツ写像という.コラッツの問題とは
自然数からなる数列 a_0,a_1,a_2,… がコラッツ写像 f を用いて
a_{n+1}=f(a_n)n=0,1,…
にように定まる数列が必ず1に到達する(1,4,2,1,4,2,…と繰り返す)という問題である.

本問の場合,このコラッツ写像をショートカットしたものとなっている,つまり a_n が奇数のとき,f(a_n) は偶数だから f(f(a_n))=\dfrac{3a_n+1}{2} となるので,コラッツ写像を用いて
a_{n+1}=\left\{\begin{array}{ll}f(a_n) & (a_nが偶数のとき) \\ f(f(a_n)) & (a_nが奇数のとき) \\ \end{array}\right.
によって定まる数列となる.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[3]

2024.04.13記(2024/04/13/143507)

[3] 座標空間の4点 \mbox{O}\mbox{A}\mbox{B}\mbox{C} は同一平面上にないとする.線分 \mbox{OA} の中点を \mbox{P},線分 \mbox{AB} の中点を \mbox{Q} とする. 実数 x,y に対して,直線 \mbox{OC} 上の点 \mbox{X} と,直線 \mbox{BC} 上の点 \mbox{Y} を次のように定める.

\overrightarrow{\mbox{OX}}=x\overrightarrow{\mbox{OC}}\overrightarrow{\mbox{BY}}=y\overrightarrow{\mbox{BC}}

このとき,直線 \mbox{QY} と直線 \mbox{PX} がねじれの位置にあるための x,y に関する必要十分条件を求めよ.

2024.04.16記
直線 \mbox{QY} と直線 \mbox{PX} がねじれの位置にあるための必要十分条件は,4点 \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{X}\mbox{Y} を同時に含む平面が存在しないことである.

これは \overrightarrow{\mbox{PQ}}\overrightarrow{\mbox{PX}}\overrightarrow{\mbox{PY}} が1次独立であることと同値で,多くの解答は
\overrightarrow{\mbox{PQ}}=s\overrightarrow{\mbox{PX}}+t\overrightarrow{\mbox{PQ}}
をみたす s,t が存在しない条件を求める方針になっているが,行列式を知っていれば
\mbox{det}(\overrightarrow{\mbox{PQ}},\overrightarrow{\mbox{PX}},\overrightarrow{\mbox{PY}})\neq 0
必要十分条件であることがわかり,行列式の性質から機械的に求めることができる.

[大人の解答]
\mbox{QY} と直線 \mbox{PX} がねじれの位置にあるための必要十分条件は「四面体 \mbox{PQXY} の体積が0でないこと」である.

\overrightarrow{\mbox{OP}}=\vec{p}\overrightarrow{\mbox{OB}}=\vec{b}\overrightarrow{\mbox{OC}}=\vec{c}とおき,四面体 \mbox{PQXY} の体積を V とすると
6V=\left|\mbox{det}(\overrightarrow{\mbox{PQ}},\overrightarrow{\mbox{PX}},\overrightarrow{\mbox{PY}})\right|
=\left|\dfrac{1}{2}\mbox{det}(\vec{b},\overrightarrow{\mbox{OX}}-\vec{p},\overrightarrow{\mbox{BY}}-\overrightarrow{\mbox{BP}})\right|
=\left|\dfrac{1}{2}\mbox{det}(\vec{b},x\vec{c}-\vec{p},y(\vec{c}-\vec{b})-\vec{p}+\vec{b})\right|
=\left|\dfrac{1}{2}\mbox{det}(\vec{b}, x\vec{c}-\vec{p} ,-\vec{p}+(1-y)\vec{b}+y\vec{c})\right|
=\left|-\dfrac{x}{2}\mbox{det}(\vec{b},\vec{c},\vec{p})-\dfrac{y}{2}\mbox{det}(\vec{b},\vec{p},\vec{c})\right|
=\left|\dfrac{x-y}{2}\mbox{det}(\vec{b},\vec{p},\vec{c})\right|
であり,\mbox{det}(\vec{b},\vec{p},\vec{c})\neq 0 であるから,
\mbox{QY} と直線 \mbox{PX} がねじれの位置にあるための必要十分条件x\neq y である.

\overrightarrow{\mbox{PQ}}\overrightarrow{\mbox{PX}}\overrightarrow{\mbox{PY}} が1次独立であるための必要十分条件を求める方針は次のようになる.
\overrightarrow{\mbox{PQ}}=s\overrightarrow{\mbox{PX}}+t\overrightarrow{\mbox{PQ}}
をみたす s,t が存在しない条件を求めても良いが,
\alpha\overrightarrow{\mbox{PQ}}+\beta\overrightarrow{\mbox{PX}}+\gamma\overrightarrow{\mbox{PQ}}=\vec{0}
\alpha=\beta=\gamma=0 が同値となる必要十分条件を求めることにする.

[解答]
直線 \mbox{QY} と直線 \mbox{PX} がねじれの位置にあるための必要十分条件は,4点 \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{X}\mbox{Y} を同時に含む平面が存在しないことであり,これは
\overrightarrow{\mbox{PQ}}\overrightarrow{\mbox{PX}}\overrightarrow{\mbox{PY}} が1次独立であることと同値である.

\overrightarrow{\mbox{OA}}=\vec{a}\overrightarrow{\mbox{OB}}=\vec{b}\overrightarrow{\mbox{OC}}=\vec{c}とおくと
\overrightarrow{\mbox{PQ}}=\dfrac{1}{2}\vec{b}
\overrightarrow{\mbox{PX}}=-\dfrac{1}{2}\vec{a}+x\vec{c}
\overrightarrow{\mbox{PY}}=-\dfrac{1}{2}\vec{a}+(1-y)\vec{b}+y\vec{c}
であるから
\alpha\overrightarrow{\mbox{PQ}}+\beta\overrightarrow{\mbox{PX}}+\gamma\overrightarrow{\mbox{PY}}=\vec{0}

-\dfrac{\beta+\gamma}{2}\vec{a}+\dfrac{\alpha+2\gamma(1-y)}{2}\vec{b}+(\beta x+\gamma y)\vec{c}=\vec{0}
と同値である.今,\vec{a},\vec{b},\vec{c} は1次独立であるから,
\beta+\gamma=\alpha+2\gamma(1-y)=\beta x+\gamma y=0
が成立する.よってこの条件が \alpha=\beta=\gamma=0 となる必要十分条件を求めれば良い.

\beta+\gamma=\alpha+2\gamma(1-y)=\beta x+\gamma y=0

\gamma=-\beta\alpha=2\beta(1-y)=0\beta (x-y)=0
と同値だから,第3式より x=y と仮定すると任意の \beta\neq 0 に対して,第1式と第2式から \alpha,\gamma を求めることができてしまうので, \overrightarrow{\mbox{PQ}}\overrightarrow{\mbox{PX}}\overrightarrow{\mbox{PY}} は1次独立にならない.

よって x\neq y が必要で,このとき
\gamma=-\beta\alpha=2\beta(1-y)=0\beta=0
であるから,\alpha=\beta=\gamma=0 となり十分である.

よって求める必要十分条件x\neq y である.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[2]

2024.04.13記

[2] |x|\leqq 2 を満たす複素数 x と,|y-(8+6i)|=3 を満たす複素数 y に対して,z=\dfrac{x+y}{2} とする.このような複素数 z複素数平面において動く領域を図示し,その面積を求めよ.

2024.04.13記15:03

[解答]
y=8+6i+3(\cos\theta+i\sin\theta)
w=\dfrac{x}{2}|w|\leqq1),

v=\dfrac{y}{2}=3+4i+\dfrac{3}{2}(\cos\theta+i\sin\theta)
とおくと,
z=v+w
であるから,中心 4+3i,半径 \dfrac{3}{2} の円周上に 単位円板 |w|\leqq 1 の中心がくるように単位円板を一周動かしたときの通過領域が求める領域となる.

よって求める領域は
\dfrac{1}{2}\leqq |z-(4+3i)|\leqq\dfrac{5}{2}
(図示略)
となり,その面積は 6\pi である.

2024年(令和6年)京都大学-数学(理系)[1]

2024.04.13記

[1] n 個の異なる色を用意する.立方体の各面にいずれかの色を塗る.各面にどの色を塗るかは同様に確からしいとする.辺を共有するどの二つの面にも異なる色が塗られる確率を p_n とする.次の問いに答えよ.

(1) p_4 を求めよ.

(2) \displaystyle\lim_{n\to\infty}p_n を求めよ.

2024.04.13記(15:14)
十分 n が大きいとき,各面に塗られる6つの色が異なる確率は1に近づくので(2)の答が1となることは予想できる.

[解答]
(1) 3つの面が互いに隣り合わせとなるので少くとも3色以上必要である.

(i) ちょうど3色用いるとき,向い合う3組の面は同じ色となるので {}_4\mbox{P}_3=24 通り

(ii) ちょうど4色用いるとき,向い合う3組の面のうち2組は同じ色で,1組は異なる色となる.異なる色となるペアを選ぶ選び方が3通りで,その面の塗り方は 4\times 3=12通り,残りの2組の塗り方は 2\times 1=2 通りなので,合計 3\times 4\times 3\times 2\times 1=72 通り

以上から求める確率は \dfrac{24+72}{4^6}=\dfrac{3}{128} となる.

(2) n\geqq 6 のとき,p_n は異なる6色で塗る確率よりも大きいので
\dfrac{{}_n\mbox{P}_6}{n^6}\leqq p_n\leqq 1
が成立する.
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{{}_n\mbox{P}_6}{n^6}
=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1-\dfrac{1}{n}\right)\left(1-\dfrac{2}{n}\right)\cdots\left(1-\dfrac{5}{n}\right)=1
であるから,はさみうちの原理により
\displaystyle\lim_{n\to\infty}p_n=1 となる.