[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1995年(平成7年)東京大学前期-数学(理科)[1]

2021.10.06記

[1] すべての正の実数 xy に対し \sqrt{x}+\sqrt{y} \leqq k\sqrt{2x+y} が成り立つような実数 k の最小値を求めよ.

2021.10.06記
Twitter でみた

良く考えれば、Cauchy-Schwarz の不等式で証明できるのだから、原点と直線の距離の公式でも証明できるのは当然なのだが、思いつかなかったよ。すごいな。

ちなみに,原点と直線の距離の公式の証明は
(x,y)\in ax+by=c
のとき,Cauchy-Schwarz の不等式から
 (a^2+b^2)(x^2+y^2)\geqq (ax+by)^2=c^2
となるので,
x^2+y^2\geqq \dfrac{c^2}{a^2+b^2}
が得られ,x^2+y^2の最小値として原点と直線の距離が得られる.

この証明と上記 twitter の解答を比較すると Cauchy-Schwarz の不等式による証明を復元することができるであろう.

ちなみに,点と直線の距離の公式の証明は色々あるが,あまり知られていない方法として
(x-x_0)^2+(y-y_0)^2=d^2 上の点 \left(x_0+\dfrac{ad}{\sqrt{a^2+b^2}},y_0+\dfrac{bd}{\sqrt{a^2+b^2}}\right) における接線の方程式が
 \dfrac{ad}{\sqrt{a^2+b^2}}(x-x_0)+\dfrac{bd}{\sqrt{a^2+b^2}}(y-y_0)=d^2
である,つまり整理して
 ax+by-\left(ax_0+by_0+\sqrt{a^2+b^2} d\right)
となることから,
(x_0,y_0) と直線 ax+by+c=0 との符号付き距離 d
c=-\left(ax_0+by_0+\sqrt{a^2+b^2} d\right)
つまり
d=-\dfrac{ax_0+by_0+c}{\sqrt{a^2+b^2}}
となる、というものがある.

2024.01.13記

[解答]
コーシー・シュワルツの不等式により
\left(\dfrac{1}{2}+1\right)(2x+y)\geqq (\sqrt{x}+\sqrt{y})^2
が成立するので,すべての正の実数 xy に対し
\sqrt{x}+\sqrt{y} \leqq \sqrt{\dfrac{3}{2}}\cdot\sqrt{2x+y}
が成立する(等号は x:y=1:4のとき)ので,求める k の最小値は \sqrt{\dfrac{3}{2}} である.

[別解]
t=\dfrac{x}{y} とおくと t\gt 0 であるから,
\dfrac{\sqrt{x}+\sqrt{y}}{\sqrt{2x+y}}\dfrac{\sqrt{t}+1}{\sqrt{2t+1}}:=f(t)
t\gt 0 における最大値が k となる.

f'(t)=\dfrac{1-2\sqrt{t}}{2(2t+1)\sqrt{t}\sqrt{2t+1}}
により,f(t)t=\dfrac{1}{4} で極大かつ最大となり最大値 \dfrac{\sqrt{6}}{2} をとる.

よって求める k の最小値は \dfrac{\sqrt{6}}{2} である.

まだまだ別解がある.そのうち書こう.