[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1891年(明治24年)帝國大學理科大學簡易科-數學[幾何学]

2022.05.22記
九月実施

[1] 同一ノ直線ニ平行ナル直線ハ互ニ平行ナリ

[2] 多角形ノ内角ノ和ハ之ニ四直角ヲ加ヘテ邊ノ數ノ二倍ノ直角ニ等シ

[3] 圓ニ内接スル四邊形ノ相對スル角ハ互ニ補角ナリ

[4] 鈍角三角形ノ鈍角ニ對スル邊ノ上ノ正方形ト他ノ二ツノ邊ノ上ノ正方形トノ關係ニ付テノ定理ヲ述ベ之ヲ證明セヨ

[5] 二ツノ三角形ノ角ガ夫々相等シケレバ三角形ハ相似ナリ

[6] 二ツノ相交ル直線ガ夫々他ノ二ノ相交ル直線ニ平行ナルトキハ前者ノ平面ハ後者ノ平面ニ平行ニシテ其交ル角ニシテ其夾ム角ハ相等シ

2022.05.24記

[1] 同一の直線に平行な直線は互いに平行である

[2] 多角形の内角の和に4直角を足すと,直角が辺の数の2倍個分となる

[3] 円に内接する四角形の向い合う角は互いに補角である

[4] 鈍角三角形の鈍角に対する辺の上の正方形と,他の2つの辺の上の正方形との関係についての定理を述べ,これを証明せよ.

[5] 2つの3角形の角がそれぞれ等しければ3角形は相似である

[6] 2つの相交わる直線がそれぞれ他の2つの相交わる直線に平行なるときは前者の平面は後者の平面に平行であり,(その後の文章の意味が良くわからない)

これはら基本問題なので特に解説は不要である.参考にした文献では
「此諸題ハ菊池大麓編幾何教科書ニ記載アル定理ノミナル故ニ解ハ略ス」
とあった.[4] はピタゴラスの定理と関係あるが,当時はピサゴラスの定理と呼んでいたようだ.

2022.05.27記

[解答]
[1] l_1l_2 が平行で, l_1l_3 が平行であるとする.

この3本の直線に交わる直線を m とするとml_1l_2 でできる同位角は等しく,ml_1l_3 でできる同位角は等しいので,ml_2l_3 でできる同位角は等しい.

よって l_2l_3 が平行である

[2] n角形は互いに交わらない n-3 本の対角線を引くことにより n-2 個の三角形に分けることができる
(凹多角形の場合を考えると,もう少し真面目に三角形分割可能なことを帰納法で示すことになる)ので内角の和は
180\times (n-2)^{\circ} となり,よって内角の和に4直角を加えると,直角が 2n 個分になる.

[3] 中心角は円周角の2倍であり,向かい合う角の中心角の和は4直角であるから,向かい合う角の和は2直角となるので互いに補角である.

[4] 鈍角に対する正方形の面積は、他の2つの正方形の面積の和よりも大きい

[証明] \angle \rm A は鈍角とし,\rm A から \rm BC に下した垂線の足を \rm H とする.\rm AH 上に \rm H,A,D の順に点 \rm D\angle \rm BDC=90^{\circ} となるようにとると,\rm AB\lt DB\rm AC\lt DC であり,ピサゴラスの定理から {\rm BC}^2={\rm DB}^2+{\rm DC}^2 であるから,
{\rm BC}^2\gt {\rm AB}^2+{\rm AC}^2 である

[5] 当時の理科大学で使用する教科書の相似の定義を調べていないので,合同条件に帰着する証明にしておいた.

[5] \triangle\rm ABC\triangle\rm PQR において,\angle\rm A=\angle\rm P\angle\rm B=\angle\rm Q とする.\rm AB\geqq \rm PQ として良い
\rm AB 上に \rm AD= PQ となる点をとり,点 \rm Q を通り \rm BC と平行な直線と \rm AC の交点を \rm E とすると,
\triangle\rm ADE\triangle\rm PQR は1辺両端の角が等しいので合同である.
また,\triangle\rm ADE\triangle\rm ABC について \rm DE\rm BC は平行であるから,相似である.

よって \triangle\rm ABC\triangle\rm PQR は相似である.

[6] 問題文の解釈が正しいのか良くわからないので,保留しておく.