[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2020年(令和2年)京都大学数学(理系)[1]

a, \, bは実数で,a > 0とする.zに関する方程式  z^3+3az^2+bz+1=0\cdots(\ast)
は3つの相異なる解を持ち,それらは複素数平面上で一辺の長さが\sqrt{3}aの正三角形の頂点となっているとする.
このとき,a, \, b(\ast)の3つの解を求めよ.

2020.03.02記

[解答]

一辺の長さが \sqrt{3}a ということは,重心と頂点の距離は a である.実数係数の3次方程式は少なくとも1つの実数解をもつので,3つの解のうち1つは実数であり,3つの解が正三角形の頂点をなすことから,3つの解を p+q,p+q\omega, p+q\omega^2q=aまたはq=-a)とおくことができる.ここで p は実数で \omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} であり,i虚数単位とする.

この3つの解の和は 3p だから解と係数の関係により p=-a となるので,これらを解とする3次方程式は
(z+a-q)(z+a-q\omega)(z+a-q\omega^2)=(z+a)^3-q^3=z^3+3az^2+3a^2z+a^3-q^3
となるが,定数項が1となることから q=a は不適で q=-a である.

このとき b=3a^22a^3=1 であるから a=\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}b=\dfrac{3}{\sqrt[3]{4}} となるので,3つの解は,p=q=-a に注意すると,-2a,\,-(1+\omega)a,\,-(1+\omega^2)a となる.

よって3つの解は -2a,-\dfrac{1\pm\sqrt{3}i}{2}aa=\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}} を代入したものとなり,-\dfrac{2}{\sqrt[3]{2}},\,\dfrac{-1\pm \sqrt{3}}{2\sqrt[3]{2}} となる.

2024.04.12記

この一連のTweet(Post)は結局,上の[解答]の

3つの解を p+q,p+q\omega, p+q\omega^2とおくことができるので,これらを解とする3次方程式は
(z-p-q)(z-p-q\omega)(z-p-q\omega^2)=(z-p)^3-q^3
とおける,という部分に対応している.

結局,「3つの z が正三角形をなす」とき,複素平面上で回転拡大と平行移動,つまり
w=\alpha z+\beta\alpha,\beta\in\mathbb{C}
とおくと w^3=1(一辺\sqrt{3})に移すことができるという訳で,本問の場合は
回転拡大ではなく回転と平行移動によって一辺 \sqrt{3}a の正三角形に移すことができるので,
 z^3+3az^2+bz+1=0\cdots(\ast)

(\alpha z+\beta)^3-a^3=0
\alpha,\beta\in\mathbb{C}|\alpha|=1
の形に変形できることが必要十分となる.
ここで \dfrac{\beta}{\alpha}=\gamma とおくと
(z+\gamma)^3-\dfrac{a^3}{\alpha^3}
=z^3+3\gamma z^2+3\gamma^2 z+\gamma^3-\dfrac{a^3}{\alpha^3}=0

 z^3+3az^2+bz+1=0\cdots(\ast)
が同じ3次方程式となるので,
\gamma=a
3\gamma^2=b
\gamma^3-\dfrac{a^3}{\alpha^3}=1
が成立する.よって \alpha は実数だから \alpha=\pm 1 のいずれかで
b=3a^2(1\mp 1)a^3=1
が成立する.a\gt 0 より
\alpha=-1a=\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}b=\dfrac{3}{\sqrt[3]{4}}
と求まり,
z=-\gamma+\dfrac{a}{\alpha},-\gamma+\dfrac{a}{\alpha}\omega,-\gamma+\dfrac{a}{\alpha}\omega^2
つまり
z=-a-a,-a-a\omega,-a-a\omega^2
が解となる.