[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2016年(平成28年)東京大学-数学(理科)[2]

2021.03.22記
巴戦の確率

始めてみたのは数セミだったかな。かなり昔の話。次の解法は良く知られている.

1試合目で勝った人が優勝する確率を p,1試合目で負けた人が優勝する確率を q,1試合目で控えていた人が優勝する確率を r とすると p=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2}rq=\dfrac{1}{2}rr=\dfrac{1}{2}p となり,これを解くと p=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{8}p となり,p=\dfrac{4}{7}r=\dfrac{2}{7}q=\dfrac{1}{7} が成立する.

よって,A,Bが優勝する確率は \dfrac{5}{14},Cが優勝する確率は \dfrac{4}{14} となり,Cが少し不利である.

[解答]

(1) 2連勝したら優勝が決まるので,優勝が決まらない限り,対戦カードは
AB,BC,CA,…の繰り返しか,AB,CA,BC,…の繰り返しである.

前者の場合は n=3k+1(k\geqq 1) 試合目で A の優勝が起き,その確率は \dfrac{1}{2^{n}} であり,後者の場合は n=3k+2(k\geqq 0) 試合目で A の優勝が起き,その確率は \dfrac{1}{2^{n}} である.

よって,n が3の倍数のとき 0 で,それ以外のとき \dfrac{1}{2^n} である.

(2) Aの対戦相手が B で優勝するのは前者の場合であるから,その確率は
\dfrac{1}{2^4}+\dfrac{1}{2^7}+\cdots+\dfrac{1}{2^{3m-2}}=\dfrac{8}{7}\Bigl(\dfrac{1}{2^4}-\dfrac{1}{2^{3m+1}}\Bigr)=\dfrac{2^{3m}-8}{7\cdot 2^{3m+1}}
Aの対戦相手が C で優勝するのは後者の場合であるから,その確率は
\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{2^5}+\cdots+\dfrac{1}{2^{3m-1}}=\dfrac{8}{7}\Bigl(\dfrac{1}{2^2}-\dfrac{1}{2^{3m+2}}\Bigr)=\dfrac{4\cdot 2^{3m}-4}{7\cdot 2^{3m+1}}
であるから,求める確率は
\dfrac{2^{3m}-8}{(2^{3m}-8)+(4\cdot 2^{3m}-4)}=\dfrac{2^{3m}-8}{5\cdot 2^{3m}-12}
となる.

総試合回数が 3m+1 回以下の場合は,それぞれ m 回の合計になっていて,それぞれの項が4倍になるので条件つき確率は丁度 \dfrac{1}{5} になる.昔の東大だったら,意味を考えて計算をせずに答がわかる出題もあったかなぁ.

なお,

対戦カード AB で A が優勝する確率は \dfrac{1}{14}
対戦カード AC で A が優勝する確率は \dfrac{2}{7}

対戦カード AB で B が優勝する確率は \dfrac{1}{14}
対戦カード BC で B が優勝する確率は \dfrac{2}{7}

対戦カード AC で C が優勝する確率は \dfrac{1}{7}
対戦カード BC で C が優勝する確率は \dfrac{1}{7}

である.最終戦が AB である確率が \dfrac{1}{7} で極端に少ない(他の取組は\dfrac{3}{7})という結果は不思議である.