[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2006年(平成18年)東京大学前期-数学(理科)[6]

2020.07.29記
もとの関数の積分逆関数積分の関係を表しており,Young の不等式と関連する出題だが,気にしなくても,バームクーヘン積分のときにも習う逆関数で置換してから部分積分をするテクニックを用いれば自然に処理ができる.

(1) はほとんどの問題集の解答が、f'(x)=\dfrac{12(e^{5x}+3e^{x})}{(e^{2x}-1)^2}\gt 0 より f(x) は単調増加であり,\displaystyle\lim_{x\to+\infty} f(x)=+\infty ,\displaystyle\lim_{x\to +0} f(x)=-\inftyであるから,y=f(x) は実数全体から実数全体への一対一の写像となるので、逆関数が存在する,のように示しているが,実は,問題文の注釈である

「すなわち,任意の実数 a に対して,f(x)=a をみたす x>0 がただ1つ存在することを示せ」

という文言に素直に従って,e^x=Xとおくと見通しが良くなる.

[解答]
(1) e^x=X\gt 1 とおくと、x=\log X\gt 0 であるから,x\gt 0 X\gt 1は一対一に対応する.

よって
f(x)=a\Leftrightarrow  F(X)=\dfrac{12X(X^2-3)}{(X+1)(X-1)}=a
\Leftrightarrow  G_a(X)=12X(X^2-3)-a(X+1)(X-1)=0
をみたす X\gt 1 が任意の実数 a に対して唯一定まることを示せば良い.

\displaystyle \lim_{X\to -\infty} G_a(X)=-\inftyG_a(-1)=24\gt 0G_a(1)=-24\lt 0\displaystyle \lim_{X\to +\infty} G_a(X)=+\infty
であるから,中間値の定理により,3次方程式 G_a(X)=0 は任意の実数 a に対して, X\lt -1-1\lt X\lt 11\lt X の範囲のそれぞれ実数解を1つずつもつ.

よって以上から,任意の実数 a に対して,X\gt 1が唯一定まり,その X に対して x\gt 0 が唯一定まるので、題意は証明された.

(2)  e^y=Y とおくと,
g(a)=y \Leftrightarrow f(y)=a \Leftrightarrow G_a(Y)=0
が成立する.ここで(aからYが簡単に求まると予想して)
G_a(2)=24-3a=3(8-a)G_a(3)=12\times 3\times 6-8a=8(27-a) であるから,
a=8,\,27のとき、Y=2,\,3となり,y=\log 2,\,\log 3となる.

つまり,g(8)=\log 2g(27)=\log 3 が成立する.

g(x)=y、つまり f(y)=x とすると,g'(x)dx=dyf'(y)dy=dx であるから,求める定積分の値をIとすると,
 I=\displaystyle\int_8^{27} g(x) dx \displaystyle =\int_{\log 2}^{\log 3} y f'(y) dy \displaystyle =\Bigl[yf(y)\Bigr]_{\log 2}^{\log 3}-\int_{\log 2}^{\log 3} f(y) dy \displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-\int_{\log 2}^{\log 3} f(y) dy
となる.ここでY=e^yと置換すると dY=e^ydy=Ydyだから,(先程のF(X)を思い出して)
 I\displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-\int_2^3 \dfrac{F(Y)}{Y}dY
 \displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-\int_2^3 \dfrac{12(Y^2-3)}{(Y+1)(Y-1)}dY
 \displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-12-12\int_2^3 \dfrac{-2}{(Y+1)(Y-1)}dY
 \displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-12-12\int_2^3 \Bigl(\dfrac{1}{Y+1}-\dfrac{1}{Y-1}\Bigr)dY
 \displaystyle =27\log 3 - 8\log 2-12-12\Bigl[\log\dfrac{Y+1}{Y-1}\Bigr]_2^3
 =27\log 3 - 8\log 2-12-12\log 2+12\log 3
 \displaystyle =39\log 3 -20\log 2-12