[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2018年(平成30年)東京大学-数学(理科)[5]

2020.09.30記

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2021.01.24記
カージオイドが反転で放物線に移ることは良く知られている.詳細は
遠藤一成,カージオイド(心臓形)について,数研通信38号(2000年9月)[pdf]
大島利雄,高校生のための現代数学講座「複素数」講義(1)2008年7月26日[pdf]
などを参照のこと.なお,大島利雄先生は dviout の製作者としても有名である.

遠藤には,問3,4として
w=z^2 で円 |z-1|=1 がカージオイドに移り,
原点に尖点をもつカージオイド r=\dfrac{a}{2}(1+\cos\theta)(極座標) は反転で y^2=-\dfrac{4}{a}\Bigl(x-\dfrac{1}{a}\Bigr)(直交座標)に移ることが示されている(本問の場合は a=4).

[大人の解答]

半径1の円の外側に半径1の円を滑らずに転がすとき,円周上の定点の描く曲線はカージオイドとなる.
つまり,{\rm Q}(u)1 に尖点をもち,左側にふくらんだ実軸対称なカージオイドとなる.
{\rm R}(v)v=1-u とおくと,{\rm R}(v) 0 に尖点をもち,右側にふくらんだ実軸対称なカージオイドとなる.よって {\rm X}(w) は,このカージオイドを反転して実軸に関して対称移動したものとなる.原点を尖点とするカージオイドを反転させると放物線となるので,求める軌跡は放物線となる.

ここで z=\dfrac{1+\sqrt{3}i}{2}\to -1\to \dfrac{1-\sqrt{3}i}{2} と単位円周上を連続的に追跡することにより,
放物線は z=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\to \dfrac{1}{4}\to \dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} と動くので,求める軌跡は w=x+yi とするとx=\dfrac{1}{4}-y^2-\dfrac{\sqrt{3}}{2}\leqq y\leqq\dfrac{\sqrt{3}}{2} の部分を動く.

普通に解くと次のようになる.

[解答]

(1) |z|=1z\neq 1)とする.
Cz における接線上の点を Z とすると,\mbox{Re}\Bigl(\dfrac{Z}{z}\Bigr)=1 をみたすので,\dfrac{1}{z}\dfrac{u}{z} の実部の和は2,虚部は等しい.よって \dfrac{1}{\bar{z}}+\dfrac{u}{z}=2 が成立し, u=z(2-z) となる.

また,w=\dfrac{1}{1-u}=\dfrac{1}{(z-1)^2} だから,\dfrac{\overline{w}}{w}=\dfrac{(z-1)^2}{(\overline{z}-1)^2}=\dfrac{z^2(z-1)^2}{(1-z)^2}=z^2 となる.

よって,\dfrac{|w+\overline{w}-1|}{|w|}=| 1+z^2-(z-1)^2|=2|z|=2

(2) \Bigl|\mbox{Re}(w)-\dfrac{1}{2}\Bigr|=|w| であるから,w は原点を焦点,実部が \dfrac{1}{2} である直線を準線とする放物線を描く.
z=\cos\theta+i\sin\theta のとき,簡単な計算により,w=\dfrac{-\overline{z}}{4\sin^2\dfrac{\theta}{2}} となるので,\dfrac{\pi}{3}\leqq \arg (z) \leqq\dfrac{5\pi}{3} から,-\dfrac{2\pi}{3}\leqq \arg (w)=\arg(-\overline{z}) \leqq\dfrac{2\pi}{3} となるので,放物線の -\dfrac{2\pi}{3}\leqq \arg (w)\leqq\dfrac{2\pi}{3} の部分,すなわち,2点 \dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} を結ぶ弧(両端含む)となる.