[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1990年(平成2年)東京大学後期-数学[2]

2024.01.04記

[2] A=\begin{pmatrix} \dfrac{1}{2} & -\dfrac{\sqrt{3}}{2} \\ \dfrac{\sqrt{3}}{2} & \dfrac{1}{2} \end{pmatrix} とし,\mbox{P}_0xy 平面上の原点とする.i=1,…,6 に対して,a_i を正の実数とし,\begin{pmatrix} x_i \\ y_i \end{pmatrix}=A^i\begin{pmatrix} a_i \\ 0 \end{pmatrix} とおいたとき,点 \mbox{P}_i\overrightarrow{\mbox{P}_{i-1}\mbox{P}_i}=\begin{pmatrix} x_i \\ y_i \end{pmatrix} となるように定める.ただし,このとき \mbox{P}_6=\mbox{P}_0 となっているものとする.\mbox{P}_0\mbox{P}_1,…,\mbox{P}_6 を順に結んで得られる六角形を \mbox{H} とおく.

(1) a_1-a_4=a_5-a_2=a_3-a_6 であることを示せ.

(2) \displaystyle\sum_{i=1}{6} a_i=6a_1-a_4=1 とするとき,\mbox{H} の面積の最大値を求めよ.

(3) \displaystyle\sum_{i=1}{6} a_i=6 とするとき,\mbox{H} の面積の最大値を求めよ.

本問のテーマ
等角六角形

2024.01.04記
本問とは関係ないが,各辺の長さが自然数で周の長さが n となる等角六角形の個数については
Prolect Euler #600
#600 Integer Sided Equiangular Hexagons - Project Euler
に出題されている.本館に解答及び一般の n における表記を書いていたが,一応 Project Euler の web page には解答を web で公開するなと書いてあったので取り下げた.

各辺の長さが自然数で最大辺が n 以下となる等角六角形の個数については
2012 UNCO Math Contest II Problems/Problem 10
Art of Problem Solving
参照

2024.01.05記

[解答]
(1) \mbox{P}_5\mbox{P}_0\mbox{P}_1\mbox{P}_2 の交点を \mbox{A}
\mbox{P}_1\mbox{P}_2\mbox{P}_3\mbox{P}_4 の交点を \mbox{B}
\mbox{P}_3\mbox{P}_4\mbox{P}_5\mbox{P}_6 の交点を \mbox{C}
とおくと \triangle\mbox{ABC}は正三角形である.各辺の長さが等しいことから
a_5+a_6+a_1=a_1+a_2+a_3=a_3+a_4+a_5
となり,よって a_1-a_4=a_5-a_2=a_3-a_6 である.

(2)(3) a_1-a_4=a_5-a_2=a_3-a_6=k とおくと \mbox{H} の面積 S
\dfrac{4}{\sqrt{3}}S=(a_5+a_6+a_1)^2-(a_1^2+a_3^2+a_5^2)=(a_1+a_3+a_5-k)^2-(a_1^2+a_3^2+a_5^2)
である.ここで
a_1+a_2+a_3+a_4+a_5+a_6=2(a_1+a_3+a_5)-3k=6
であるから,
\dfrac{16}{\sqrt{3}}S=(2(a_1+a_3+a_5)-2k)^2-4(a_1^2+a_3^2+a_5^2)=(k+6)^2-4(a_1^2+a_3^2+a_5^2)
が成立する.ここで k を固定すると a_1+a_3+a_5=\dfrac{3k+6}{2} で一定であり,
シュワルツの不等式により
(1^2+1^2+1^2)(a_1^2+a_2^2+a_3^2)\geqq (a_1+a_3+a_5)^2=\dfrac{9(k+2)^2}{4}
(等号成立は a_1=a_3=a_5=\dfrac{k+2}{2}のとき)
であるから,このとき
\dfrac{16}{\sqrt{3}}S\leqq (k+6)^2-3(k+2)^2=24-2k^2
つまり
S\leqq \dfrac{(12-k^2)\sqrt{3}}{8}
となる.

よって(2) は k=1 のときだから,S の最大値は \dfrac{11\sqrt{3}}{8} となり,このとき a_1=a_3=a_5=\dfrac{3}{2}a_2=a_4=a_6=\dfrac{1}{2} で確かに \mbox{H} は存在する.

(3) S の最大値は k=0 のときに最大値 \dfrac{3\sqrt{3}}{2} となり,このとき a_1=a_2=a_3=a_4=a_5=a_6=1 で確かに \mbox{H} は存在する.