[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2002年(平成14年)東京大学後期-数学[2]

2019.02.21記

[2] xyz 空間において次のような3つの互いに合同な長方形 L_1L_2L_3 を考える.

\bullet L_1xy 平面に含まれ,\mbox{P}_1(a,b,0)\mbox{Q}_1(-a,b,0)\mbox{R}_1(-a,-b,0)\mbox{S}_1(a,-b,0) を頂点とする.

\bullet L_2yz 平面に含まれ,\mbox{P}_2(0,a,b)\mbox{Q}_2(0,-a,b)\mbox{R}_2(0,-a,-b)\mbox{S}_2(0,a,-b) を頂点とする.

\bullet L_3zx 平面に含まれ,\mbox{P}_3(b,0,a)\mbox{Q}_3(b,0,-a)\mbox{R}_3(-b,0,-a)\mbox{S}_3(-b,0,a) を頂点とする.

ここで a\gt b\gt c とする.このとき次の問に答えよ.

(1) \triangle\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3 の面積,および \triangle\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3 と原点 \mbox{O} との距離を求めよ.

(2) 四面体 \mbox{OP}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3 および四面体 \mbox{OP}_1\mbox{P}_2\S_2 の体積をそれぞれ求めよ.

(3) L_1L_2L_312 頂点から 3 点を選び三角形をつくる.このとき \triangle\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3 または \triangle\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{S}_2 と合同な三角形が 20 個えられる.これらの三角形で囲まれる二十面体を D とする.0\lt\theta\lt\dfrac{\pi}{4} なる \theta に対して
a=\cos\thetab=\sin\theta
とおくとき D の体積 Vt=\tan\theta の関数 V(t) として表せ.

(4) 0\lt t\lt 1 において V(t) は最大値をとることを示し,そのとき t の値を求めよ.



本問のテーマ
パチョーリの正20面体

[解答]
(1)\triangle\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3は1辺の長さが\sqrt{2(a^2-ab+b^2)}の正3角形なので,面積は\dfrac{\sqrt{3}}{2}(a^2-ab+b^2)となる.三角形と原点との距離は三角形の重心 \dfrac{a+b}{3}(1,1,1) と原点の距離で \dfrac{\sqrt{3}}{3}(a+b) となる.

(2)四面体 \mbox{OP}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3の体積は(1)から\dfrac{1}{6}(a^3+b^3)となる.また四面体 \mbox{OP}_1\mbox{P}_2\mbox{S}_2 の体積は \dfrac{1}{3}\triangle\mbox{OP}_2\mbox{S}_2\cdot(\mbox{P}_1x座標) =\dfrac{1}{3}a^2b となる.

(3) 20面体は四面体 \mbox{OP}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3が8個と四面体\mbox{OP}_1\mbox{P}_2\mbox{S}_2が12個からなるので,
 V=\dfrac{4a^3+4b^3+12a^2b}{3}
となり a=\dfrac{1}{\sqrt{t^2+1}},b=\dfrac{t}{\sqrt{t^2+1}}を代入すると
V=\dfrac{4(t^3+3t+1)}{3(t^2+1)^{3/2}}
となる.

(4)微分して増減表を考えると t=\dfrac{\sqrt{5}-1}{2} で最大となる.このとき長方形のたてよこ比は黄金比となっている.

解説:t=\tan\thetaは最初の長方形のたてよこ比である。ここでa=\cos\theta, b=\sin\thetaであるから,20個の頂点は単位球面上にある。

比が黄金比とは限らない、対角線の長さが2となるような3枚の長方形を同じように組み合わせて20面体を作り(すると12の頂点は単位球面上にある)、その立体の体積の最大値を求める問題である。このある種の対称性に基づいて配置された12点から作られる20面体の体積が最大となるのは正20面体であることが計算により確かめられる。

この20面体は正3角形8枚と2等辺3角形12枚からできており、\theta=0(a=1,b=0)のときは2等辺3角形の底辺の長さが0となり、つぶれてなくなってしまうので、正8面体になる。
\theta=\pi/4(a=b=\dfrac{\sqrt{2}}{2})のときは2等辺3角形が直角2等辺3角形となるが、その直角2等辺3角形が2枚で正方形となるので、正3角形8枚と正方形6枚からなる立方8面体になる。

この、たてよこ比が黄金比となる長方形3枚を使って作られる正20面体のことをパチョーリ(Luca Pacioli)の正20面体という。