[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1936年(昭和11年)東京帝國大學理學部-數學[2]

2022.08.11記

[2] 定角\rm AOBノ二等分線上ノ定點\rm Cヲ中心トシ\rm OA\rm OBニ切スル楕圓ヲ畫ケバソノ主軸ノ一ツハ\rm OC上ニアルコトヲ證明シ,且ソノ楕圓ノ面積ノ最大値ヲ索メヨ.

本問のテーマ
極と極線
共役直径
楕円を円に変換する線形変換

2022.08.29記(で下書きのまま2023.09.03まで1年放置した)
まずは前半の証明

[解答]
\rm O と 直線 \rm AB は極と極線の関係にあり,直線 \rm AB に平行で楕円の中点を通る直線の共役直径は \rm O を通る(この楕円を円に変換する線形変換を考えればわかる)ので,この共役直径は定角\rm AOBの二等分線に一致する.よって三角形 \rm AOB は中線と角の二等分線が一致することから,三角形 \rm AOB\rm OA=OB の2等辺三角形である.よって共役直径が互いに直交することから,これらは主軸の組である.

[別解]
\rm O を原点とし,\rm OA\rm OB をそれぞれ y=mxy=-mx とする.図形全体を y 軸方向に \dfrac{1}{m} 倍に拡大すると,\rm OA\rm OB はそれぞれ y=xy=-x に移り,\rm AOBの二等分線である x 軸は x 軸に移る.

このとき,y=xy=-xは直交するので,原点は楕円の像の準円上にあり,この準円と \rm OA\rm OB の交点を結ぶ線分は準円の直径であるから,この2交点と \rm O で直角3角形をなし,準円の中心はこの直角三角形の斜辺の中点となる.

一方,題意から準円の中心は\rm AOBの二等分線上にあるので,これと中線が一致することから,先程の直角三角形は直角2等辺三角形である.この直角2等辺三角形を準円の中心に関して180度回転させたものとあわせてできる正方形にもとの楕円は内接する.

よってこの楕円は正方形の対角線に関して線対称であるから,楕円の主軸は正方形に対角線上にあるので、楕円の主軸は\rm AOBの二等分線上にあることとなり,よって題意は証明された.

2023.09.03記
後半の解答

[別解]([別解]のつづき)
楕円の面積が最大となるのは,図形全体を拡大した状況で,正方形に内接する楕円が円のときである.この円の半径は \dfrac{\mbox{OC}}{\sqrt{2}} だから,その面積は \dfrac{\mbox{OC}^2}{2}\pi となり,これを y 軸方向に m 倍に拡大することにより \dfrac{m\mbox{OC}^2}{2}\pi となる.ここで m=\tan\dfrac{\angle\mbox{AOB}}{2} だから,求める面積は
\dfrac{\mbox{OC}^2\pi}{2}\tan\dfrac{\angle\mbox{AOB}}{2}
となる.

[解答]([解答]のつづき)
\mbox{OC}=c とし,\mbox{O}(-c,0),楕円を\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=10\lt a\lt c) とし,\mbox{A}(p,q)\mbox{OA}の傾き\dfrac{q}{p+c}mで一定とする) とすると,楕円の \mbox{A} における接線が (-c,0) を通ることから
\dfrac{-cp}{a^2}=1\Longleftrightarrow p=-\dfrac{a^2}{c}
が成立する.これと \dfrac{p^2}{a^2}+\dfrac{q^2}{b^2}=1q=m(p+c)=\dfrac{m(c^2-a^2)}{c} から
\dfrac{a^4}{a^2c^2}+\dfrac{m^2(c^2-a^2)^2}{b^2c^2}=1
となり,0\lt a\lt c に注意すると
a^2b^2=m^2a^2(c^2-a^2)(右辺は a^2 の2次関数)
となるので,a^2b^2a^2=\dfrac{c^2}{2} のときに最大値 \dfrac{m^2c^4}{4} をとる.

よって楕円の面積の最大値は \dfrac{mc^2\pi}{2}=\dfrac{\mbox{OC}^2\pi}{2}\tan\dfrac{\angle\mbox{AOB}}{2} となる.