[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1887年(明治20年)東京農林學校(六月)-數學

明治20年6月入試

2020.11.01記

【算術】(二時間)

[1] 原野ヲ開テ林ヲ造ルアリ一坪毎ニ十六本ノ松苗ヲ植付ルトセバ二百五十六萬本ノ松苗幾坪ニ植付得ベキヤ

[2] 羊若干頭アリ解剖實習ノ爲メ其ノ十分ノ一ヲ殺シ二十七頭ヲ餘セリ問此全羊數幾頭ナルヤ
(「全半數」を「全羊數」の誤植と判断した )

[3] 八人ノ農夫毎日九時ヅヽ働キ二十日ニシテ全田ノ九分ノ五ヲ耕セリ今此農夫ヲシテ毎日十二時ヅヽ働セシメ其殘田ヲ耕サンニハ幾日ヲ要スルヤ

[4] 甲乙丙三種ノ家畜ヲ買入レシニ其数五ト六ト七トノ如ク其價ハ各十頭ニ付甲種ハ金七十五圓乙種ハ八十三圓丙種ハ九十八圓ニシテ三種ノ代價一万千百八十圓ナリ問フ此三種ノ家畜各幾頭ナルヤ

[5] 方三尺ノ桶ヲ以テ用水ヲ引キ之ヲ平等ニ二十五ケ所ニ分派センニハ方幾寸ノ樋ヲ要スルヤ

[6] 三万六千俵ノ米ヲ正立方体ニ積ミシニ六十三俵ヲ餘ラセリ問フ底面ノ俵數幾許ナルヤ

【代數學】(二時間)

[1] 分數式
\Bigl\{\Bigl[ a-\dfrac{m(bn-a)}{n-m}\Bigr]\times\dfrac{n-m}{n}+mb\Bigr\}÷\dfrac{ab}{x} 及ビ
\dfrac{a^2x-x^3+2x^2y-xy^2}{a^2+ax-ay}\times\dfrac{y}{ax-x^2-xy} ヲ運算シテ簡短トナス可シ

[2] \Bigl(\dfrac{a}{b}\Bigr)^{-m}\Bigl(\dfrac{b}{a}\Bigr)^{m} ニ等シキヲ證セヨ

[3] 方程式ヲ解キ未知數ヲ求ル運算ハ如何ナル原則ニ基クヤ

[4] 銅鐵ヨリ成リタル目方百磅ノ器アリ之ヲ水中ニテ量レバ拾二磅ヲ減ズ九磅ノ銅ハ水中ニ於テ一磅ヲ減ジ八磅ノ鐵ハ水中ニテ一磅ヲ減ズト云問銅鐵幾許ヨリ成ルヤ

[5] 羊若干ヲ a 圓ニ買フ其中六頭斃レタリ然レ𪜈殘羊一頭 c 圓高ク賣レバ損益ナシト云フ全羊數ヲ問フ

[6] x^2+xy=ay^2+xy=b ノ方程式ヲ解シ x ノ價ヲ求ム可シ


【幾何學】(二時間)

[1] 如何ナル者ヲ平面ト云フヤ

[2] 直角ヲ三等分スル法及ビ其證ヲ問フ

[3] 三角形一角ノ截半線ハ其對邊ヲ分ツテ兩挾ノ比ノ如クスト此證ヲ問フ

[4] 三角形ヲ同積ノ正方形ニ變ズル法ヲ問フ

[5] 圓周ノ二点ヲ連結スル各直線ハ其直經ヨリ小ナリ其證ヲ問フ

[6] 三角形ノ三邊ヲ題セリ以テ其面積ヲ求ムル公式ヲ作ル可シ

【代數學】

[5] 羊を n 頭とすると na=(n-6)(a+c) だから,n=\dfrac{6(a+c)}{c} となり,6+\dfrac{6a}{c}

[6] 2式の和と差から (x+y)^2=a+b(x+y)(x-y)=a-b となる.
(i) a+b=0 のとき,x+y=0 であり,a-b=0となるので,
a=b=0 のとき,x は任意の実数となり,y=-x となる.
a+b=0かつ a\neq0 のとき解なし

(ii) a+b\neq 0 のとき x+y=\sqrt{a+b}x-y=\dfrac{(a-b)\sqrt{a+b}}{a+b} であるから,
x=\dfrac{a\sqrt{a+b}}{a+b}y=\dfrac{b\sqrt{a+b}}{a+b}
(根号内が負のときは \sqrt{a+b}\sqrt{-a-b}i とすれば良いが \sqrt{-6} の表記を認めれば同じ形で表現できる)

難易度を考えると,おそらく,(i) は考えていなさそう(何となく文字正と考えていそう)


【幾何學】
[1] 当時の定義が知りたい.
「図形上の任意の2点を結ぶ直線上の全ての点がその図形に含まれるような二次元図形」
とかどうよ

上野継光述「ウヰルソン氏立体幾何学講義録」(明治27年)では、
「平面トハ此面内ニ於テ何レノ所ナリ𪜈二點を取リ之ヲ連結スルf:id:spherical_harmonics:20190309182705p:plain:w20は此線ハ全ク此面内ニアルモノヲイフ」
とある.いい線いってたじゃん(2020.11.07記)

[2] 正三角形を描けば良い

[3] 角の二等分線で a:b=c:d となるやつ

[4] 結構難しい.(1) 三角形の底辺の長さ a,高さの半分 h' を作図(どっちを半分にしても良い)
{\rm PQ}=a+h'を直經とする円を描く.{\rm PQ} 上に {\rm PH}=a となる点 \rm H をとる
\rm H を通り \rm PQ に垂直な直線と円の交点の一方を \rm R とする.
\rm RH を一邊の長さとする正方形が求める正方形である.

理由は (三角形の面積)=ah'={\rm RH}^2(後半は方羃の定理)だからである.

[5] 圓の中心と二點からなる三角形に於て連結する線分の長さは殘りの二邊の長さの和(直經に等しい)より小なり
(等しい塲合も含むとす)

[6] ヘロンの公式を導けということ.