[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2014年(平成26年)東京大学前期-数学(理科)[6]

2022.03.08記
パラメータの2次式で表される図形の包絡線をファクシミリの原理を用いた求める典型的な問題.

結果が y 軸対称になることはすぐにわかるので,パラメータ p をうまく変換して左右対称な設定にしよう.そのために直線 \rm PQ の傾きに着目したいが,無理数を避けるために傾きの \sqrt{3} 倍を u とした.



[解答]
{\rm P}(p,\sqrt{3}p)0\leqq p\leqq 2),{\rm Q}(q,-\sqrt{3}q)-2\leqq q\leqq 0) とおくと
\rm OP+OQ=2p+2(-q)=6 から p-q=3 であり,直線 \rm PQ の方程式は y=\dfrac{\sqrt{3}(p+q)}{p-q}(x-p)+\sqrt{3}p となる.

ここで p+q=u とおくと p=\dfrac{u+3}{2}q=\dfrac{u-3}{2}|u|\leqq 1 であり,このとき直線 \rm PQ の方程式は y=\dfrac{2ux+9-u^2}{2\sqrt{3}} となるので,この直線の|u|\leqq 1における通過範囲のうち,y\geqq\sqrt{3}xy\geqq-\sqrt{3}x の両方をみたす部分が D である.

x を固定したとき,
y=\dfrac{2ux+9-u^2}{2\sqrt{3}}=\dfrac{-(u-x)^2+x^2+9}{2\sqrt{3}}:=f(u)
-1\leqq u\leqq 1 における y の値域を調べれば良いが,f(u)u^2 の係数が負の2次関数であるから,最小値は \min\{f(-1),f(1)\}=\min\left\{\dfrac{\pm 2x+8}{2\sqrt{3}}\right\} であり,最大値は \max\{f(-1),f(1),f(x)\}=\max\left\{\dfrac{\pm 2x+8}{2\sqrt{3}},\dfrac{x^2+9}{2\sqrt{3}}\right\}(但し最大値がf(x)=\dfrac{x^2+9}{2\sqrt{3}}となるのは -1\leqq x\leqq 1 のとき)となる.

よって,この y の値域のうち,y\geqq\sqrt{3}xy\geqq-\sqrt{3}x の両方をみたす部分である D は,y=-\sqrt{3}xy=\dfrac{\pm 2x-8}{2\sqrt{3}} との交点が x=-2,-1 となることに注意すると,

-2\leqq x\leqq -1 のとき -\sqrt{3}x\leqq y\leqq \dfrac{-2x+8}{2\sqrt{3}}
-1\leqq x\leqq 0 のとき \dfrac{2x+8}{2\sqrt{3}}\leqq y\leqq \dfrac{x^2+9}{2\sqrt{3}}
0\leqq x\leqq 1 のとき \dfrac{-2x+8}{2\sqrt{3}}\leqq y\leqq \dfrac{x^2+9}{2\sqrt{3}}
1\leqq x\leqq 2 のとき \sqrt{3}x\leqq y\leqq \dfrac{2x+8}{2\sqrt{3}}

となる.これを図示すれば(2)となり(図示略),この x\geqq 0 の部分を考えると (1) は

0\leqq s\leqq 1 のとき \dfrac{-2s+8}{2\sqrt{3}}\leqq t\leqq \dfrac{s^2+9}{2\sqrt{3}}
1\leqq s\leqq 2 のとき \sqrt{3}s\leqq t\leqq \dfrac{2s+8}{2\sqrt{3}}

となる.

ここで

最大値がf(x)=\dfrac{x^2+9}{2\sqrt{3}}となるのは -1\leqq x\leqq 1 のとき

という部分は,この直線 \rm PQy=f(x)x=u で接していることに対応しており,この y=f(x) が包絡線の方程式となる.

一般の包絡線の求め方を,直線 y=l(x;u)
u はパラメータで l(x;u)=f(u)u の2次関数)
に適用してみると,平方完成により
f(u)-y=C\{u-p(x)\}^2+q(x)-y=0
と変形できることから,\dfrac{df}{du}=2C\{u-p(x)\}=0 と連立させると
包絡線の方程式 y=q(x) が得られることがわかる。

つまり,図形の包絡線を考えるとき,それがパラメータの2次関数となっているならば、パラメータで平方完成すれば包絡線の方程式が自動的に得られることになる.

ここで
a(x,y)u^2+b(x,y)u+c(x,y)=a(x,y)\left\{u-\dfrac{b(x,y)}{2a(x,y)}\right\}^2+\dfrac{a(x,y)c(x,y)-b(x,y)^2}{4a(x,y)}
と平方完成できることに注意すると,得られる包絡線の式は a(x,y)\neq 0 のときは
a(x,y)c(x,y)-b(x,y)^2=0
となるので,判別式を考えれば良いことになる.

1987年(昭和62年)東京大学-数学(文科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
2015年(平成27年)東京大学前期-数学(理科)[1] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR

も参照のこと.