[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1991年(平成3年)東京大学前期-数学(文科)[4]

2024.01.05記

[4] 正四角錐 V に対し,その底面上に中心をもち,そのすべての辺と接する球がある.底面の一辺の長さを a とするとき,次の量を求めよ.

(1) V の高さ

(2) 球と錐 V との共通部分の体積

ただし,正四角錐とは,正方形を底面とし,その各辺を底辺とする 4 つの合同な二等辺三角形と底面とで囲まれる図形とする.

本問のテーマ
正八面体
球台と球欠(球帽)の体積

2024.01.06記
(1) この正四角錐を2つ正方形の面で合わせると正八面体になる.立方体の6面の中心を頂点とする正八面体を考えると,1辺の長さが a の正八面体の場合,対応する立方体の一辺は \sqrt{2}a だから正四角錐の高さはその半分の \dfrac{\sqrt{2}}{2}a となる.

(2) 正四角錐からはみでる部分の体積は球欠の体積
球台と球欠(球帽)の体積(その2) - 球面倶楽部 零八式 mark II
を利用しても良いが,本問の場合は面倒となる.

[解答]
b=\dfrac{a}{\sqrt{2}} とおき,正四角錐の底面の4頂点の座標を (b,0,0)(0,b,0)(-b,0,0)(0,-b,0) とし,残りの頂点の座標を (0,0,h)h\gt 0)とおく.

底面をなす4辺に球が接することから球の方程式は x^2+y^2+z^2=\dfrac{a^2}{4}=\dfrac{b^2}{2} である.

xz 平面で考えることにより,円 x^2+z^2=\dfrac{b^2}{2} と直線 \dfrac{x}{b}+\dfrac{z}{h}=1 が接するので,点と直線の距離の公式から
\dfrac{1}{\sqrt{\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{h^2}}}=\sqrt{\dfrac{b^2}{2}}
となれば良く,\dfrac{b^2}{2}\left(\dfrac{1}{b^2}+\dfrac{1}{h^2}\right)=1 から h=b となる.

(2) 側面の1つである \dfrac{x}{b}+\dfrac{y}{b}+\dfrac{z}{b}=1 と原点との距離は点と平面の距離の公式から \dfrac{b}{\sqrt{3}} となる.
よってこの側面からはみでる球欠の体積Wは,
W=\displaystyle\int_{b/\sqrt{3}}^{b/\sqrt{2}} \pi\left(\dfrac{b^2}{2}-x^2\right)dx=\pi \left[ \dfrac{b^2}{2}x-\dfrac{x^3}{3}\right]_{b/\sqrt{3}}^{b/\sqrt{2}}
=\pi b^3 \left(\dfrac{1}{3\sqrt{2}}-\dfrac{7}{18\sqrt{3}}\right)=\pi b^3 \left(\dfrac{3\sqrt{6}-7}{18\sqrt{3}}\right)
となるので,求める体積 V
\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{4\pi}{3}\left(\dfrac{b}{\sqrt{2}}\right)^3-4\cdot\pi b^3 \left(\dfrac{3\sqrt{6}-7}{18\sqrt{3}}\right)=\dfrac{28\sqrt{3}-27\sqrt{2}}{54}\pi b^3=\dfrac{14\sqrt{6}-27}{108}\pi a^3
となる.


よってこの側面からはみでる球欠の体積Wは,底面の半径が \sqrt{\dfrac{b^2}{2}-\dfrac{b^2}{3}}=\dfrac{b}{\sqrt{6}},高さが \dfrac{b}{\sqrt{2}}-\dfrac{b}{\sqrt{3}} と高さが少々汚ないので,公式に代入すると汚なくなってしまう.