[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1903年(明治36年)東京帝國大學農科大學實科-數學

2020.10.31記

(三時間)

【代数之部】

[1] a^3+3a^2b+2ab^2a^4+4a^3b+3a^2b^2 トノ最高通因數ヲ求メヨ

[2] 正方形ナル兩地所アリ其ノ一邊ノ差二間ナリ今各地所ニ方一尺ノ石ヲ敷カバ敷石ノ數ノ和二千二百五十枚ヲ要スト云フ兩地ノ各一邊ノ長サ如何

(文献によっては 「二千二百五十」が「二千百二十」となっている)

[3] 次ノ方程式ヲ解クベシ
(a) x^3-1=0
(b) x^4+1=0
(c) x^4-1=0

【幾何之部】

[1] 二ツノ三角形ノ三邊ガ互ニ等シキトキハ此二ツノ三角形ハ相等シキコトヲ證明セヨ

[2] 直角三角形ノ直角頂ヨリ斜邊ニ垂線ヲ下ストキハ直角ノ一邊ハ之ニ隣ル斜邊ノ部分ト斜邊トノ比例中項ナリ之ヲ證セヨ

[3] 二個ノ定リタル平方形ノ和ニ等シキ平方形ヲ作ル法如何

[4] 缺頂圓錐體ノ下底面ノ半徑ハ二尺八寸上底ノ半徑ハ二尺ニシテ高サ五尺七寸ナリ體積幾何ナルカ

問題文は文献によって多少違うので,正確な文面は不明.

(三時間)

【代数之部】

[1] a^3+3a^2b+2ab^2a^4+4a^3b+3a^2b^2 との最大公約数を求めよ.

[2] 正方形の2つの土地があり,その一辺の長さの差は2間(12尺)である.いま各土地を一辺1尺の正方形の石を敷くと合計2250枚の石を必要とした.2つの土地の一辺の長さはそれぞれいくらか.

(文献によっては 「2250」が「2120」となっている)

[3] 次の方程式を解け
(a) x^3-1=0
(b) x^4+1=0
(c) x^4-1=0

【幾何之部】

[1] 二つの三角形の三辺が互いに等しいとき,この2つの三角形は合同であることを證明せよ.

[2] 直角三角形の直角の頂点から斜辺に垂線を下すとき,直角をなす片方の辺の長さは、斜辺と,斜辺を垂線の足で分けたときの片方の辺と隣りあう部分との等比中項となっていることを示せ.

[3]2個の定正方形の面積の和と面積が等しい正方形を作図する方法を述べよ.

[4] 円錐台の下底面の半径は2尺8寸,上底面の半径は2尺であり高さは5尺7寸である.このとき体積はいくらか.

2020.10.31記
【代数之部】
[1] それぞれを因数分解すると  a(a+b)(a+2b) a^2(a+b)(a+3b) となるので最大公約数は a(a+b) となる.

[2] 単位を尺とすると一間は十二尺である.短い方の一辺を x とすると,x^2+(x+12)^2=2250 の正の解は 27 だから、二尺七寸と三尺九寸,あるいは 四間半と六間半

(2120の場合は、正の解が26となるが,答を「間」で表示したときの自然さから、2250の方が正確な問題文だと思われる)


[3] (a) x=1,\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}
(b) x=\dfrac{\pm 1\pm i}{\sqrt{2}}(複号任意)
(c) x=\pm1,\pm i

【幾何之部】
[1] 合同をどのように定義しているかわからないが、二辺とその間の角が等しいことを証明してみることにする.

\triangle\rm ABC\triangle\rm PQR について
 \rm AB=PQ,BC=QR,CA=RP であったとする.

\rm A\rm P\rm B\rm Q を重ねて,裏返しの相似となるようにする.

このとき \rm AC=AR であるから,\triangle\rm ACR二等辺三角形なので \rm \angle ACR=\angle ARC である.

同様に \rm BC=BR であるから,\triangle\rm BCR二等辺三角形なので \rm \angle BCR=\angle BRC である.

よって,\rm \angle ACB =\angle ARB,つまり
\rm \angle ACB =\angle PRQ となり,二辺とその間の角が等しくなる.

(同じようにすれば,残りの角度も等しいことが言えるので,対応する3つの角度も等しくなるから流石に合同をどう定義していても大丈夫だろう)

[2] \triangle \rm ABC\angle A が直角とする.\rm A から \rm BC に垂線 \rm AH を下すと,\rm \triangle ABC\rm \triangle HAC となるので,\rm CA^2 = CH \times CB が成立し,\rm CA\rm CB,CH の等比中項である.

[3] 三平方の定理を利用する.2つの定正方形のそれぞれの一辺の長さで直角を挟む直角三角形を作図すると,その斜辺の長さが求めるもの.

多々羅恕平著「平面幾何学」には「兩平方ノ邊ヲ勾ト爲ス直方形ヲ作レバ其弦ハ所求平方ノ邊ナリ(p.165)」とある(2020.11.07記)

[4] 円錐台の体積の公式 V=\dfrac{1}{3}\pi h(r_1^2+r_1r_2+r_2^2) に代入すると V=33136 \pi立方寸となる.