B
複雑な幾何学的図形の特徴を,さまざまな尺度でとらえてみよう.図形の特徴を表す概念として次元がある.たとえば,線分の次元は であり,平面上の正方形や 円などの次元は であるが,整数でない次元をもつ複雑な図形も存在することが知られている.
いま,図2のように,一定の操作の繰り返しにより構成される図形の列を考察しよう.はじめに,一辺の長さ1の正方形を とする. を,一辺の長さ の9 個の小正方形に分割し,中央の小正方形を取り去ったものを とする.また,それぞれの小正方形を一辺の長さ のユニットと呼ぶ.次に, を構成する8個 のユニットのそれぞれについて,これを9個の小正方形に分割し,そこから中央の小正方形を取り去ったものを とする.また,この分割で得られたそれぞれの小正方形を一辺の長さ のユニットと呼ぶ.以下,同様の操作を繰り返して得られる図形を ,,…とする.
図2
(B-1) を一辺の長さ のユニットで覆うと9個を要するが, 以降の図形では8個を要する.では,これらの図形を一辺の長さ のユニットで覆うと,何個を要するか.,,,…のそれぞれについて答えよ.
(B-2) に対して,一辺の長さ のユニットで各図形を覆うのに要する個数は,ある番号 以降の ,,…に対しては一定となる.この値を とするとき, を を用いて表せ.
(B-3) 適当な正の実数 を選ぶと, が限りなく大きくなるとき, が正の実数に収束することが知られている.そのような の値を求めよ.
一般に,平面上に何らかの図形が与えられたとき,この図形を一辺が の正方形(ただし は正の整数)何個で覆うことができるかを考えてみる.覆うのに必要な個数を とすると,適当な実数 に対して が有限な正の実数になることがある.そのような場合に,この図形がもつ次元は であると定義することができる.半透明な方眼紙を重ね,図形が何個の枡目(ますめ)で覆われるかを,方眼を次第に細かくしながら数える,と考えてもよい.正方形や円などの平面図形では は有限な正の実数に収束するので であるが,一般には は整数でない値をとり得る.上の設問(B-3)で求めた は,,,…のいわば極限として見えてくる図形がもつ次元と見なすことができる.
次に,図形の作り方の規則を変えて,図3のような図形の列を考える.はじめに,一辺の長さ1の正方形 を,一辺の長さ の正方形ユニット4個に分け, 右上のユニットについては,左下の一辺の長さ の正方形を取り去る.こうして得られた図形を とする.次に,残った3個の,欠損のないユニットのそれぞれについて,同様の操作を行う.すなわち,それぞれを4個の一辺の長さ のユニットに分け,右上のユニットについては左下の一辺の長さ の正方形を取り去る.得られた図形を とする.続いて, に含まれる一辺の長さ の,欠損のない各正方形ユニットについて,同様の操作を行う.得られた図形を とする. これを繰り返して得られる図形の列を ,,,…とする.
(B-4) 図2の場合と同じように,この操作を限りなく続けると,次第に複雑な図形が見えてくる.このように作られた図形を,一辺の長さ の正方形ユ ニット( は正の整数)で覆うのに要する個数を数えてみると,ある番号 以降の ,,…に対してこの個数は一定となる.この値を とするとき, を を用いて表せ.
(B-5) を限りなく大きくしていくと,ある正の実数 に対し は正の極限値に収束する.このことを仮定して, の値を求めよ.
(B-6) ,,…の極限として見えてくる図形に対して,これまでと同じ考え方に基づいて次元 を定めることができる.この の値を を用いて表せ.
2021.02.15記