[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1954年(昭和29年)東京大学-数学(解析I)[2]

[2] 点 (x,\,y) が原点を中心とする半径1の円の内部を動くとき,点 (x+y,\,xy) の動く範囲を図示せよ.

2020.09.24記
このような写像をある点のまわりで線型近似したものがヤコビ行列となる.ヤコビ行列に逆行列があればその付近では一対一写像となるので逆写像が存在する.しかしヤコビ行列に逆行列がない,つまりヤコビアンが0となる場所の付近では一対一写像とならず,多対一写像となる.

これは,ヤコビアンが0となる場所を境界としてその写像が折り畳まれていることを示唆している.

(大人の解法)
X=x+yY=xy とおくと単位円の内部x^2+y^2<1の像はY>\dfrac{X^2-1}{2} となる.

この写像のヤコビ行列は\dfrac{\partial (X,Y)}{\partial(x,y)}=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ y & x \end{pmatrix} だからヤコビアンx-y となり,x-y=0の像はY=\dfrac{X^2}{4} であることに注意すると単位円の内部の像は

Y>\dfrac{X^2-1}{2} の範囲が Y=\dfrac{X^2}{4} で折り畳まれて、2対1の写像となっていることがわかる.

よって求める領域は

Y>\dfrac{X^2-1}{2} かつ Y\leqq \dfrac{X^2}{4}

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となる.