[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1907年(明治40年)東京帝國大學農科大學實科-數學

2020.11.01記

【代數學】(二時間)

[1] 次ノ式ヲ因數ニ分割セヨ
x^4-2x^2a^2-2x^2b^2+a^4+b^4-2a^2b^2

[2] 人アリ或ル距離ヲ歩行スルニ毎時ノ行程ヲ四分ノ一里ヅツ増シタランニハ現ニ費セル時間ノ五分ノ四ニテ到着シタルベウ若シ又毎時間ノ行程ヲ四分ノ一里ヅツ減シタランニハ現ニ費セル時間ヨリ貮時間半多ク要スベシト云フ其距離如何

[3] 人アリ若干圓ヲ年利率 p複利ニテ借入シタリ而シテ其歳ヨリ x 圓ヅツ年賦にて返濟シテ n 年目ノ終リニ元利金ヲ皆濟セントス毎年ノ返濟金額如何

【幾何學】(二時間)

[1] 三角形ノ二邊ガ相当シカラザレバ小ナル邊ノ中點ヲ過ル中線ハ大ナル邊ノ中點ヲ過ル中線ヨリ大ナルヿを證セヨ

[2] 與ヘラレタル三邊ノ和及ビ二角ニヨリ三角形ヲ作ルベシ

[3] 三角形ノ外接圓ノ直經ハ一ツノ頂點ヨリ之レニ對スル邊ヘ引ケル垂線及ビ其頂點ニ出會フ所ノ二ツノ邊ノ第四比例項ナルコトヲ證セヨ

ヿは合略仮名で「こと」と読む

【代數學】
[1] ヘロンの公式の変形を思い出す.
(x+a+b)(x+a-b)(x-a+b)(x-a-b)

[2] 距離 x 里,時速 y 里とすると
\dfrac{x}{y+1/4}=\dfrac{4}{5}\cdot\dfrac{x}{y}\dfrac{x}{y-1/4}=\dfrac{x}{y}+2.5
となるので x=7.5,y=1 となるので,七里半。

[3] 元金を y とする.
初年度末の残金は y(1+p)-x
二年度末の残金は \{y(1+p)-x\}(1+p)-x=y(1+p)^2- \{1+(1+p)\}x
と考えると
n 年度末の残金は
y(1+p)^n-\dfrac{(1+p)^n-1}{p}\cdot x
となり,これが 0 となるので,
x=y\cdot \dfrac{p(1+p)^n}{(1+p)^n-1}
となる.つまり元金の\dfrac{p(1+p)^n}{(1+p)^n-1}倍返済すれば良い.

【幾何學】

[1] 当時の感覚からすると辺の大小は角の大小で考えるが,中線定理を使うと簡単.
\triangle\rm ABC\rm AB\lt AC とする.
\rm BC,CA,AB の中點を \rm D,E,F とするとき,\rm BE\lt CF を證明すれば良い.

中線定理より,2{\rm BE}^2={\rm BC}^2+{\rm BA}^2-\dfrac{1}{2}{\rm AC}^2
\lt {\rm BC}^2+{\rm AC}^2-\dfrac{1}{2}{\rm BA}^2=2{\rm CF}^2 となる.

別解として,\rm \triangle ABC の重心を \rm G とおくと,\rm AB\lt AC より \angle\rm ADB\lt \angle ADC となり,これから \rm GB\lt GC が言えるので,この式を \dfrac{3}{2} 倍して \rm BE\lt CF となる.

[2] 三辺の和を l とし,2角を \alpha,\beta とする.
\rm DE=l を作図し,\rm D から \rm \angle FDE=\alpha\rm \angle GEF=\beta をみたす \rm F,G をとる.\rm \angle FDE\rm \angle GED 角の2等分線の交点を \rm A とし,\rm AB\rm FD が平行,\rm AC\rm GE が平行となるように \rm DE 上に \rm B,Cをとる.このとき \triangle\rm ABC が求める三角形である.

この作図で良い理由は,\triangle\rm BAD\rm BA=BD二等辺三角形\triangle\rm CAE\rm CA=CED二等辺三角形であることから,
\rm AB+BC+CA=DB+BC+CE=l となり,\angle\rm ABC=\angle FDE=\alpha\angle\rm ACB=\angle GED=\beta となることからわかる.

[3] マイナーな言葉であるが,a:b=c:d なる d のことを,a,b,c の第四比例項と呼ぶ.つまり
三角形の一つの頂點から対辺へ下した垂線の長さ,その頂點で出会う三角形の二辺の第四比例項が外接円の直經となるということは,

三角形の一つの頂點から対辺へ下した垂線の長さと外接円の直經の積は、その頂點で出会う三角形の二辺の長さの積に等しい

となる.\triangle\rm ABC\rm A から \rm BC に下した垂線の足を \rm H とし,\triangle\rm ABC の外接円の半径を R とするとき,

 {\rm AB\times AC= AH}\times 2R

を證明すれば良い.

それは,\triangle\rm ABC の外接円の \rm A を通る直經を \rm AD としたとき,
\triangle\rm ADC\triangle\rm ABH(直角,円周角で2角相等の相似)
から\rm AD:AC=AB:AH となり,言える.