[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1972年(昭和47年)東京大学-数学(文科)[3]

[3] 複素数 zw の間に w=z^2 なる関係があり,複素平面において点 z は四点 1+i2+i2+2i1+2i を頂点とする正方形の内部を動くものとする.このとき,複素平面において,点 w の動く範囲の面積を求めよ.

ただし,i虚数単位をあらわす.

2020.09.24記
w=z^2複素関数で必ず勉強しますよね。

実軸に平行な直線は左側に開いた放物線に,虚軸に平行な直線は右側に開いた放物線になる.いずれも実軸が放物線の軸になっているのが面白い。この写像は原点を除いて等角写像となるので、左側に開いた放物線と右側に開いた放物線は直交している。

[大人の解答]
z=x+iyw=X+iYとおくと,X=x^2-y^2Y=2xy なのでヤコビ行列\dfrac{\partial (X,Y)}{\partial (x,y)}=\begin{pmatrix} 2x & -2y \\ 2y & 2x \end{pmatrix} だからヤコビアンはヤコビ行列の行列式である 4(x^2+y^2)となる.よって
dXdY=4(x^2+y^2)dxdy
となり,求める面積は
\displaystyle \int dXdY =\int_1^2 \int_1^2 4(x^2+y^2) dxdy= 4\displaystyle \int_1^2 \{ x^2 +\dfrac{7}{3} \} dx
=\displaystyle 4\Bigl(\dfrac{7}{3}+\dfrac{7}{3}\Bigr)=\dfrac{56}{3}

z1 中心半径 1 の円周上を動くとき,w はカージオイドを動く。

2021.02.20記
z1 中心半径 1 の円周上を動くとき,w はカージオイドを動く話は
2018年(平成30年)東京大学-数学(理科)[5] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
参照のこと.

2021年(令和3年)早稲田大学理工学部(全5問) - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
でも w=z^2 が出題されたので

「実軸に平行な直線は左側に開いた放物線に,虚軸に平行な直線は右側に開いた放物線になる.いずれも実軸が放物線の軸になっているのが面白い。この写像は原点を除いて等角写像となるので、左側に開いた放物線と右側に開いた放物線は直交している。」

を説明しておく.

z=x+yiw=X+Yi とおくと X=x^2-y^2Y=2xy だから,実部一定,つまり x が一定のとき

(i) x=0(虚軸)の像は Y=0 かつ X\leqq 0

(ii) x\neq 0の像は放物線 X=-\dfrac{Y^2}{4x^2}+x^2

となり,虚部一定,つまり y が一定のとき

(i) y=0(実軸)の像は Y=0 かつ X\geqq 0

(ii) y\neq 0の像は放物線 X=\dfrac{Y^2}{4y^2}-y^2

となる.ヤコビ行列 \dfrac{\partial (X,Y)}{\partial (x,y)}=\begin{pmatrix} 2x & -2y \\ 2y & 2x \end{pmatrix}(x,y)\neq (0,0) のとき,回転拡大行列となっているので,原点を除いて等角写像となっている.

w=z^2 による一般の直線の像を考える.
直線の法線ベクトルを \alpha,原点と直線の距離を d とすると,直線の方程式は
\mbox{Re}\Bigl(\dfrac{z}{\alpha}\Bigr)=d
となるので,その像は d=0 のときは半直線,d\neq 0 のときは実軸を対称軸とする放物線になる.w=\alpha^2\Bigl(\dfrac{z}{\alpha}\Bigr)^2 だから,その放物線(または半直線)を \alpha^2 によって回転拡大した放物線となっていることがわかる.