[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)京都大学理学部特色入試・数理科学入試-数学[3]

2023.01.23記

[3] 複素数の数列 \{z_n\} に対する次の2つの条件を考える.

(i) すべての自然数 n に対して,|z_n-z_{n+1}|=2^n が成り立つ.

(ii) すべての自然数 n に対して,\dfrac{(z_n-z_{n+1})(z_{n+2}-z_{n+3})}{ (z_{n+1}-z_{n+2})(z_{n+3}-z_{n}) } は実数である.

複素数の数列 \{z_n\} で (i) と (ii) をともに満たすものをすべて考えたとき,\dfrac{z_{2022}-z_{2023}}{z_{2023}-z_{2024}} がとり得る値をすべて求めよ.

本問のテーマ
複素数平面上の異なる4点が共円または共線となる条件

2023.01.23記
条件 (ii) は4点 z_n,z_{n+1},z_{n+2},z_{n+3} が同一円周上または同一直線上にあるという条件である.

[解答]
|z_n-z_{n+1}|=2^n|z_{n+2}-z_{n+1}|=2^{n+1} より複素数平面上で z_nz_{n+1} 中心,半径 2^n の円周上にあり,z_{n+2}z_{n+1} 中心,半径 2^{n+1} の円周上にあるので,
z_n,z_{n+1},z_{n+2} は任意の自然数 n に対して異なる3点である.

条件(ii)から
\left|\dfrac{(z_n-z_{n+1})(z_{n+2}-z_{n+3})}{ (z_{n+1}-z_{n+2})(z_{n+3}-z_{n}) }\right|=\dfrac{2^{n+1}}{|z_{n+3}-z_n|} は実数となるので
z_n\neq z_{n+3} であり,
z_n,z_{n+1},z_{n+2} が異なる3点で,かつ z_{n+1},z_{n+2},z_{n+3} は異なる3点であるから,

任意の自然数 n に対して z_n,z_{n+1},z_{n+2},z_{n+4} は異なる4点である.……(★)

このとき,条件(ii)は
\dfrac{z_n-z_{n+1}}{z_{n+2}-z_{n+1}}\cdot \dfrac{z_{n+2}-z_{n+3}}{z_{n}-z_{n+3}} は実数,つまり
\mbox{arg}\dfrac{z_n-z_{n+1}}{z_{n+2}-z_{n+1}}+\mbox{arg}\dfrac{z_{n+2}-z_{n+3}}{z_{n}-z_{n+3}}\pi の整数倍
となり
\angle z_nz_{n+1}z_{n+2}=\angle z_nz_{n+3}z_{n+2} または \angle z_nz_{n+1}z_{n+2}+\angle z_nz_{n+3}z_{n+2}=\pi
となる.

よって条件(ii) は
(a) \angle z_nz_{n+1}z_{n+2}\neq 0,\pi のとき,異なる4点 z_n,z_{n+1},z_{n+2},z_{n+3} が同一円周上,
(b) \angle z_nz_{n+1}z_{n+2}=0,\pi のとき,異なる4点 z_n,z_{n+1},z_{n+2},z_{n+3} が同一直線上
となり,帰納的に
(a) 全ての \{z_n\} は同一円周上にある,
(b) 全ての \{z_n\} は同一直線上にある
のいずれかが成り立つことになる.

ここで (a)の場合,|z_n-z_{n+1}|\leqq (円の直径) をみたさなければならないが,|z_n-z_{n+1}| はいくらでも大きくなるので矛盾するので (b),つまり 全ての \{z_n\} は同一直線上にある.

全ての \{z_n\} は同一直線上にあるとき,z_{2022}-z_{2023},z_{2023}-z_{2024} は直線に平行な複素数となるので偏角は等しいか \pi ずれており,いずれにせよ \dfrac{z_{2022}-z_{2023}}{z_{2023}-z_{2024}} は実数である.

また,その絶対値は \dfrac{2^{2022}}{2^{2023}}=\dfrac{1}{2} であるから,この複素数の値は \pm\dfrac{1}{2} となる必要がある.

 z_n=2^{n} とおくと,これは(i)(ii) をみたし, \dfrac{z_{2022}-z_{2023}}{z_{2023}-z_{2024}}=\dfrac{1}{2} となり,
 z_n=\dfrac{(-2)^{n}}{3} とおくと,これは(i)(ii) をみたし, \dfrac{z_{2022}-z_{2023}}{z_{2023}-z_{2024}}=-\dfrac{1}{2} となるので,
とり得る値は \pm\dfrac{1}{2} である.